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94話 前兆


あっという間に修学旅行も最終日の帰りのバスの中、花蓮の様子が少しおかしかった。 話し掛ければ話すのだが何か考えているようで心ここにあらずだ。



「花蓮、やっぱりお前今日ちょっと変じゃないか? 昨日まであんなに明るかったのに」

「あはは、ちょっと疲れたのかな? 私もそんな時あるんだよ健ちゃん。 それに私は変じゃないよ、変なのは……」



花蓮は何か言い掛けてまただんまりした。 隣にいる沙耶を見ると沙耶もさぁ? といった感じだ。



そして上野が前の席からチラッとこちらを見ていた。 やっぱり上野も花蓮の事気にしてるのかな? まぁ上野ならそうだろうな……



でも花蓮の事は気にかかるけど修学旅行はみんなバラバラだったお陰か何事もなく終われたな。



俺にとってはこの後のえりなの事の方が重大だ。 俺やっぱりえりなの事が好きになってる。 だから俺がえりなを救ってやれるのなら救ってやりたい。 あいつももう限界近いはずだ。



えりなだってそれがわかってるから俺に会おうとしたんだ。 花蓮、沙耶、えりな、俺今までお前達に振り回されてばかりだと思ってたけど俺がハッキリしないせいで俺もお前らを振り回してたよな、ごめんな。



俺は3人なんて同時に付き合えるほど器用じゃないし、それに見合うだけの男でもない。



だから結果として2人が傷付く事になっても選ぶよ。 それが1番いいんだ。 それにえりなだけじゃない、こいつらにとってもこうしていられる時間だって無限じゃない。



俺に縛られているとこいつらだっていつまで経っても苦しいままなんだ。



「健ちゃん、日曜日一緒に遊ばない?」



突然花蓮がそう言った。 でもダメだ、日曜日はえりなと会う約束があるしそれ以降はもうないかもしれないし……



「ごめんな花蓮、日曜日は用事があるんだ」

「用事って何?」

「ちょっとな……」

「そのちょっとの用事って?」



花蓮がここまで食い下がるのは珍しい。 いつもはあまり深入りせずにじゃあ別な日にするとか言ってくるんだけどそれに目付きもなんかおかしい。



一体何があったんだ? 俺は昨日花蓮にえりなとの一部始終なんて見ていた事に全く気付かずそんな能天気な事を考えていた。



学校にバスが着き、俺達は別れそれぞれ帰る。 すると後ろから足音が聞こえるとえりなが小走りでこちらに向かって来た。



「もう! 健斗ったら先に行っちゃうんだもん。 少しは待っててくれてもいいのに!」

「ごめんな、なんか花蓮の様子がおかしかったからさ、誰かと一緒に居るとちょっと危ないかなって思ってさ」

「花蓮ちゃんの様子がおかしい? 確かに帰る時睨みつけられたけど…… まぁいっか、健斗の家にもお土産買ったんだ。 だから健斗の家に今からお邪魔するね?」

「え? わざわざ俺の家にまでお土産?」



そう言うとえりなはえへへとお土産の入った袋を俺に見せてきた。



「そんなんにお金使わなくてもいいのに……」

「いいの! 私がそうしたいから買ってきたんだし。 あ、あとこれ健斗に!」



えりなが少し恥ずかしそうに俺にお守りを渡した。 恋愛成就系のお守りらしい……



「これって……」

「どうなるかわかんないけどさ、誰を選んでも私健斗が上手くいくようにって応援したいなって思ってさ。 それが花蓮ちゃんでもね」

「えりな……」

「私も一応買ったんだ、お揃いね!」



えりなも同じお守りを取り出し俺に見せた。



えりなと一緒に家に帰ると母さんと響紀が俺達を出迎える。



「お帰りお兄、えりなさんも来てくれたんだね! 2人ともお疲れ様」

「えりなちゃんいらっしゃい、疲れたでしょ? 今お茶でも出すから上がって待ってて」

「ありがとうございます、これお土産です。 後でみんなで食べて下さい」

「えりなさん気が利く! お兄のお土産は変なの選びそうだからあまり期待してなかったけどえりなさんのなら安心ね!」



この野郎…… とも思ったが中学の頃のお土産に響紀に俺の趣味で選んだ物買っていったらこんな物いらないと言われた記憶を思い出した。 あの時から学んで少しは気の利いたお土産俺だって買ってきたんだぞ。



食べ物系なら文句ないだろ。 あ、えりなと被ってたりして……



「お兄とえりなさんってもうカップルみたいだね! ていうかカップルか」

「はぁ!?」

「え? そう見える?」



いきなりそんな事を言う響紀に驚く俺と嬉しそうにしているえりな。 疲れてるんだからからかうのはやめにしてくれよ。



そうして修学旅行の最終日は俺の家でえりなが母さんと一緒に料理を作って食べた。 なんか本当にえりなが家族というか恋人みたいなのかな? そんな風に思った。



ここまで俺とえりなはいろいろあってこんな風にえりなが穏やかで自然に純粋な笑顔を見せるようになるまで積み重ねてきた。



俺と時間を共有したえりな、俺が好きになったえりな。 だけど何気ない日常はいきなり崩れたんだ。 いや、終わったんだ。



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