98話 再会
地面に叩きつけられた時えりなは俺を守るかのような形で落ちた。 えりなは俺の下敷きになるつもりだったんだ。
えりなの体中の至る所が砕ける音が俺にダイレクトに伝わった。 そしていくらえりなが俺を守ろうとして下敷きになったとしても俺もどうなったか自分でもわからない。 ただ全身に痛みがあるのだけはわかった。 体も動かせない、辛うじて目だけは動かせる。
えりなは…… そう思ってえりなを探すと壊れた人形のように手足がおかしな方向に曲がっているえりながいた。 多分俺も似たような状態だろう。
そしてそんな状態で更に俺の下敷きになったえりなが生きてるはずもない事もわかる。
こんなのありかよ…… 俺はようやくえりなに好きって伝えてえりなも助かったと思った。 なのにこれからって時に……
えりな、お前幸せだったのかよ? こんな終わり方ないだろ? えりなに近付きたいけど体が動いてくれない。
沙耶もえりなも死んだ。 助けられたと思ったのに…… どうして、どうして。
誰かが近付いてくる足音が聞こえる、えりなを、えりなを俺の所へ。 そう思ったがその足音は俺の方へまっすぐ来た。
「健ちゃん! いやああああああッ!!」
足音の正体は花蓮だった、俺の状態がそんなに酷いのか花蓮は凄まじい絶叫を上げていた。 えりなを突き飛ばしたくせにな、そう思ったけど不思議な事に花蓮にはそれほど憤りを感じない。
確かにえりなを突き飛ばした花蓮だけどそれは今の今まで俺の行動が花蓮を迷わせ、えりなと花蓮を好きだと言った俺の行動のせいでもあるんだ。
花蓮だって俺を好きだったんだ、だから上野が俺に危害を加えようとするとあんな時でも花蓮は俺だけは傷付けまいとしていた。 いつだってそうだった、全ては俺の行動がこんな事態を招いたし俺では防ぎようがなかった。
「死なないでッ! 死なないで! 健ちゃん! あぁーーーーッ!」
花蓮の声がだんだんと聞こえなくなってきた。そして目も見えなくなってきた、 俺やっぱり死ぬんだな……
消え掛かる意識の中俺の顔に生温かい液体が掛かり程なくして俺の体の上にドサッと何かが倒れた。 花蓮……? もう俺もダメ…… かも……
そして俺を構成する精神は完全に消えたかと思った。
すると俺の意識はまだあった。 だけどここはどこだ? 見渡す限り何もない暗黒の世界。 ここって地獄か?
「いや、地獄ではない」
そう聞こえた時暗闇から眩しい光が見えた。 その光は俺に語りかける。
「健斗とやら、難儀な目に遭ったな。 見てはおれんかったぞ」
「えと、どちら様でしょうか?」
「おっと、これは失礼。 えりなという少女と私が住んでいる御社へやって来た時があったであろう? 私はそこに住む所謂神という存在だ。 えりなは私の事を縁結びの神だと勘違いしておったがな」
俺は思い出した。 えりなと出会って間もない頃連れて行かれたあの御社の神様!? まさかそんなものが本当に居たなんて…… えりなの奇跡のお陰であまり驚かないで済んだけど。
「私はその者の願いを叶えてやれる大層徳の高い神なのだがいかんせん立地条件が悪かったの。 誰も来やしないのだ、なので祈りが減れば私の力も弱る。 そしてえりなには申し訳ない事をした。 せっかく私の所へ来てくれたが私の力が極限まで弱まっておってな。祈った時には力が出せなかった。 そしてそのうちに自殺なんてしようとしおって。彼奴の自殺をなかった事にしたがそのせいで期限と条件付きの情けない力しか行使出来なかった。 それに私の力は1人につき一度しか使えない。 あの時の死んだえりなはもう助けてやれる事は何もない、だから見ていてえりなは不憫で仕方なかった」
ああ、えりなの奴ポンコツ神様とか言って怒ってたな。 だとしたらえりなもこの体験をしたって事だよな。
「だが健斗、お主が来たお陰でえりなの時より力は強まった、それに記念すべき1001人目だからの。 健斗よ、お主えりなともう一度やり直したくはないか?」
「そんな事が出来るんですか?」
「出来るぞ。 最も強まったとはいえまだまだ全盛期には程遠い。 えりなと出会った時にまた戻してやってもいい、お主次第だ。 だが言っておく、戻すと言ってもお前と日々積み重ねたえりなではない。 死んだ直後のえりなはもう今の私の力ではどうにもならん。 それで良いなら戻してやろう」
つまり俺の元いた時間軸とは違うえりなと言う事だろうか? いや、戻すって事はそうでもないのか?
「お主にも疑問はあるだろう。 だがそれでもえりなだ。 同じように接すれば同じ結果になろう。 えりなはえりなだ。 彼奴にとってもそれが1番の幸せだろうと私は思う。 だが同じ過ちは繰り返さぬようにな」
確かに…… 死んだえりなと違ってもえりなはえりなだ。 そこは変わらない、あんな悲しい結末になるんだったら変えてやりたい。 俺はえりなを好きなんだ、えりなを幸せにしてやりたい! 今度こそ!
「決めたようだな。 ではこれよりお主はまたえりなと出会った時に戻る、今度はえりなを幸せにしてやるとよい」
そう言って光が更に強くなり俺は気付けば夕焼け色に染まった空に学校の屋上、そして目の前にはえりなの顔があった。
「ちょっと! 人の話聞いてるの!? ぼけっとしちゃって。足立君!」
「えりな!? 生きてるのか?」
「え、えりな? 今会ったばかりでいきなり呼び捨て!? 馴れ馴れしいわね、生きてるって…… まぁ生きてるけど」
「ほ、本物だ…… てことは本当に……」
「何? 本物って? 足立君さっきから大丈夫?」
本当に戻った。 俺の事を足立君と呼んでいるからにやっぱりえりなには俺の事はわからない。俺がこうしてえりなに会っているのが2度目だって事も。 そして今まで俺となんだかんだで一緒にやってきたえりなとは違うんだ…… だけどこれは紛れもなくえりなだ! 俺はどこか少し寂しい感じはしたが今度こそえりなを幸せにしてやろうと強く思う。
「それより! さっき言った事わかったわね?」
「さっき言った事?」
「やっぱり聞いてない! だからこれから上野君の事私に逐一報告してくれない? って事!」
えりなだけじゃない、花蓮も沙耶も同じようにここに居るはずだ。




