99話 戻る時間
まさかこんな事になるなんてな…… えりながオカルトめいた事を言っていた事も今ならわかるよ。
「足立君! さっきからちょくちょくボーッとしててムカつくんだけど?」
「え? ああ、ごめんな。えりなだなって思ってさ」
「…… なんなの? キモいんだけど」
ああ、ついえりなを前のえりなの時と同じように考えてしまう。 これじゃ軽蔑されそうだ。 このえりなは俺は眼中になく上野を好きだった。
「ええと、話を戻そう。 えりな、俺に上野の事を逐一報告しなきゃいけない理由は?」
「言って信じる?」
「まぁ話してみろよ? じゃないと進まないだろ?」
「うう…… 笑わない?」
俺はコクンと頷く。
「私…… 半年以内に好きな人に告白して付き合えなきゃ死んじゃうの!」
「………… 」
やっぱり。 えりなはここでもその制約に縛られてるんだな。
「はぁ〜、言っちゃった……」
同じ事をすれば同じ結果になる。 だから俺はあの時とは違う結末にしてやるんだ。
「理由はわかった」
「そう、わかったの。 なら話は早いわ…… って…… ええ? やけにあっさりしてるわね。 てっきり変な奴とか思われるかと思ったのに。 まぁ足立君も変な人だけど」
「どうしても上野の事報告しなきゃダメか?」
「当たり前じゃない!」
相変わらずこの時のえりなはかなりツンケンしてるな…… でも今ではそれも懐かしい。 今のこの状態のえりなに俺が好きと言ってもまったく相手にされないんだろうな。 考えるとなんか……
この頃はまだ昔と同じ様に振る舞った方が良いのかもしれない。
「やっぱ協力は無理だ、諦めろ」
「……こ、このッ」
俺が立ち去ろうと後ろを向いた時、肩を引っ張られバランスを崩しえりなに覆い被さるように倒れてしまった。 そしてパシャッという音が聞こえた。 えりなの片手を見ると携帯が握られていた。そして俺とえりなの今の状態をしっかりと撮っていた。
うん、前もこんな感じだったよな。 もう驚く事はないけど驚いたフリしとくか。
「な、何すんだよ!?」
「この写真見られたらどうなると思う? 私足立君に襲われちゃったなんて言ったらどちらを信じるでしょうね? ふふッ、そんな事になりたくなかったら私に協力しなさい?」
「お前みたいな変な奴の言う事なんか誰が信用するかよ?」
「あら、私は普段いたって真面目で美人でみんなから一目置かれる生徒よ? それに男の足立君より女の私の方が言う事信じてもらえそうだしね」
うーん、今でもめちゃくちゃな奴だなって思うけどあの時の俺とは考え方も感じ方も違う。 えりなの気持ちが変わったのって野外演習の時だったよな?
そのままえりなと前に起こった事をなぞる様に事が進む。 そして先生に絡まれえりなは嘘泣きで誤魔化しえりなにジュースを奢る。
そして俺は……
「まぁ仕方ない、弱みも握られたし協力してやるか」
「本当!? やったぁ!」
そしてこの後昇降口で上野と花蓮に会うんだよな。 そしてそこへ向かうとやはり居た。
「あ、健斗どうしたこんな時間に珍しいな?」
「そうだね、足立君がこんな時間に女の子と一緒に居るなんて珍しいね? しかもえりなちゃんじゃん! 嘘? もしかして校内デートだった?」
「な、ななな何言ってるの? 私足立君なんかとはなんでもないよ? さっきだって足立君にッ…… 」
えりなは死角から俺を突いてきた。なんとかしろって言うんだろ? わかってるよ。 花蓮、とりあえず昔の花蓮だよな?
「ちょっとえりなに話があってさ、上野と花蓮こそデートか?」
「んん? えりな? 花蓮? お前っていつの間にそんな仲に?」
上野が怪訝な顔をして俺に聞く。 しまった、つい癖で…… えりなも少し焦っている。 なんとか軌道修正しないと。 そう思っていると花蓮がニコッと笑った。
「まぁいいじゃん? 私的には全然OK! 上野君の友達なんだしさ! だったら足立君は健斗君…… うーん、健斗君って可愛い系だから健ちゃんって呼んじゃおうかなぁ」
「俺は上野君のままなんだな……」
「健ちゃんは友達だから気軽に呼べるの、上野君だと私もちょっと恥ずかしい……」
花蓮が顔を赤らめて上野にそう言うと上野も満更でもなさそうだ。 上野とは最悪な関係になってしまったけどこの上野と俺は上手くいくだろうか?
「まぁお前らもデート楽しめよ健斗、美咲、じゃあな」
「え!? え! ちょっと違う、私はッ……」
花蓮は去り際俺に可愛くウインクをした。 マズッたかなぁ…… 花蓮に好かれて悪い気なんてするはずないけどあれを回避するには花蓮にこれ以上余計な気を持たせない方がいい。
「何よさっきのザマは! 上野君の前で気軽にえりなって呼ばないで! 勘違いされちゃうじゃない、ああ、今のでどれだけ遠のいたか……」
その後えりなから散々怒られ上野への情熱を嫌になるほど聞かされた。これも予想通り。 俺はこの後なんだかんだでえりなと一緒に帰る。
「なんでお前ついてくるの?」
「私の家もこっちの方角なのよ! 離れなさいよ! 誰かに見られたらまた勘違いされちゃうじゃない、そっちは私と勘違いされて嬉しいだろうけど私にとっては迷惑極まりないわ」
「お前自意識過剰もいい加減にしろよ? 俺だって今日お前の本性知ったから流石にドン引いてるんだよ」
「乙女の純情を言うに事欠いてドン引きですって!? そういう人に限って私と一緒に居て好きになるんですからね!」
ああ、その通りだ。 俺はお前が好きなんだ、だけどえりなは知らない。 記憶があるからこそ戻れて嬉しいはずなのに悲しい。
「そうかもな……」
「え!?」
「いや、なんでもない」
「なんなのよ? 引っかかるわねぇ」
えりなは俺の正面に回り俺の事を不思議そうな顔をして覗き込んだ。
「足立君ってよく見ると可愛い顔してるのね。ま、それだけだけど! まぁちゃんと協力はしなさいよ!」
「わかってるさ……」




