92話 修学旅行
「行ってらっしゃい健斗、気を付けてね」
「お兄お土産よろしく!」
「ああ、じゃあ行ってくる」
朝早く俺は家を出ると家の外でえりなが待っていた。
「健斗おはよう」
「なんだ、えりな、居たのかよ? いつから待ってたんだよ?」
「ついさっきよ」
「連絡くらいしろよな、そしたらもう少し早く出たのに」
えりなはサプライズと言って俺の手を握った。 わざわざ俺の家に出向くなんてな。
「修学旅行は良いんだけど野外演習と違ってあまり健斗と接点持てないのよねぇ」
「まぁそんな事言ったってほぼ全員で回るだろ? それに班ごとに別れるのって自主研修くらいだし」
「でも部屋とか野外演習みたいに健斗と一緒になりたいじゃない」
「あれは野外演習がおかしかったんだ、普通は男女別だろ?」
えりなはプイッとしてしまった。 でもそんなそっぽを向くえりなが少し可愛かったので頬を突いてみる。
「何よ? 」
「お前なんだかんだ言って修学旅行楽しみなんだろ?」
「…… まぁね。 だってあまり遠くに出掛けた記憶ないもの、そりゃ楽しみじゃない。 健斗もいるし」
えりなは頬を膨らませながらそう言った。 学校に着くともう既にバスが待機しており他のみんなもチラホラといる。
「あ、健ちゃん! こっちだよー!」
「健斗君、美咲さんおはよう」
「おはよう、沙耶、花蓮。 お前らもう来てたんだな」
「おはよう花蓮ちゃん、地味子」
えりなが挨拶すると花蓮はえりなに対して何かバチバチとした視線を送る。 修学旅行まで喧嘩するなよ……
「花蓮、そんなにえりなを威嚇するなよ? えりなだってそんな事されたらどうしたら良いかわからないだろ?」
「え!? 威嚇なんてしてないよ! 最近えりなちゃん少し様子が変わったなぁって…… 健ちゃん一緒に観光しようね!」
「私も健斗君と一緒に観光する!」
「言うまでもなく私もね」
3人の間で勝手に俺の許可を取らず組み込むのはいつもの事だしこうなるとは思っていたのでここまではご愛嬌だ。
「あ、ねえねえ、健ちゃんバス乗る前に記念写真撮ろうよ? 今から行くぞー! みたいな。 観光名所でも撮るけどさ、出発の前にって事で!」
「いいぜ? だったらそこに3人並べよ」
「それだと健ちゃんは?」
「俺は後で撮るからさ、最初は花蓮達を撮ってやるよ」
そう言うと花蓮は不満有り気にえりなを見る。 えりなはお構いなしだけど真ん中に沙耶を入れ2人は両端に並ぶ。
「ほら、せっかくなんだからちゃんとみんな笑おうな?」
そう言うと3人とも笑顔になり俺は携帯のシャッターを押した。 うん、上手く撮れた。 こうして見るとえりなも花蓮も仲悪いなんて信じられないくらいの笑顔だな。
「健斗見せてみなさいよ?」
「あ! 私も見せて見せて!」
えりなと花蓮はどう写っているのか気になったのか俺に今撮った写真を見たがるので見せてあげた。
「ふぅん、健斗にしては綺麗に撮れてるわね」
「流石健ちゃん! 私が1番可愛く撮れてる! バスの中でラブラブしようねぇ、えりなちゃん抜きで」
花蓮は意地悪そうにそう言った。バスの中はクラス別だからえりなとは離れる。えりなは少しムッとしたが花蓮と争うつもりはないらしく花蓮の言葉をスルーした。
「あれ? えりなちゃん何も言い返さないって事はそうしていいってことかな?」
「別に…… 健斗の事バスで考えてるからいいわよ」
「へぇ、えりなちゃんすっかり丸くなっちゃったわねぇ。 じゃあお言葉に甘えて健ちゃん、ラブラブしようねぇ!」
「わ、私も居るからね! 健斗君」
えりな、花蓮と険悪にならないように我慢してるんだな。 えりなだってあんな態度をとっているけど俺の自惚れじゃなければ一緒に居たいんだろうな、いや、違うか。 俺がえりなと一緒に居たいのかもしれない。
そうしてようやくみんなが揃い先生達がバスに乗れと促す。
花蓮は俺の手を引っ張りいの一番でバスに乗る。 沙耶も負けじとついてきた。 なんか野外演習の時を思い出すなぁ……
「健斗! 着いたら一緒に回ろうね!」
えりながそう叫んだ。
「ああ、そうだな」
聞こえたかわからないけどえりながニッコリ微笑んだので多分聞こえたかな。
そうして俺達をバスに乗せ修学旅行は始まった。 1番後ろの席で俺は沙耶と花蓮に挟まれ2人の間隙のない応対で目的地に着く頃には既に疲れ始めていた。




