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Case22 改造された医療用ベッド

免許証も持っていない私がなんとかして街まで降りてきたのはいいが……


これからどうしよう。

そもそも病院に行ったところでどうやって説明する?

そもそもお金も持っていないし…….


とりあえず、私は車から降りて、病院の場所を聞く事にした。

しかし、この街は不気味なほどに人通りが少ない。


「何かあったのかな?こんなに人通りが少ないなんて……ん?」


私は電柱に貼り付けられている紙を見る。

どうやら防犯を訴えかけるポスターのようだ。


「小学生及び中学生を狙った誘拐が多発……?」

「君、どうかしたのかい?」


私は突然後ろからかかる声に驚き、慌てて後ろを振り向く。

そこには若い気の良さそうな欧米系の男の人がいた。


「ああ、驚かせたのならすまない。私はカール・フレイザー。ここらで医者をやってる」

「医者?!」


どうやら神は私を見放していないようだった。



********************



「ここら辺には病院がなくてね。この街に医者は僕しかいないのさ。だから簡単な手術くらいはできるようにしてる」


クリスは腹部に包帯を巻いて眠っている。

カールさん曰く、綺麗に刺さっていたのと、臓器を避けて刺さっていたためダメージは少なかったという。


「本当にありがとうございます。何から何まで」

「いいさ。困った時はお互い様だ」

「それなのに……ごめんなさい。お金は後で必ず払いますので」

「あぁ、大丈夫。そこら辺は信用してるさ」


カールさんは後払いの約束で手術を請け負い、こうして暖かいココアまで出してもらっている。

本当に至れり尽くせりでなんだか申し訳なく思えてくる。


「そういえば、カールさんは外国の方ですよね?どうして日本で医者を?」

「あぁ、別にたいした理由はないさ」


そういってカールさんはココアを啜る。

しまった。あまり聞かれたくない事だったか。


「すいません、私変なことを聞いたみたいで」

「いや、まあ。気にしなくてもいい」

「そう言っていただけると……ところでトイレをお借りしてもよろしいですか?」


ほっとしたところで気が抜けてしまったようだ。

それを聞くとカールさんは笑って答えた。


「ああ、いいとも。部屋を出て突き当たりを右だ」


私はカールさんにお礼を言うと、用を済ませ、部屋に戻ろうとする。

が、どこからともなく少年の声が聞こえた。


どうやら、先ほどの突き当たりを左に行ったところ。その地下室からのようだ。


「なんだろう?他にも怪我をしてる子がいるのかな?」


私は好奇心から地下室への階段を降りていく。


地下室は一面が石の素材でできており、まるで監獄のようだった。

その時から既に嫌な予感はしていた。

が、私の好奇心は止まることを知らない。

いつもならこんな事しないだろう。

私はどこか慢心してたのかもしれない。


私は地下室の奥へと向かう。

そこにいたのは。


医療用ベッドに両手両足をくくりつけられた二人の少年。

腹部には冷凍されたステーキが置いてあり、少年たちは泣きながらそれをナイフで切り取ろうとしている。

しかし、冷凍されたステーキはツルツルと滑り、少年たちのナイフは自らの腹部を傷つけていた。


「……は?」


想像もしていなかった光景。

そして全身に走る電撃。


「ぐっ……あっ……」


私は、床に倒れ込んで気を失う。


その間際、瞳に映ったのはスタンガンを持ったカール・フレイザーその人だった。



********************



私は目を覚ます。

冷たい感覚。


私は、両手両足を医療用ベッドに拘束されていた。


先ほどの少年達はいない。

ここは先ほど見た部屋とは違い、私一人分のベットしかなかった。


「あぁ、起きたのか」


私はその声の主を睨みつける。

カール・フレイザー。

彼に先ほどまでの好青年のイメージは皆無だった。


「なんのつもり?」


私が真っ先に考えたのは要注意団体の可能性。

財団と敵対組織なら私を拷問にかけるつもりだろう。


「そんなに怖がらなくてもいいよ。僕は君に美しくあってほしいだけなんだ」


カールはニコリと笑う。

気味の悪い笑顔。反吐が出る。


私は、街で見かけたポスターを思い出す。

小学生及び中学生を狙った誘拐の多発。


そうか。こいつが犯人か。


「何をする気なの?」


もし、彼が要注意団体で、財団の者が目的なら私以外の人物をあんなに巻き込むはずがない。

それならその可能性は薄い。


「これさ」


カールはナイフを持たせると、私に握らせた。


「どうだい?お腹が空いてこないかい?」


何を言ってる……?

彼はニヤニヤと何かを期待した目でこちらを見る。


「自分を食べたくならないかい?」


…………は?

なんだこいつは。

思考はカニバリスト。

いや、自分を食べるカニバリストなんて聞いたことない。


「おや?理解できないのか」


わかるはずがない。

こいつは頭がおかしい。


「考えてごらん。人間というのは俗世にまみれた物を食べるからだんだんと汚れていくのさ。実際に暴飲暴食の限りを尽くした大人どものなんて醜いことか」


得意げに語るカール。

まるで当たり前のことを言うように。


「貴方が何を言ってるか全然わからない」

「つまり、生まれたばかりの人間は美しい。しかし、汚れた物を食べていくうちにだんだんと汚れていってしまう。それなら美しいものだけを食べていけばいい」


こいつ狂ってる!!

否、この空間に何かしらの異常性質が働いている……?


もし、ここにSCPがあるとしたなら。

このベッドか……?!


しかし、手錠はかなり頑丈につけられており、外れる気配はない。


「あの子達はどうしたの……?」


私は先ほど見かけた二人の少年のことを尋ねる。


「ああ。彼らには1週間。何も食べさせなかったんだ。そうしたら自分の肉を食べるかなって」


カールの顔が歪む。

まるで、可哀想な雛鳥を見るような目で。


「僕は努力したんだ!彼らに美しくあってもらおうと!だからお腹の上に凍らした牛のステーキを置いてあげた!もちろん食べることはできない!食べようとするツルツル滑るからね!でも僕のナイフはとても切れ味が良くてさ!!お腹の上のステーキを食べようと頑張ってるとお腹の肉が……」


彼は夏休みの自由研究を自慢する子供のように興奮している。

私の対異常性質の能力は、私自らにかかっているものにしか作用しない。

どうしたら彼の洗脳を解くことができる……?


「けど!!!!それでも!!!彼らは自分を食べなかった!!!だからしょうがなかったんだ!!!だから僕は彼らのお腹の肉を!!!」

「…………殺したの?」


私は今の言葉を激しく後悔する。

今のは相手を興奮させる言葉に他ならない。


「殺した……?違う!!!殺したんじゃない!!!手助けをしたんだ!!彼らが美しくなるための!!!」


叫びながら、彼は鋭利に尖ったナイフを持ち出してくる。


「お前も……わかるようになる!!俺が正しいって……!」


カールは私の腹部目掛けてナイフを振り下ろす。

私は痛みに備えて目を閉じる。


……私は無力だ。

私は誰も救えない。

私じゃ何も変えられない……!



……しかし、私の腹部がナイフに貫かれることはなかった。


「なんだよ!オマエェ!!!」


男の手をつかんでいたのは、クリス。

すかさず、男に蹴りを入れ、男は薬棚に叩きつけられる。


「何してんだお前。そういう趣味なのか?」


私に向かって少し軽口を叩きながら。






その後。

クリスの服についていたGPSから居場所が見つかり、私たちは機動隊に無事保護された。


SCP-480-JPの事件から生き残ったのは私たち二人だけ。

エージェント、Dクラス職員合わせて17名が亡くなった。






……カール・フレイザーの周囲からは一切の異常物質が検出されなかった。


彼は、何もおかしくなかったのである。

*御館 友梨のSCP勉強のコーナー*


「このコーナーでは、私、御館 友梨が画面の前の皆様と一緒にSCPを勉強していくコーナーです!今日の先生はこちら!」


「……クリス」


「……はーい。ということでクリスお願いしまーす」


「はぁ……なんで俺がこんなこと」


「いいから早く!」


「……今回紹介すんのはSCP-480-JP『未完成の山間公園』オブジェクトクラスはEuclid

あの如月工務店が関わってるSCPだ」


「如月工務店っていうと、あの鬼の?」


「ああ。SCP-480-JPは如月工務店が公園づくりに反対する住民や社長の娘を材料に作った公園だ」


「うわ……胸糞……」


「その影響か、SCP-480-JP内では所謂バグっているような状況になってる」


「バグバグ……バグと言えば、クリスってゲームとかするの?」


「あぁ?まあ、偶にはな」


「え?どんなゲーム?バイ○ハザー○とか?」


「いや、ど○ぶ○の森とか、牧○物語とかだな」


「え。嘘。意外すぎる」


「SCP-3000-EXの改造された医療用ベッド」は

psul作「SCP-3000-EX」に基づきます。

http://www.scp-wiki.net/scp-3000-ex @2017


「SCP-480-JPの未完成の山間公園」は

rkondo_001作「SCP-480-JP」に基づきます。

http://ja.scp-wiki.net/scp-480-jp @2014

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