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不死身の少女とSCP  作者: 白髪 九十九
アメリカ支部編
76/80

Case69 人形作家の仕事道具②

いつも「不死S」こと「不死身の少女とSCP」をご覧いただきありがとうございます!


毎月楽しみにしていらっしゃる読者様には大変申し訳ないのですが、来年の2月ほどまで更新が難しくなります。

可能であれば、キャラクターまとめのようなものを出そうと考えているのですが、そちらも未だ未定の状態です。


ですが、来年の2月以降は再び週一登校を目指して頑張っていこうと思いますので、応援よろしくお願いします!

「非人型のSCPに肉体を与えたんだ…どっかの馬鹿が」


その焦りと恐怖に駆られた声に一同は沈黙する。


職員として他の人より日が浅い友梨ではさえも、その脅威は明らかだった。


SCPの収容難易度を表すオブジェクトクラスは基本的に3種類。

Safe

Euclid

Keter


自ら思考せず、動かないオブジェクトはどれだけ危険なものでさえ基本的にはSafeに分類される。


だが、危険なことには変わらない。


使わなければ死なない。

見なければ死なない。

触らなければ死なない。


それらが動き出すというのだ。独自の思考と共に。


もし、それが本当だとすれば、この世界からSafeクラスオブジェクトは消えてなくなる。


全てのSafeがEuclidにもKeterにもなり得る。


「てことは、何かしらの過去の特別収容プロトコルが残ってるんだよな?」


沈黙の中、口を開いたのはレオンだった。


「あ…あぁ。すぐにとは、まあ、多分いかないが、すぐに、なるべく早く見つけてみせる」

「それなら、なるべく早くそれを……」


突如、レオンの動きが止まる。


「どうしたんですか?レオンさん」

「……泉。二つのSCPが無関係ってことはないよな?」


曖昧な問い。

友梨がその意味を理解する前に、泉は即答する。


「ほ、ほぼない。確実に協力関係にある」

「……御館。あいつの逃げた方向」

「方向ですか…?」


友梨はその逃げた方向を見つめるが、特に変わったものはない。


「特に何も…」

「その先ずっと」


先……?

方向にして南西の方角。

その奥にはわずかに車跡があるだけで、他には何もない。


いや、車跡がある。

私たちはこっちから来たんだ。


「……まさか」

「そのまさかだろうな。あいつはアメリカ支部に向かってる……。おそらく到着まで30分てとこだろうな……」


知能、危険性、異常性。

全てがほぼ未知数。

そんな化け物が二人。今からサイトを襲い始める。


「メアリス…!」

「わかりました。まずは一人。到着までに収容致します」


だが、メアリスには関係ない。


彼女はただ、彼の言葉を待っていただけなのだ。



********************



通信を切り、メアリスは再びカメラの映像に向き直る。


パップは出れないということがわかると、退屈そうに自身の能力で作り出した人形で遊び始めている。


「それで、どうするの?」


アルティが投げかけた言葉にメアリスは答えない。

だが、決して臆しているわけではないことをその瞳は証明している。


やがて、メアリスは席から立ち上がると、不安げな顔のアルティに言葉を返す。


「支部長の言う通りにしますよ。SCP-1039を収容します」


彼女の表情は先程のものとは一変していた。

冷徹で機械のような表情に。



やがて、少しの時間が経ち。


メアリスは中央エントランスの扉を開ける。


中央エントランスは2階層の吹き抜け構造になっており、中央の奥へと続く巨大な扉と、2階にある小さな二つの扉で他の部屋と区切られている。

また、2階に上がるためには中央扉の左右にある階段を登る必要があり、メアリスが開いた扉は2階左奥のものだった。


パップはまだこちらに気を止める様子はない。

人形遊びで夢中になり、扉が開いた音に気が付いていないのだろうか。


この気を逃すわけにはいかないと、メアリスはパップの背後に照準を向けた。


ふわふわと揺れる服の装飾。

メアリスは確保の為の麻酔銃をその腹部へと向ける。


息を殺し、トリガーに手をかける。


「……あっ、こんにちはー。わざわざ来てくれたんですか?」


パップは何かを感じ取ったのか、完全に気配を消していたメアリスの方をくるりと振り返る。

しかし、それと同時に発砲音が鳴り、パップの体がわずかに跳ねた。


「………」


だが、その弾はパップには届かない。

瞬時に彼女が盾にした人形によって阻まれてしまった。


「……反射神経も化け物ですね」

「貴方は私の人形になりに来てくれたんです?」


会話が通じないパップにメアリスは二発目の弾丸で応えるが、パップは不思議な動きでそれを避ける。


「そんなに恥ずかしがらないでいいんですよ。いい大人だからって気にしてるんですか?お人形さんに年齢は関係ないんですよ?」


メアリスはパップの言葉を無視し、柵の裏に身を潜ませる。

そして、再び柵から顔を出し、パップへと照準を向けた。


だが、先ほどまでただフラフラと避けるだけだったパップは銃を持っている。

職員の死体から抜き取ったのだ。


「少し動かないでくださいね」


メアリスは慌てて体を引く。

次の瞬間、銃声と共に、先ほどまで頭を出していた場所の壁に黒い銃痕がこびりついた。


「あ、いけない。殺しちゃうとこだった」


本気なのか適当なのか。素っ頓狂な声を出すパップ。

対してメアリスは顔を柵の下に隠したまま一人思案していた。


身体能力が高すぎる。

正面か対峙しては拳銃さえも避けられ、片や相手は確実に急所を狙って打ってくる。

実力は本部のエージェントクラス。正面から撃ち合っては勝ち目がない。

ましてや、異常性までもついてくるのだ。


「本当に厄介ですね」


接近戦はほぼ不可能。

かといってこの距離で戦っても麻酔銃が当たる気がしない。


「でも、弱音を吐いてる暇はない」


メアリスは深く深呼吸をすると、柵から上半身を乗り出す。

そして、すぐに銃を構えたかと思うと、的外れな方向に弾を打ち出した。


「あれ?疲れちゃいました?」


メアリスのおかしな行動に思わず苦笑するパップ。

だが、その余裕に満ちた顔が、一瞬で苦い顔へと変わった。


「あ………え?」


苦痛に顔を顰め、自身の足を睨みつけるように見るパップ。

そこには自身の細い足の裏に深々と刺さった麻酔弾。


「な、なんで…?」

「跳弾です」


困惑するパップにメアリスは淡々と告げる。


「伊達に長い間ここに勤めていません。この施設の構造は完璧に把握しております」


足から崩れ落ちたパップをメアリスが冷たい瞳で見下ろしている。

パップは冷や汗を垂らしながら、何度も何度も立ち上がろうとするが、生まれたての子鹿のように転び続けるばかりだ。


「無駄ですよ。人間なら着弾から数秒で強い眠りに落とされます。どんなに強靭な肉体だろうが、どんなに高い運動能力だろうが、関係ありません」


焦りを露わにするパップ。

ファンシーな帽子に隠れたその口で、パップは静かに笑った。


「でも、それって人間の話ですよね?」


メアリスの頬を何かが切り裂く。

それは銃弾。パップから放たれた銃弾であった。

辛うじてのところで致命傷を避けたメアリスの優れた脊髄反射がなければ、その銃弾は脳天を貫いていただろう。


「私、人間じゃないですよ。だからそれも効きにくいみたいですね。急に痺れたのでびっくりしちゃいました」


先ほどまで立つのもやっとだったパップは両足でしっかりと立ち上がっている。

先程の行動が演技だったのか否かもその表情からは読み取れない。


一方、メアリスは先程のパップのように焦りを露わにしていた。

頬から流れる血が止まらない。

この血に一滴でも触れられたら……。


血とパップの接触を恐れるメアリス。

だが、その絶望を加速させるようにパップは階段を使って二階へと上がってくる。


「さっき血が出てましたよね?顔からたくさんの血が。カワイイ顔に傷付けちゃってごめんなさいね」


能天気な明るい声が響く。

パップの足を足音が徐々に近づいてくる。

メアリスはその場を離れようと駆けるが、転々と血液が床に付着していく。

慌てて足で踏み消そうとしてもより広範囲に広がるのみ。


だが、メアリスはチラリと見えたパップの衣服を見て、距離を取ろうと引き下がる。


「逃げても無駄ですよ?」


メアリスとパップの距離は僅か数メートル。

だが、パップの足元には小さな水溜りのように赤い液体が溜まっていた。


「あらあらこんなに血をこぼしちゃって…」


パップは血溜まりから一滴の血を手に付着させ、妖艶した表情でそれをひと舐めする。


「本当は人形になりたかったんですか?」


メアリスの体が硬直する。



パップに向けて構えた銃の引き金が動かない。



苦い顔をしたメアリスの顔を見て、パップはあどけない笑顔を見せた。


「そんなに怖い顔をしないでくださいよ。今そっちに行きますからね」


一歩。パップが踏み出す。

片手には針。メアリスの口を縫おうと手の届く距離まで近づいていく。


そんなパップの胸元に銃弾が打ち込まれた。


「…………えっ?」


パップが再び膝から崩れ落ち、自身の胸元を押さえ込む。

身体中に痺れが走り、感覚が麻痺を始める。


驚きと苦しみを半々にしたその顔で、パップはメアリスを睨みつける。

メアリスは淡々とした手捌きで再びパップに銃を向けた。


「顔を掠っただけで、血溜まりはできません」


メアリスはそう告げると、もう片方の手から袋のようなものを捨てる。

それは穴が空いた輸血パック。

パップが上に来る前にメアリスが破いたものであった。


「ここに来るまでに貴方の異常性の対策は準備していました。先程、私の血液を隠すように撒いておいたんです。まさか私の血と勘違いするとは思いませんでしたが」


輸血パックは、メアリスは出血の際にばら撒くことで、自身の血を薄め、異常性の弱めるために用意したものだった。

だが、パップはその慢心からか、それを本人の血と勘違いしてここまで近づいてしまった。

この至近距離で打ち込まれた弾丸はほとんど決着をつけるものだったのだ。


「うゔゔ……」

「先程、効かないとおっしゃりましたが……」


メアリスは自身の服をたくし上げる。

中には無数の弾丸。


「数十発打ち込んでも同じことが言えますか?」


初めて、パップの表情が恐れへと変わる。

先程の焦り顔とは明らかに違う。

生物としての危機を感じている。


「あ……あぁ…」

「貴方は人質にさせていただきます。それから、あなた方二人を収容した後で拷問を行い、背景にいる要注意団体を暴かせていただきます」


一歩、メアリスが前に出る。

パップは痺れた体で立ち上がろうとしながら、引こうとする。

その姿はファンシーとは可愛らしい格好とはかけ離れた必死な行動だった。


「た……た……けて……」

「今更命乞いですか?」


メアリスが照準を向ける。


その瞬間、パップは叫んだ。



「助けて!!!!カイくん!!!!!」



一瞬の静寂。メアリスは冷徹に拳銃をパップに向ける。

パップは目を瞑り、衝撃に備えた。





破壊音が響く。


二人のちょうど間。

壁が破壊され、鉄の触手が現れる。


「到着はまだのはずでは……」


そんなメアリスの言葉を尻目に、その青年は鉄の触手でパップを拾い上げた。


「その変な名前で呼ぶなと言ったはずだ」

「またまたぁ、照れてるの?カイくん」


予想されていた到着時刻よりも10分も早い。



今、メアリスの前に二人の未確認SCPが立ち塞がったのだった。

*御館 友梨のSCP勉強のコーナー*


「このコーナーでは、私、御館 友梨が画面の前の皆様と一緒にSCPを勉強していくコーナーです!今日の先生はこちら!」


「メアリス・ハーゲンバーグです。よろしくお願いします」


「メアリスさんお願いします!……というか、私主人公なのに出番少なくないですか?」


「そんなことないと思いますよ。今回紹介するのはSCP-1360『シュード31号』オブジェクトクラスはEuclidです」


「31号っていうとロボットとかですか?」


「少し違いますね。SCP-1360は生命を有するアンドロイドです。身体はアルミニウムの骨格を覆う成形済ポリカーボネートの外装で構成されているのですが、その外装はSCP-1360-1と呼称される組成不明の黒い布で覆われています」


「ポリカー……ってなんですか?」


「ポリカーボネートは有機ガラスの一種と思っていただけたら良いかと。SCP-1360は知的であり、非武装戦闘や銃器使用に関する明確な知識を見せています。そして、「アンダーソン」という人物の元へ向かう為に何度も脱走を試みている経歴もあります」


「うわ…厄介そうですね…。アンダーソンっていうのはもしかしてご主人様だったとか?」


「どうやら製作者のようですね。ですが、「アンダーソン」からのとあるメッセージにより逃走を断念したようです」


「断念…?どんなことが書いてあったんですか?」


「『帰還信号途絶。君が今どこにいるにせよ、私たちはそこに君を留めた方が良いと判断した。申し訳ない、31号。』だそうです」


「それはちょっと可哀想ですね……」


「そうですか?そこにいろというなら、そこにいるだけの仕事だと思いますが」


「メアリスさんだって、レオンさんから仕事しなくていいから何もするなって言われたら悲しくないですか?」


「私がアメリカ支部の30%の雑務を担っているのであり得ません」


「うわ……超有能……」


「まあ、ありえないですが。もし言われたとしたら、少し悲しいですね」


SCP-1360

『シュード31号』






「SCP-1034の人形作家の仕事道具」はcontrolvolume作「SCP-1034」に基づきます

http://www.scp-wiki.net/scp-1034 @2012


「SCP-882の機械」はDr Gears作「SCP-882」に基づきます

http://www.scp-wiki.net/scp-882 @2008


「SCP-1360のシュード31号」はJacob Conwell作「SCP-1360」に基づきます

http://www.scp-wiki.net/scp-1360 @2012

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