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不死身の少女とSCP  作者: 白髪 九十九
アメリカ支部編
68/80

Case61 そり立つはでっかいクマさんの

今回の話は、性的表現を含みます。

苦手な方はお気をつけください。

友梨がアメリカに飛んでいる一方。

日本支部では……。



「まぁ、悪戯をする時点でお仕置きは覚悟の上だけどさ。キツイものはキツイね」


雛染荒戸はSCP-1475-JPをSCP-________

に無断使用した罰として、一週間のうちに財団が確保した全てのSCiPの収容方法……特別収容プロトコルの制定が課された。


普通の職員では間違いなく不可能な案件だが、そのような無理難題を任せられるのも『雛染荒戸』という人間の実力を財団は信頼しているということだろう。


「幸い、Safeばっかだけど。Keterとか来たら流石に手に負えないよ?」


雛染の顔には流石に疲れが見え始めていた。

まだ2日目なのに関わらず、それほどまでに罰は過酷であった。


そして、彼が今手をつけている案件。


それが、ここにある熊の人形だ。


「SCP-2200-JPとしたはいいものの…」


嘆きの水曜日……世界同時複数収容違反が起こった時、財団のデータベースの多くは破損した。

新しいSCPオブジェクトを確保した場合、ほとんどのものは財団から嘆きの水曜日で収容違反したものなので、辛うじて残っている情報を繋ぎ合わせ該当する番号をつけるのである。

そして本来、財団の破損したデータベースにアクセスするのはシャロットの役目である。


だが今回、雛染は独自にデータベースを調べた。

やましい理由があるわけではない。強いて言うならば、雛染には珍しい心遣いであった。


「……男の……アレ…だよね」


SCP-2200-JP。

一般的なテディベアである。

人間のブツがついているのを除いて。


「性的な異常性を持つオブジェクトがないわけではないけど、ここまでストレートなものも珍しい」


たしかに、性的搾取を目的とするSCPだったり、性玩具のSCPも存在する。(そのような場合は、雛染がこっそりとシャロットの代わりにデータベースを調べることが多い。悪戯は好きだが、セクハラをしたいわけではないのだ)

だが、子供用のぬいぐるみに立派なブツがついている光景は一周回って笑いさえ出てくる光景だ。


「まあ、とりあえず。関係者の話を聞いてからかな」


現状、異常性はブツが付いているということだけだ。

検査の結果「本物」だということは明らかになったが、特にそれ以外の異常性は見られない。

緊急で特別収容プロトコルを制定することはないだろう。


関係者というのは、SCP-2200-JPの元所持者。

捨てたらしい。当たり前だ。


異常性の究明や、購入経路を含めて雛染はインタビュー室へと向かった。


インタビューというのも中々に久しい体験だ。

基本、対人関係は夏華やミア、カレナが行う事が多い。

だが、今回はSCPオブジェクトの責任者として自ら向かわなければならないのだ。

シロツメに任せることもできるが、会話などの柔軟な思考が求められる作業は彼女には向いていない。


「博士……」

「あ、シロツメ。どしたの?」


インタビュー室に向かう途中で、丁度シロツメとばったり出会った。

シロツメはいつも通りポーカーフェイスだが、頬にはクリームがついている。


「なんか食べたの?」

「え……あっ…………申し訳……ござい…ません」


きっと、SCP-073…カインのところか。

シロツメは最近、カインの元で茶会を行なっているということをよく聞く。

おそらく、そのクリームもSCP-871のケーキだろう。


「SCP-871の処理でしょ?なんで謝るのさ。それより何か用?」


シロツメは基本的には雛染の助手という扱いだが、束縛するような対象ではない。

実験中に協力してもらうことが多いが、柔軟な動きができないので、雑用を押し付けている。

正直、研究なら一人でやった方が早いのだ。


まあ、思考の柔軟性に関しては事情が事情なので責めることはできないが。


「大変……お疲れに……見え…ます。罰……とは……い…え……助手の……補助は………許される…か……と」


シロツメは心配そうな表情で雛染を見つめる。


……困った。

彼女の行為を無碍にすることもないだろう。


「それなら、僕の部屋を掃除しておいてもらえる?この前散らかしちゃったまま放置しててさ」

「かしこ……まりま…した……」


さて、インタビュー室に向かうとするか。

あんまり待たせるのも心理的に良い結果は出ない。


「……あ。ついでに…使用中の………実験室……も…掃除しておき……ます」

「待って待って!!」


別に何も悪いことはしていないのだが、女の子にアレを見させるのは良くない。

雛染の数少ない良心が引き留めろと言っている。


「はい……」

「実験室は、ほら、今色々やってるから放っといて!」

「……かしこまり…ました」


危ない危ない。

これは万が一にも他の職員が入らないように早くインタビュー終わらせないと。

不幸にも、うちには女性職員は一定数いるのだ。



********************



元持ち主の男性である父親の話は……まあ、気の毒だった。


SCP-2200-JP……あのテディベアはとある母親が娘に買ってきたものらしい。

それを見た父親は仰天したらしいが、ブツは何故か男性にしか見えないと言う。


やんわりとブツの事を妻に伝えようとしたが、理解されず。

悶々とした日々を過ごしていた。


しかしある日……出たのだ。


娘が人形から変な匂いがすると言われ、確認したところ布団の真ん中が妙に盛り上がっているのを発見した。


それで、我慢できず捨てたらしい。




「…なんともいたたまれない話だなぁ」


研究室に戻ってきていた雛染は思わず呟いた。

自分には娘というものはいないし、作る気もないのだが、大切なものだということはわかる。

SCPが関わっていて命に別状がないだけマシだ……とも思うが、それとこれとは話が別だろう。


「とにかく、異常性は大したことはなさそうかな。オブジェクトクラスはSafeで問題なさそう。そうだな……収容庫に保管して、月に一度ペースで男性職員に掃除を……」


その時だった。

突如、研究室の扉が開かれる。


「雛染、貴方また勝手にデータベースにアクセスした?」


不相応な大きさの白衣を着た少女。

シャロットの赤い瞳が雛染を捉える。


雛染はSCP-2200-JPの異常性を知っているにも関わらず、反射的に視界を遮るように移動する。


そして、当然シャロットがその動きに気づかないわけがなかった。


「貴方、今何を隠したの?」


……げっ、バレた。


雛染は反射的とはいえ、あまりにも露骨だった自分の動きを反省する。


「別に?何も隠してないけど?」

「そうにはとても見えない」


シャロットは雛染の体を押し除け、SCP-2200-JPを目視する。


「……?テディベア?なんのSCiPなの?」


ブツが見えるのが男だけで本当によかった。

まあ、シャロットがそれを見た時の反応も少しは気になるが。


「僕のテディベアだよ。可愛いでしょ?」

「あなたにそんな可愛い趣味があるわけない」


シャロットはSCP-2200-JPの元へ近づくと、手に取ろうとする。


「待っ…」

「なに?調べられたら問題でもあるの?」

「……ないけど」


まあ、別に僕が何かしたってわけではないのだが。

見えないといっても存在が消滅しているわけではない。

感触や匂いはする。

それに……出る可能性もある。


そんな雛染の心配をよそに、シャロットはSCP-2200-JPを持ち上げ、マジマジと見つめた。


「……特に見た目には変なところはなさそうね」


ある。明らかにある。

シャロットが動かすたびにぶらぶらと揺れている。

あまりにもシュールな光景に笑いを隠せない。


「何笑ってるの?」

「いいや、別に?」


あまりにも滑稽なその姿に、雛染はどうでも良くなり挑発的な返事をする。

しかし、その態度にシャロットが感に触ったようだ。


「持ち帰る」

「ちょっと待ってよ。それは僕が任されたSCiPなんだけど?」

「やっぱりSCiPじゃない。上には私が言っておく。他に何か問題が?」


問題はないが、心配はある。

先ほどまでだったら確実に止めただろう。


しかしこの時、彼女の傲慢な態度と、好奇心が重なり、既に雛染はだいぶどうでも良くなっていた。


「ないけど、やめておいた方がいいって忠告しておくよ?」

「それはどうも」


そういうと、シャロットは乱暴にSCP-2200-JPを脇に抱え、研究室を後にした。


「知ーらない、と」





翌日。

シロツメから連絡があった。


「シャロット様……が……SC…P……を返す……と」


そのまま研究室へと向かった雛染が見たものは、明らかに殴ったように顔が凹んでいるSCP-2200-JP。


「……だから言ったのなぁ」


シャロットはしばらくイライラしていたが、その理由を知るのは雛染だけである。


*御館 友梨のSCP勉強のコーナー*


「このコーナーでは、私、御館 友梨が画面の前の皆様と一緒にSCPを勉強していくコーナーです!今日の先生はこちら!」


「雛染荒戸だよ、よろしく」


「……よろしくお願いします」


「あれ?元気なくない?どうしたのかな?」


「さあ?誰かと一緒に話さなきゃいけないからとかじゃないですか?」


「誰だろうね。今回紹介するのは、SCP-1025『病気百科事典』オブジェクトクラスはKeter→Safe。名前の通り、病気について書かれた事典だね」


「異常性が変化したって事ですか?」


「いや、財団が異常性を勘違いしてたのさ。最初はSCP-1025の異常性は読者に該当ページの病気を付与するものだと思っていた」


「だけど違ったと?」


「本当の異常性は、表紙を見たものは周囲の人間の当たり前の動作を病気だと思い込むようになるってものなのさ」


「当たり前の動作って言うと、くしゃみだとか?」


「くしゃみ…咳…空腹…身長の増加…原因のない痒み…とかね。はい、説明終わり」


「なんかさっぱりしてませんか?」


「だって、説明も何も本編で君が全部喋っちゃってるし」


「なるほど。そのおかげですぐ終わると!全部喋ってよかった!」


「僕としても君に時間を取られるのは本意ではないけど、何か気に食わないなぁ。ところで、君なんか顔が赤くない?熱?」


「……?化粧のこと言ってます?」


「……化粧してそれなの?」


「今絶対に女性に言っちゃいけないこと言いましたね…!?」


SCP-1025

『病気百科事典』





「SCP-1025の病気百科事典」はLasergoose作「SCP-1025」に基づきます。

http://www.scp-wiki.net/scp-1025 @2011


「SCP-871の景気のいいケーキ」はSeibai作「SCP-871」に基づきます

http://www.scp-wiki.net/scp-871 @2011


「SCP-073のカイン」はKain Pathos Crow作「SCP-073」に基づきます

http://www.scp-wiki.net/scp-073 @2008


「SCP-1475-JPの標的はノースカロライナ」はsemiShigUre作「SCP-1475-JP」に基づきます。

http://ja.scp-wiki.net/scp-1475-jp @2016


「SCP-2200-JPのそり立つはでっかいクマさんの」はsolvex作「SCP-2200-JP」に基づきます。

http://ja.scp-wiki.net/scp-2200-jp @2020

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[一言] そんなもの鹿神様に捧げてしまえ!
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