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不死身の少女とSCP  作者: 白髪 九十九
アメリカ支部編
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Case59 幽霊ヒッチハイカー②

「あんた……奴らの仲間なのか……?」


ヴァニスの声は震えている。

怒り半分。怯え半分というように。

その質問に私はひどく戸惑っていた。


「なんのこと?」


平静に言葉を返すも、どこかで言葉が震えているかもしれない。


彼のいう『奴ら』とは、財団のことだろう。

問題は何故彼がそれを知っているのか。

まさか彼も財団の職員なんてことはないだろうし、財団のことを知っているものなんて要注意団体だけだ。


「とぼけるなよ。俺知ってるんだよ」


ヴァニスはゆっくりと此方に詰め寄ってくる。


敵か味方か。

財団を脅かす存在なら、私がここで捕らえなければいけない。


「言っている意味がよくわからない」


私はそう言って、彼との距離を測る。

動きは見るからに素人。私でも拘束できる。


「だから……!」


間合いに入った瞬間。

私はベットから飛び出し、ヴァニスを羽交い締めにして床に倒す。

ヴァニスは苦しい声を出して、抵抗しようとするが、男といえど一般人。財団で訓練を受けた者の拘束からは逃れられない。


「今から私の質問に正直に答えて。さもなくは……」

「俺も殺すのかよ?」

「…は?」


ヴァニスの瞳は私を睨みつけており、そこにはギラギラとした怨念が込められている。


「俺もあの子の家族みたいに殺すのかよって聞いたんだッ!」

「……何の話?」


私は拘束を解き、立ち上がる。

ヴァニスは身体中に痛みを訴えながらも、私を睨みつけている。だが、とても人を騙すような目には見えない。少年の純粋な瞳。例えそれが憎しみだろうと。


「何があったのか聞かせて」


私は勝手にヴァニスを敵じゃないと判断した。

理由としては、なんとなくだが、特に悪意は感じられなかったのだ。


「……俺見たんだよ」


ヴァニスはぽつぽつと話し始める。


幽霊ヒッチハイカーを最初に目撃したのは彼だった。

以前の幽霊ヒッチハイカーは自らを「マリー・トリッシュ」と名乗る赤いセーターとシャツを見に纏った温厚な幽霊であり、怪我跡も一切見られなかったという。

また、無視したとしても危害を加えることはなかった。


そして彼女を乗せた場合「家まで送り届けてほしい」と頼まれる。

だが、辿り着いたのは近くの墓地。彼女はそこで降りるとそこには赤いセーターが残っており、それに触れると彼女の家に届けたいと思うようになるという。


「それで、家族はいたの?」

「あぁ、いたさ。泣いて喜んでた。だけど、どっか不安そうだったな」

「不安?」

「多分、成仏してねーから」


なるほど。

ヴァニスの話を聞く限り、SCPと認定はされるものの、危険性はそこまで考えられない。

財団の解決法としても、エージェントを送り込んで一般人が幽霊ヒッチハイカーに会うのを防ぐといったところだろう。


ヴァニスは何度も幽霊ヒッチハイカーを車に乗せているうちに友人のような情を抱くようになった。

ある日は好きな歌手の話。またある日は好きなスポーツの話。

幽霊ヒッチハイカーの方も、何度も会話をするうちに笑顔が増えていくのを感じていた。


「だけど、アレがあってから…」

「アレって?」

「本当にあんた知らないのか?」


私は首を縦に振る。

私の知識には幽霊ヒッチハイカーに関するものはない。


「燃やされたんだよ……家が」

「え…?」


幽霊ヒッチハイカーの家。

そこが燃やされた。彼女の家族ごと。

燃え盛る家から悲鳴が聞こえているのを、偶然ヴァニスは見かけたのだ。

財団の服を着ている人物が、家に火を放ったのを。


「…私が急に襲われたのは」

「その服だろうな」


彼女……幽霊ヒッチハイカーは財団に強い恨みを持っている。

何故、財団がそんな行動を取ったのか定かではないが、それ以来彼女は凶暴になり今のような異常性を得たのだという。


「……俺は何もできなかった。ただ、見てるだけだったんだ。俺は……約束したのに」


ヴァニスの悲痛な嘆きに心が締め付けられる感覚に陥る。


「なぁ、頼みがあるんだ。俺をあの子のところまで連れて行ってくれないか?俺が行くといつも出てこないんだ」


どうしたものか。

連れて行ってあげたい気持ちはあるが、正直危険ではある。

財団の服は着ていないものの顔を覚えられているかもしれないし、そもそもヴァニスを友好的に思っていない可能性もある。

というか、財団職員が一般市民をSCPに接触するように仕向けていいものだろうか。


だけど、私はこの人を放って置けない。


「わかった。行こう」



********************



深夜にヴァニスと共に再び車を借りて、例の街道まで進んだ。

一応、血塗れの車で行くのは警戒される可能性があるので表面だけでも洗ったがキツい鉄の匂いが残っている。

後ろの席に座っているヴァニスはどこか緊張しているようだ。


「凄い匂いだな……何があったんだよ」

「いや、ハハハ…」


殺されましたなんて言えないしね。

幽霊に嗅覚がなければいいのだが。流石に血塗れの車に乗りたくなるほど幽霊にも肝は座ってないだろう。


「彼女に会って、どうするの?」

「…まだ決めてねぇよ。だけど、何か」


それ以来、ヴァニスは黙ってしまった。

これは私の勝手な妄想なのだが、彼は幽霊ヒッチハイカーに惚れているのだろうか?


……いや。なんでもかんでも恋愛に結びつけるというアイリスの癖が私に移ってきている。

この前なんて「雛染さんとシャロットさんって『アリ』だと思いませんか?」と言っていた。

あるわけないだろう。


「そろそろだな」

「そうだね」


ヴァニスの呟きと、車のライトが幽霊ヒッチハイカーの姿を映すのはほぼ同時だった。

彼女は相変わらず悲惨な姿をしており、直視するのも躊躇われるほどだ。


「……ヴァニス」

「大丈夫だ。乗せてくれ」


ちらりと、ヴァニスの姿を確認する。

彼は、以前の幽霊ヒッチハイカーしか見ていない。その表情にはやはり少なからず恐怖と困惑が残っていた。


私は彼女の前で車を駐車する。

しかし、幽霊ヒッチハイカーはこちらに乗る様子はない。


少しづつ体が薄くなり、姿が消えていっている。


「あれ…?」


私の予想とは反し、幽霊ヒッチハイカーは車に乗ることなく姿を消そうとしている。

それを見かねたヴァニスが車から外へ飛び出した。


「トリッシュ!!」


ヴァニスの言葉を聞いた彼女は消えるのを止め、抉れた瞳でヴァニスを見る。

ヴァニスは少し気圧されたが、もう一度彼女の名前を呼んだ。


私も車内から降り、二人を少し離れたところから観察する。

もし、幽霊ヒッチハイカーが危害を加えるようなことがあったら身を賭しても守らなければいけない。


「君と話がしたかったんだ」


幽霊ヒッチハイカーは話を聞いているように思える。

頷くことも、何かを話すこともないが、その瞳はヴァニスに向いている。


「…約束を守れなくてごめん」


その言葉を皮切りに、幽霊ヒッチハイカーはヴァニスを車に押し付け、首を絞める。

あまりにも一瞬の出来事に私は反応が遅れてしまい、すぐに左手を伸ばそうとするが、ヴァニスによって止められてしまう。


「い……い…!大丈夫だか…ら……!」

「大丈夫なわけないでしょ!?」


幽霊ヒッチハイカーの握力は側から見ても人間を大きく凌駕しており、全力で抵抗したとしても首から手を離せるとは思えない。

ヴァニスは最初は幽霊ヒッチハイカーの手を握っていたが、ゆっくりと手を離すとその掌を彼女の頭に当てた。


「ごめんな……もう辛い思いはさせないって約束したのに」


約束……?

二人の間に結ばれたものだろうか。


その言葉を聞くと、幽霊ヒッチハイカーはピクリと動き、やがて口を開いた。


「嘘つい……た………守っ…て……くれる……っていった………のに……!!」


辛うじて言葉は聞き取れるものの、とても正常な人間が出すものではない。悲痛で苦しい声。


「もう……何……も……信じ……ない………全員殺し…て……やる……!」


首を絞める力が強くなっていく。

流石にまずい。これ以上は命に関わる。


私が左手を伸ばそうとしたその時。


ヴァニスが優しく彼女を抱きしめた。


「ごめんな……ごめんな……」

「……ッ!」


幽霊ヒッチハイカーの手が緩まる。


「こんな俺の言葉なんて信じられないかもしれないけど。もう一度お前を守らせてくれないか?」

「……嘘…だ。もう……失……うの…は嫌だ」


きっと。

二人は仲良くなるに連れて、並々ならぬ関係へと発展したのだろう。

彼女の生前の事を聞いて。

ヴァニスはそれを守ると誓った。


しかし、彼は財団の前に何もできなかった。


「もう二度と君を悲しませない」


幽霊ヒッチハイカーはまるで、張り詰めていたものが切れたかのようにヘナヘナとその場に座り込む。


「もう……遅い…よ。わた…しは……化け物だ」

「そうだとしても、君が悲しんでいるのを俺は見ていられない」

「なん……で…?」

「君が好きだからだ」


私は思わず、口を押さえる。

告白だ。初めて見た。

アイリスの恋愛脳もあながち馬鹿にならないかもしれない。


地平線から太陽が上り始める。

眩い光があたりを照らし始め、幽霊ヒッチハイカーは徐々に体が薄くなっていく。


「明日でも明後日でも。君を迎えにここに来る」

「………うん」


太陽の光に包まれた瞬間。

その一瞬だけ、私には彼女が可愛らしい女性に見えたのだった。

*御館 友梨のSCP勉強のコーナー*


「このコーナーでは、私、御館 友梨が画面の前の皆様と一緒にSCPを勉強していくコーナーです!今日の先生はこちら!」


「シロツメ……です」


「シロツメさん!よろしくお願いします!」


「最近……出番が……ないです…」


「あー……またすぐに出番がありますよ!と、とにかく!説明いきましょう!」


「今回紹介するのは……SCP-1475-JP……『標的はノースカロライナ』です……。オブジェクトクラスは……Safeになっています……」


「ノースカロライナってアメリカの州の一つですよね?」


「その通りです……。SCP-1475-JPは木製の椅子で……13脚収容しています…座ると3分後に…爆発と共に……ノースカロライナに向かって……射出されます……ロケットみたいに」


「……何の為に?」


「製作者や……その意図も………不明です……です…が……危険性はありません」


「屋根のあるところとかで座ったら危なくないんですか?某RPGの街に移動する魔法みたいに頭ぶつかっちゃうんじゃ…」


「椅子に座った人物は……外部からの干渉を……一時的に受けません……そのため…旅客機や……鳥類との衝突も……ありません……」


「あれ、意外と便利?ちょっと変わってるけど移動手段に使えるんじゃないですか?」


「……SCP-1475-JP-13……13脚目の椅子に座ると……2%の確率で……サウスカロライナ……1%の確率で………ウェストバージニアまで飛ぶので………確実性は約束できません……」


「何故?!」


「それに……地球の移動であるならば………申請をいただければ……財団のジェット機を借りることができます……」


「そういえば、ここ色々規格外なの忘れてたや…」



SCP-1475-JP

『標的はノースカロライナ』






「SCP-1475-JPの標的はノースカロライナ」はsemiShigUre作「SCP-1475-JP」に基づきます。

http://ja.scp-wiki.net/scp-1475-jp @2016


「SCP-1337の幽霊ヒッチハイカー」はAdminBright作「SCP-1337」に基づきます。

http://www.scp-wiki.net/scp-1337 @2011


「SCP-105のアイリス」はDantensen作「SCP-105に基づきます」

http://www.scp-wiki.net/scp-105 @2008


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