96話 凶行2
俺とえりなと沙耶は花蓮と上野に拉致られて廃病院に拘束されていた。 くそ、もうこんな事になったら元には戻れないじゃないか……
ふと花蓮の笑い声が止まった。
「えりなちゃんも日々野さんも健ちゃんをダシにしたら簡単に引っかかるんだもん。 しょうもないビッチだよね」
「花蓮、えりなと沙耶は純粋に俺の事を想っていただけなんだぞ?」
「私も…… 私も健ちゃんの事純粋に好きなだけだよ? なのに……」
花蓮はしくしくと泣き出した。 花蓮お前の好きは狂ってるよ、いや、そうさせたのは俺なのか?
「花蓮ちゃん、それより地味子を早く病院に……」
「あ? 黙ってよ」
えりなが喋ると花蓮が急に怒り出した。 えりなを締める腕に力が入りえりなの言葉が止まる。
「なあ花蓮、日々野は本当に病院に連れて行った方が良くないか?」
上野が少し焦ったように言う。 今更こいつは……
「上野君は黙ってなさいよ? あ、そうだ、えりなちゃんこういうのは慣れてるって言ったよね? じゃあこれでも?」
花蓮はえりなの腕を一気に捻り上げそのまま強引に力を加えた。
ボキッという音が聞こえてえりなの腕がぶらんと力なく垂れ下がった。
「あああああッ!」
「えりな!」
えりなは床に倒れ折れた腕を悲痛な叫びと共に押さえた。 悪夢だ…… こんなの俺は見たくない。
「アハハハハッ! いい悲鳴! 流石に骨折りは堪えるんだね!? じゃあもう一本行っとく?」
「ひいッ!?」
泣いて痛みを堪えるえりなのもう片方の腕を花蓮が押さえ力を入れようとした瞬間花蓮の体がえりなから横に吹っ飛んだ。
「ああんッ! 何よぉ〜? 日々野さん復活?」
沙耶の意識が戻って花蓮を突き飛ばしたのだ。 沙耶、意識が戻ってくれてよかった……
「沙耶、逃げろ!」
「ダメ…… えりなちゃんは友達…… それに健斗君も置いていけない」
「地味子……」
「なぁんだ、結構丈夫なんだね日々野さんって。 でも私相手にしてどうにかなるとか思わない事ね」
沙耶は花蓮に掴みかかった。 そんな沙耶に花蓮は殴りかかる。 俺は沙耶を助けようと必死にもがくと腕の拘束が解けた。 待ってろ沙耶と思うと後ろから上野に抑えられた。
「上野ッ! このままじゃ沙耶が本当に死んじまうぞ!?」
「俺はこうしないと…… 花蓮に認めてもらえないんだ!」
「はぁ!? そんな事言ってる場合か?」
俺は必死に上野から離れようとした時……
「はぁ…… いい加減にしろ! このゴミクズッ!」
花蓮が渾身の力を込めて沙耶の頭部にメリケンサックを叩き込んだ。 花蓮を抑え付けていた沙耶の腕がガクンと落ち沙耶も床に力なく倒れる。
「嘘だろ? 沙耶ッ!」
「嘘…… 地味子、どうしてこんな……」
「ありゃりゃ、今度こそ死んじゃった?」
俺は上野のを引き離し急いで沙耶のもとへ向かう。 だけど沙耶は目を開けてピクリともしない…… 沙耶はもう息をしていなかった。
沙耶…………! 馬鹿野郎、死んだら元も子もないじゃないか…… 俺は涙が止めどなく溢れた。 沙耶、俺の事をいつも考えてくれていた沙耶が。 ついこの間まで一緒に笑ってたじゃないか……
「し、死んだ、本当に……」
上野が愕然として尻餅をついた。 花蓮は俺から沙耶の体を引き離す。
「死んでまで健ちゃんに構ってもらおうとするなんて許せない、日々野さん!」
ダメだ、花蓮はまともじゃない、そう思った時俺はせめてえりなをと思って倒れているえりなの手を取りその場から走り去る。
「け、健斗!?」
「お前は殺させない、俺お前に何も伝えてない…… 今日だってその為にッ」
「健斗……」
「逃さない! 上野君追いなさい!」
そんな声が後ろから聞こえたが俺は夢中でえりなを連れて逃げる。 だけどえりなは怪我をしていた。 折られた腕の他にも脚にも怪我しているようだった。 俺は上野が追ってくるかもしれないのでこれ以上速く走れないえりなと病院の部屋に隠れた。
走ってる時にわかったけどここは病院の最上階のようだった。 くそ…… 部屋の窓に寄り掛かり外の様子を見ていると……
「健斗…… もういいよ、健斗だけでもここから出て?」
えりながそう言ったので何事かとえりなを見た。
「私そろそろ時間切れみたい……」
えりなの腕に刻まれた刻印の残りが塵のように消えていく様をえりなは俺に見せた。




