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Case28 沼女

気がつけば施設の中でエージェントを見ない事に気付いてから1週間ほど。

私はエージェントの代わりとして博士についていくことが多くなった。


丁度、今日はカレナさんのSCPへのインタビューへの付き添い。

普通はエージェントを付けるものだが、私が代理ということだ。


「かなりの力を持つSCPだからね……気をつけないと」


と、カレナさんが戦慄しているものだから物凄く警戒していったのだが…


「奈落の悪鬼、黒き翼の堕天使アイスヴァインッッ!!」


この少女は明らかに大袈裟に手を振り回しかっこいい(と思っているのであろう)ポーズをとっている。


ちなみにその一言一言にカレナさんは震えている。

…そんな認識障害でも持っているのだろうか。


「えっと……もう一回お願い」

「奈落の悪鬼、黒き翼の堕天使アイスヴァインッッ!!」


言ってくれるようだ。

SCP-014-JP-J。オブジェクトクラスはEuclid。

至って普通のエージェントと至って普通の研究員の間に生まれた女の子。

第二の人格として奈落の悪鬼、黒き翼の堕天使アイスヴァインという存在を主張している。


「えっと……カレナさん」

「なんで恐ろしいの…」


マジか。


「えっと…それが貴方の名前?」

「否…それは…我の第二の人格の名…ですよ」


まぁ、こんな世界だ。

全て冗談と一蹴することもできないだろう。

カレナさんが使い物にならなそうなので私がインタビューを進めるしかない。


「その……地獄の…それはいつから自覚し始めたの?」

「わた……我の肉体に生まれながらにして憑依していた力天使が14歳の時に覚醒したのですよ」


14歳……!

中学二年生……!

ドンピシャ……!


しかも普通に私って言おうとしてたし。

これは流石にダウトでしょ。


「えっと……その人格はどんな人なのかわかる?」

「奈落の悪鬼、黒き翼の堕天使アイスヴァインは邪悪な霊を見る事ができ、天才的な剣術と冷気を操る力、さらに高度な飛行能力とあらゆる人間を魅了する美貌を持っているのです…!先の神々の戦では冷気によって氷の剣を作り出し戦ったのですよ……!」


うわぁ…


「てか、多重人格なら顔は変わらないし美貌っていうのはどうなるの?」

「それは……えっと…顔も変わるんです!」

「顔も変わるの?!」


それは確かにSCP。

いや、嘘だろうけど。


「ていうか、天使なのに何とかエルってつかないんだね」


ミカエルとかガブリエルとか。


「ふふふ、それはですね、我の堕天使様は特別だからですよ!」


それでアイスヴァイン……。

なんかどっかで聞いたことある。

なんか前に食堂で見たような…?


「あ、豚の塩漬け」

「へ?」

「豚の塩漬けだ。アイスヴァインって」


確か、ヨーロッパの方の料理の名前だ。

私は食べなかったがヴァルトさんが食べてたような気がする。

食事中は顔が見えそうで凄い観察してたから覚えてるんだ。まさか外さずに首のところから入れるとは思わなかったが。


「豚の、塩漬けなんですか?」

「うん」


SCP-014-JP-Jは急に黙り込んだかと思えば少し低い声を出しポーズを決める。


「そは我が名前にあらず……我が名前はアザナエルなり……って堕天使様は言ってます!」

「エルってついたじゃん」


特別とはなんだったのか。


「いや……だって……アザナ……」


あ、泣き始めた。


「何やってるの?!ユリちゃん?!」


何やってるんだろう。私。



********************



「はぁ……」


結局あの後インタビューは中止され、私はカレナさんにこっ酷く叱られた。


いや……まあ、私も悪かったところはあると思うけどさ。

なんか釈然としない。


「あ、ユリちゃん!」


廊下を歩いていると向かい側からミアさんが歩いてくるのが見えた。


「あ、ミアさん。こんにちは」

「こんにちは。ユリちゃんってこれから暇?」


まあ、やらないといけない事はあることにはあるが急ぎではない。


「暇ですね。どうしました?」

「よかった!これから新しく収容した子のところに行くの。一緒に来てくれる?」


まぁ、そんな事だろうとは思っていたが。

流石にエージェント無しでのオブジェクトとの接触は認められなかったのだろう。

だから私に声をかけたというわけか。


「わかりました。どんなSCPですか?」

「SCP-811。ちょっと変わった女の子だよ」



********************



収容室は一言で言うと湿地。

湿った土壌と丸太。そして綺麗な水。


私とミアさんは宇宙服のような鈍重なスーツを着て収容室へと侵入した。


SCP-811。オブジェクトクラスはEuclid。

細長い手足と少し膨らんだ腹部を持つ女の子……のような生物。

身長は171cmと高いものの、そのように思えないのはやはりその容姿からだろうか。

彼女は肌から薄い緑色の粘液を常に分泌している。


「こんにちは。SCP-811」


そんな見た目など気にする事なく、ミアさんは生徒に話しかける先生のように声をかけた。


「……あえ!」


その子もまた呼ばれた事が嬉しそうにミアさんを見る。


「アエって貴方の名前?」

「うん!わたしのなまえ!」

「わかった。じゃあアエって呼ぶね」


無邪気に接しているが、この子は人を食う。

体内から分泌するその液には人間の組織を分解する機能があり、このスーツもそれを防ぐ為のものだ。

今では他の動物の肉を提供している。


「アエ、私達に何かしてほしいことはある?」

「ごはん」


それを聞くとミアさんは私に指示を出す。

私は持ってきた箱から蛙を出してアエの方へと渡す。


「やた!」


アエはカエルを足で踏み潰すと液体でそれを消化し始める。

これが彼女なりの食事なのだろう。


「せんせーひつもんしたいの?」


アエは上機嫌でニコニコとミアさんに笑顔を向ける。

どうやら気に入ってくれたようだ。


「そう。貴方のことを知りたいの。貴方の思い出せる最初の思い出は?」

「おもらしさせるたいそー?……はこのまえ?」

「箱の前の前」

「……いちばんまえ?」


アエは神妙な面持ちでそう尋ねる。


「うん。一番前」

「おっきい人。たかい。アエちっちゃい、おっきい人よりとってもちっちゃい。おっきい人ににてた」


アエは大きな身振りで必死に何かを伝えようとしている。

大きい人…?

大きい人が何かに似ていた?


「何がその人に似てたの?」

「これ!アエ ににてない。おっきい人ににてた。にんげんににてた。」


そう言って彼女は自分の頬を摘む。


「あなたの肌?」

「はだ……はだ」


アエはその言葉を聞くとニコリと笑う。


……待って。


「私達と同じ肌だったってこと?」


思わず口に出した疑問。

その回答は返ってこない。

アエからもミアさんからも。


「アエ、それから?」

「いたいぼう、ここ。つめたい」


彼女のした動作は注射を打たれる動作となんら変わらなかった。


「……そして?」

「いたい。あか。あか。あか。あか。とても…おなかすい-た。こわかった。人たべた。はだ…こうなった」


………その事実は。


彼女が何かの実験に巻き込まれたことを示唆していた。


「……ミアさん」

「そっか。ありがとうね」


ミアさんはスーツ越しにアエを抱きしめた。


「ミアさん!?」


幾らスーツ越しとはいえそんなに大胆に触れてしまっては無事ではないはずだ。

聞いたこともない音を立てながらスーツは少しづつ溶けていく。


「辛かったよね……助けてあげられなくて…ごめんね」


私はミアさんをアエから引き剥がす。


「死にますって!!」


厚いスーツは作業服が見えるギリギリまで溶けており、後もう少し遅ければ液体が肌に付着してしまっていただろう。


「待ってて。アエ」


アエはミアさんを見るとニコリと笑った。

その表情は年相応の少女の笑顔と変わらなかった。


「まてるね。みあ」



********************



「ありがとう」


収容室から出た後、ミアさんは申し訳なさそうに私に言った。


「いえ」


私は何で言っていいかわからずに曖昧に言葉を返した。


「……私は助けたいんだ。人間もSCPも。もちろん中には無理な奴もいる。SCPにも人間にもね。だけど一人でもそんな人をなくしたいんだ。この手で」


…ミアさんは私を見て笑った。


この人は本当に善人なのだろう。

人間と同じようにSCPも救いたい。

このように話せる人が何人いるだろうか。

一人もいないかもしれない。


私も頑張らないと。


人間として。

SCPとして。


彼女と考えていることは一緒だった。



「ふふふ……私の中に宿る悪魔の暴走の時は近い……また液体窒素で作られた剣で神々を斡旋する時が来るようだ……」


……頑張ら……ない……と。


「……前は天使って言ってなかった?あと氷の剣って。変わったの?」

「……わた……我の間違いでし……だった」


………はぁ。

*御館 友梨のSCP勉強のコーナー*


「このコーナーでは、私、御館 友梨が画面の前の皆様と一緒にSCPを勉強していくコーナーです!今日の先生はこちら!」


「こんにちは。カインです」


「カインさん!よろしくお願いします!」


「おまかせください。私はSCP-073『カイン』オブジェクトクラスはEuclid。体の一部が金属によって構成されるアラビア系の30代の男性です」


「結構美形ですよね。カインさん」


「ありがとうございます。私の異常性は大きく分けて3つ。一つは周囲20mの土で育つ生物を死滅させる能力。嫌気性菌も死滅させるためその地は不毛の土地となります。そのため、私の周り植物系のSCPを近づける事は禁止されています」


「ということは、野菜とか食べたことないんですか?」


「そうですね。食べる前に腐敗して崩れてしまいます。他にも植物由来のものが使えないので、紙も持てないですし」


「それは不便だぁ」


「二つ目の異常性は攻撃の完全反射。敵意があるとみなした攻撃を全て反射します。注射などを打とうとした場合は認識障害を起こし気づいたら自分の腕に注射をしていることになりますね」


「それめちゃくちゃ強いですよね。私も欲しいな」


「三つ目は映像記憶能力です」


「具体的にどのくらいのものなんですか?」


「そうですね……歴史上の事は何でも説明することができますし、滅んだものも含め世界中で使われている多種多様な言語を話すことができますあとは…1分半で辞書を全て暗記しました」


「……なんかカインさん見ると自分が何だかちっぽけに見えてきます」


「そうですか?私はユリさんもすごいと思いますよ」


SCP-073

『カイン』



「SCP-811の沼女」はPig_catapult作「SCP-811」に基づきます

http://www.scp-wiki.net/scp-811 @2009


「SCP-014-JP-Jの奈落の悪鬼、黒き翼の堕天使アイスヴァイン」はtokage-otoko作「SCP-014-JP-J」に基づきます

http://ja.scp-wiki.net/scp-014-jp-j @2014


「SCP-073のカイン」はKain Pathos Crow作「SCP-073」に基づきます

http://www.scp-wiki.net/scp-073 @2008

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