お寺の美幼女
朝、目を覚ますと、花音は普通に自分の布団で眠っていた。昨夜の出来事ってホントにあったのかな?僕の夢の中の出来事じゃないかな?あとから目覚めた花音は、いつもの様子だったし、エリーも何の反応もない。エリーがが気付かない訳ないよね。うん、えっちな妄想であんな夢を見たのに違いない。僕も平静を装って、登校の準備をした。
学校では、テストが帰って来て、なかなかの高得点と、平均点が低い事に驚いた。今日の分は、大体が80点台、たまに90点って位で全教科、花音とワンツーフィニッシュだった。道場に帰ってピーさん達の結果を聞くと、70平均位でまあまあの上位らしい。不安だらけの試験だったが、この調子で問題なさそうだ。
エリーが皆んなの答案に面通していると、千鶴さんが台所の助っ人に花音を呼んだ。僕も手伝うと、立ち上がると、千鶴さんは明らかに不自然な言い訳をして花音だけを台所に連れて行った。
「エイミー、ちょっとお部屋行こうね!」
エリーに引っ張られ部屋に入ると、
「どうだったの?ファーストキスは何味だった?」
昨夜の出来事は、実際に起こっていたようだ。エリーは寝たフリで、一部始終を聞いていたらしい。
「豆電球にしておけば、もっと楽しかったのにね!失敗だね!」
エリーは嬉しそうに笑い、肉体労働をサラッと熟すピーさん達の逞しさや、難しそうな仕事で社会人の様な老師に対し、僕が羨望の眼差しを送っていたと花音に吹き込んだそうだ。『花音が男だったら』って言うのも、エリーが焚き付けた話しらしい。
「コッチは良くて、ソッチはダメなのね?」
胸を突きながら、
「揉ませたり、しゃぶらせたり、充分に女だと思うけどね、エイミーの引く一線って事なの?ソッチの感想の方が興味あったのになあ。」
回答が出来ない質問を浴び、途方にくれた頃、花音が帰って来た。
「別に、私ご指名って仕事じゃなかったの。」
エリーが、千鶴さんに頼んで、僕だけを尋問すると時間を作ったようだ。
ターゲットは花音に移り、タジタジの2人は、いつの間にか全てを話していた。
結局、散々弄られて今日も早寝。布団に入れば、またまたエリーに弄られるのを覚悟していたが、意外な事に、昨夜の事には触れられ無かった。
「ごゆっくり。」
エリーは直ぐに布団に入り、背中を向けていた。花音と目が合うと、昨夜の事を思い出し、耳が熱くなった。ぎこちなく『おやすみ』を言って、黙って布団に潜り込んだ。今日も花音がおかしな夢見ないかと、少しだけ期待しながら、気が付くと日が昇っていた。
学校ではテストが全部帰って来て、全ての教科で、花音とのワンツーフィニッシュだった。科目数で僕が4つ、花音が5つトップで合計では少し僕が上だった。クラスでの順位だと思っていたけど、学年でもトップだっらしい。学校のコ達から見ると、『未来人』にあたる僕等は、妙に目立っていたので、騒ぎになりそうだと心配していたけど、記憶障害の『東京人』と言う触れ込みで編入していたので、『やっぱりね!』って反応だった。むっちゃんに教えて貰った、僕狙いのコ達からの視線は更にヒートアップした気がするのは、あまり歓迎できないな。入試でトップクラスだった数人は、順位を気にしていたようで、玄関の掲示板にベストテンが貼り出さされた時には、ここの時代に来て初めて、敵意を持った視線に晒された。
まあ、そんな騒ぎも直ぐに収まり、翌週開催の球技大会にお喋りの主役は移っていた。ソフトボール、バレーボール、卓球から選んで参加するそうだ。
花音のスーパーパワーでトラブルが発生しなさそうな卓球をチョイス。身体接触の可能性が1番少なく、ボールが凶器になった場合の殺傷力が1番小さい。幸い、1番人気の無い競技だったので、すんなり決定。
道場で卓球の話しをすると、
「卓球の台ならあるよ、練習する?」
英造さんが倉庫を案内してくれた。正規の物ではない手作りの卓球台だが、素人の練習には充分だった。ピーさん達の帰りを待って仮設卓球場を作った。
道場の半分の畳をどけて、台を運び込む。道具もあって、英造さんがコーチをしてくれた。マイ卓球台がある位なのでなかなかの腕前で、初心者向の作戦と、それに合わせた練習に取り組んだ。取り敢えず、サーブを集中して練習した。多分、校内の球技大会のレベルなら、そんなに高いとは思えないと想定して、サーブポイントを積み重ねる作戦だった。お互いに、サーブを失敗しない数で勝負。偶然成功のレシーブは勘定に入れないと言う、割り切りのいい作戦だった。ただ花音は、その前にスーパーパワーをコントロール出来るよう工夫していた。始めのうちは、ピンポン玉を砕いたり苦労していたが、徐々に慣れて来たようで、なんとかサマになって来た。しばらく練習していると、軽快にラリーを続けるまで成長した。僕も特別上手くはないが、きっとなんとかなると思う。一緒に練習してサーブを3種類教えて貰った。スポーツ万能のピーさん達が相手をしてくれたので、かなり上達出来たと思う。心配だらけの中間試験で、想定外の好成績だったのでこのペースで頑張り過ぎると、またまた目立ち過ぎないか心配になった。
自信満々で大会当日を迎えた。チームの他の3人は経験者と言う事で、僕が4番手、花音が5番手になった。
緊張して臨んだ1回戦3連勝でケリが付き、活躍の機会が無かった。2回戦は1勝2敗の背水の陣でいよいよデビューと思ったが、対戦相手が1人病欠で、もう一人が1回戦で怪我をしたので不戦勝。準決勝に勝ち上がった。いよいよ出番かと思ったが、今度は前の3人が3連敗で、負けが決まり、またまた出番は無かった。3位決定戦も出番が無いままで勝利、見事3位に輝いた。
中間試験で目立ち過ぎたので、ちょうど良かったのかな?決勝戦は僕等を破った組が圧勝していた。3年生のチームだったので、来年は優勝だと、チームのコ達は張り切っていた。土曜日の午前迄の大会が終わった。道場に帰って報告すると大笑いだった。
畳を戻していると、師範がやって来て、
「醤油工場で臨時工員を探してるんだが、明日どうだろう?」
女子若干名との事で直ぐにOKした。
「ねえ、醤油工場って、むっちゃんが言ってたお寺のそばだよね?」
幽霊の噂を聞かされていた。夜な夜な、白い着物の女の子が手毬を付いているそうだ。
「バイト終わりじゃ時間早すぎかな?」
取り敢えず、寄って見ることにした。ピーさん達は、部活で練習試合なので、幽霊調査には不参加。老師は心配して、関わらないように、中止を勧めるが、どう考えても、ただのデマか勘違いだろう。クラスのコが怖がるは可哀相なので、ちょっと覗いて見るだけだと、老師をなだめた。
醤油工場では大豆から、ゴミを除去する仕事だった。結構気を張る作業だったが、なんとか完了。今日も青い紙幣を1枚ゲット。まだ日は落ちきっていないが、幽霊調査に向かった。
お寺に近付くと、手毬の音?いや、なんか違うかな?音の方に更に近付くと白い着物?イヤ、白いワンピの女の子がお寺の壁や屋根を使って独りでバレーボールの練習をしていた。
「こんにちは、バレーボール好きなの?」
毬を付く幽霊と言う先入観で、日本人形を想像していたけど、クリっとした目が印象的な、どちらかというと洋風の美少女が、コクリと頷いた。お寺のお嬢さんなのかな?ここでバレーボールの練習が日課との事。小学生のお兄ちゃんと遊べるようになりたくて、秘密の特訓らしい。3人でパスしてみたが4歳児にはやはり無理っぽかったが、ガッツがあって少しずつだけど続けて上がるようになって来た。ボールが見えなくなるまで頑張って、お寺を後にした。
「おねえちゃん、おにいちゃん、遊んでくれてありがとう。もういくね!」
ペコリと可愛いお辞儀を見せて、お寺の裏の方に走って行った。
「可愛い幽霊ちゃんだったね!でも『おにいちゃん』って言ったよね?やっぱり僕の事かな?」
ちょっと嬉しかったけど、この容姿でしかもスカート姿なので、微妙な感じだった。そう言えば、変身前のピーさん達はしばしば間違われていたけど、結構喜んでいたな。彼等いや、彼女達は間違われて不思議じゃなかったけど、今の僕って客観視すると、迷うことの無い女子なんだよね。言葉遣いも、女子高で浮かない程度には喋れてるしなあ。
「エイミー、一人称『僕』って言うからじゃないかしら?ん?私がおにいちゃん?」
『僕』案はアリかな?花音が『おにいちゃん』ってのは絶対に無いよね?結局、小さな子供の言う事なので、気にしても仕方がないと言う事になった。
一件落着で道場に帰り、『おにいちゃん』の一件を報告するとピーさんは、
「元の時代の頃、男になりたかったから、間違われて嬉しかったのはホントだよ!」
2人も頷いて、ラヴが、
「コッチに来た時、俺達の願いが叶ったって事?そう言えば、エリーって言うか、絵里姉ちゃん、子供にオバさんって呼ばれて落ち込んだり、俺達の同級生に見られてハイになったりしてたよね?エリーも叶ったって事なのかな?老師だったら、18禁クリアするのに『大人』を希望してたんじゃ無いかな?」
エリーは、ラヴの鳩尾に一発喰らわせてから、澄ました顔で、
「花音はスーパーパワーご所望だったの?」
「ううん、強いて言えば運痴の克服かな?それなら叶い過ぎって感じよね!」
エリーはちょっとズルい顔になって、
「英太の願いは、何だったのかな?叶い過ぎた結果がコレ?」
僕の膨らみを揉みながら笑った。何か願ってたかな?少なくとも、女の子になりたいだなんて願っていなかったのは間違い無いんだよね。結局また散々弄られる事になって、ゴールデンタイムのテレビ代わりに皆んなをたのしませてしまった。
翌週、むっちゃん達に報告。
「やっぱりそうだよね!幽霊なんている訳無いもんね!」
直ぐに校内に拡散して、幽霊騒ぎもすっかり解決した。
ずいぶん経ってから聞いた話し、あの日以来、幽霊話は聞かなくなったそうだ。ただ不思議なのは、お寺にはそんな年頃の女の子はいないし、走って帰ったお寺の裏にはお墓しか無いそうだ。それを聞いて、背筋が凍ったが、
「バレーボール思う存分出来て、成仏したんじゃない?」
そう、自分に言い聞かせながら言ってみた。
もう一度お寺に行って、裏のお墓を調べてみると、最近の仏さんで、戒名に『童女』を探すと、該当は1人。住職に尋ねると、クリクリおめめとの印象が一致、バレーボールクラブのお兄ちゃんがいる女の子だったそうだ。お墓にお菓子を供えると、トスに成功してニッコリ笑うあの子の顔が思い浮かんだ。幽霊は怖いけど、あんなに可愛いかったらたまにはいいかな?




