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Case29 マジかよ、ンドレッツ・ゲガ最低だな

昨日に引き続き私はエージェントの代わりとしてとある地方へと行くことになった。

そこでは住民全てが同じ夢を見る事が続いており、その調査として向かうのだ。


私と、


「なんで私がわざわざ行かなきゃいけないのよ!」


雪菜(こいつ)で。


……私が雪菜と出会ったのは1ヶ月前。

食堂で昼食をとっていた時のことだった。


「SCP-________!私と勝負しなさい!」


突然だ。

初対面だ。


「えっと……どなたですか?」

「私は雪菜!夏華の永遠のライバルよ!」


彼女が言うには、夏華と最近よく一緒にいる私は夏華の助手にあたるらしく(そんな事実は無い)、その助手を倒しにきたと言うことだ。


当然、面倒なので逃げたが。


とまあ、この件から分かる通り彼女はかなりバカだ。

いや、当然頭はいい。

夏華さん曰く魔術等の分野においては私よりも上らしい。

だけど、それを上回るほどのポンコツだという。


更に性格は我儘で自分勝手。


何故そんな人と私が二人でアルバニアまで行かなくてはいけないのか。


「まだ着かないの?」


車を運転しながら雪菜は不満そうな顔をする。


「もうすぐ着くから我慢してくださいよ」


アルバニア北部の街「ドレズ」

到着まであと1時間



********************




……空が泣いている。


目下には地上を覆い尽くすばかりの化け物。


私の名前を呼ぶ声。


その声の主に私は体を引き寄せられる。


その男は白人の男。


名前はンドレッツ・ゲガ。



……違う。


貴方は……。


「…………!!」


その声は悲鳴と怒号に掻き消された。



********************



鳥の囀り。

こんなもので目覚めたのはいつぶりだろうか。


「どうだった?」

「……覚えてないです」


私達が街に着いた頃、既に日は落ちていたので実験も含めて一度ホテルで眠ることにしたのだ。


「はぁー?!意味ないじゃん」

「ごめんなさい。雪菜さんは?」

「私は……ドーナツ奢ってくれた」

「はぁ」


ここの住民は揃ってンドレッツ・ゲガという男性が夢の中に現れるという奇妙な現象に悩まされている。

しかもその人物は夢の中で自分を助けてくれる…らしいのだが、最初は好意を抱くものの何日も連続で見るのだから次第に気味が悪くなってくる。


「さて、どうしますか?」

「まずはンドレッツ・ゲガが実在するのかどうか調べないとね」


********************


「私で最後ですか?」

「そう。もう全員揃ってる」


薄暗い不健康な光が灯ったコンピューター室。

そこには夏華、シャロット。

そして9人のエージェント。


「さて、みんな揃ったね」


クリス・ストレイト

耽美な容姿をした欧米系の男。

その腰に携えた専用の拳銃は銃身が異様に長い。


星影 優希

物優しそうな雰囲気を漂わせる男。

夏華の隣に座っておりその姿はまるで番犬を連想させる。


流 美郷

髪を肩ほどまで伸ばした女。

この緊迫した空気がどこか苦しいのか周りをキョロキョロと見渡している。


ヴァルト

異常な図体と頭に被った紙袋が異様な雰囲気を漂わせている男。

腕を組みただ座っている。


王 軍陵

比較的高身長な男が多い中、小柄な体型を持つ男。

行儀悪く足を机の上に置いている。


久馬 蓮

長い髪を後ろで一つに結んだ女。

その立ち振る舞いは大和撫子というのが相応しいだろう。


シュレン・マスチット

この静かな場に似付かないほどの派手な髪色とアクセサリーをつけている女。

久馬の隣に座っておりどこか彼女を意識しているようだ。


ブロア・バッヂ

いかついサングラスをした黒人の男。

その筋肉はクリスよりも二回りほど大きく、頭が光を受けて輝いている。


シャネル・カール

一番最後に来た緑の瞳をした女。

耳から肩につくほどの長いピアスをつけている。


「さて…それじゃあ始めようか」


********************


ンドレッツ・ゲガという人物を探した結果。


その人物は実在する……というかこの街の市長選挙に出馬していることがわかった。


「怪しいですね」

「そうね…けどこれといった証拠がないわ」


ンドレッツ・ゲガはミステリアスな人物で演説以外に人前に姿を現さない。

また、夢の事を話した住人には「知らない」と答えたそうだ。


「選挙の日っていつですか?」

「ちょうど明日。発表もその日のうちにするみたい。人が少ない街だから集計も楽なんでしょうね」


…てことは。


「選挙の当日ってゲガさんは家にいないですよね」

「そうだけど…どうして?」

「忍び込みましょうよ。彼の屋敷に」


……ということで。


ゲガさんの屋敷は頭の中で思い浮かべた豪邸をそのまま形にしたような、そんな建物だった。

入り口には屈強なガードマンが立っている。


「さて、どうやって入ります?」

「そんなの決まってるじゃない」

「あっ……」


私の制止を聞く前に雪菜さんは勝手にガードマンの前へと進む。


「なんだお前は」

「あのぉ……わたしぃ……ここに入りたいんですけどぉ……」


ハニートラップ?!


「今日はゲガ様はいらっしゃらないし来客の話も受けていない。帰れ」

「……こうなったら奥の手!」


雪菜さんは懐から拳銃を取り出すとガードマンの首筋向けて発砲した。


「な、何やってんですか?!」

「麻酔銃だから大丈夫よ」

「いや、それでもダメでしょ」

「まあまあ、とにかく私のおかげで入れたんだから」


…まあ、遅かれ早かれその手段しかなかっただろうが。

私と雪菜さんはガードマンを引き摺り側の茂みの中に隠した後、息を殺して屋敷の中に侵入する。


「なんですかそれ?」

「秘密兵器『電波探知機』」


秘密じゃないが。


「私が思うに、多分電波的なもので人の睡眠時の深層心理に入り込んでると思うのよね。多分」

「そんなバカな」

「あ、反応あり」

「マジ?」


雪菜さんが持ったヘンテコな機械は地下室への階段を指していた。

階段の奥は薄暗く、シャンデリアで照らされたこの館にとってあまりにも異質であった。


「私、地下室に嫌な思い出あるんですよね」

「どうしたの?小さい時のトラウマ?」

「いやトラウマというか……最近殺されかけまして」


カニバリズム強要のイカレ野郎に。


「まあ、降りないっていう選択肢はないわよ」

「ですよねー」


まあ、仕方ない。

私達は階段を音を立てないように一歩一歩静かに降りる。


そこにあったのは明らかに厳重な扉。

幾つもの電子キーがかけられている。


「当たりっぽいですけど…これどうします?」

「まあ、電子キーなら開けられるから問題ないでしょ」

「え?」

「いや、財団職員なら全員開けられるよこのくらい」


なんだその財団ハイスペック。


「20秒くらい。人来ないか見てて」


そういうと雪菜さんは小型のパソコンのような物を取り出し、扉に接続した。


この人…オーラはないけど凄い人なんだよな。


そんな事をボーッと考えているうちに扉は開き、私達は中にある物を目撃する。


「………なんですかこれ」


それは最早人とは言えない死体だった。


四肢は乱暴に刃物で切り取られており、顔には大小二つの輪のドリームキャッチャーが貼り付けられており下の輪にはアンテナのような形を模したレゴブロックが結び付けられている。

額には液晶画面が埋め込まれ、ケーブルには何も繋がっていないにも関わらず画面にはよくわからない文字が映し出されている。

そして、口にはアルバニア語で「能力」「信頼」「権威」と書かれた紙が咥えられていた。


「うわ…」


死体を玩具にしたのか……?

それにしては手が込まれている。


「どうやら機械みたいね。人を原料にした」


雪菜さんはいつの間にかすぐ近くで死体を覗き込んでいた。


「機械って……」


言われてみればこの死体、おかしい。

額に埋まったモニターは電源が繋がれていないのについているし、雪菜さんの機械が本当ならこの死体から電波が出ている。

それに、この死体はあまりにも綺麗すぎる。

まるでついさっきまで生きていたかのように。


「まさかこれって」

「うん。これが私達が探してたSCPだよ」


突然、後ろの扉が豪快に開け放たれる。


「おやおや、こんな所にネズミが2匹」

「……ンドレッツ・ゲガ」


そこにいたのは中年の男。

手には拳銃を持っておりこちらに構えていた。


*御館 友梨のSCP勉強のコーナー*


「このコーナーでは、私、御館 友梨が画面の前の皆様と一緒にSCPを勉強していくコーナーです!今日の先生はこちら!」


「シロツメ……です」


「シロツメさん!よろしくお願いします!」


「はい……今回…紹介するのは……SCP-551『難しいパズル』オブジェクトクラスは…Safeです」


「確か……完成しないパズルですよね……そのまま」


「完成しない……というより……完成させられない……です」


「どういうことですか?」


「SCP-551は……一般的なピースパズル……なのですが……そのパズルを解こうとすると……強い依存性が見られます……」


「パズルを解きたくて仕方ないということですか?」


「はい……それこそ倒れるまで……」


「うわぁ」


「Dクラス……を使用……した所……完成までは至らず……その後……とある博士が解こうとした所……完成間近で…続行を拒否しました……」


「拒否……ですか?」


「はい……顔や一部の場所を除いた……他の場所は完成させたのに……です」


「ちなみにそのパズルってどんな絵柄なんですか?」


「嵐の海の中で小さな手漕ぎボートに乗っている一人の女性の絵……だそうです。顔はわかりませんが……あと一部の場所は」


「一部の場所っていうのは?」


「私には……わかりかねます」


「なるほど…なんで顔が完成できないんでしょうね?」


「お顔に……自信がない……とか……?」


「結構辛辣なこと言いますね」


SCP-551

『難しいパズル』


「SCP-2934のマジかよ、ンドレッツ・ゲガ最低だな」はButtfranklin作「SCP-2934」に基づきます

http://www.scp-wiki.net/scp-2934 @2016


「SCP-865の紳士のムチ打ち」はSmapti作「SCP-865」に基づきます

http://www.scp-wiki.net/scp-865 @2012


「SCP-551の難しいパズル」はdiogenes作「SCP-551」に基づきます

http://www.scp-wiki.net/scp-551 @2009

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[一言] マジかよ、ンドレッツ・ゲガ最低だな!
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