86話 突然の訪問
えりなが去って行った後俺は静かに部屋のドアを開け廊下に出た。 あいつがあんな事言うから目が覚めちまった。
まぁ流石に響紀の部屋に戻ったよな。 俺はトイレに寄り用を済ませてから部屋に戻った。
なんかえりなの奴が本当に消えてしまうような感じがした。 まぁそんな事あるわけないな。 俺はまた寝ようとしてベッドに入ろうとすると部屋の外のベランダに何か居る気配を感じた。
泥棒か? そう思って恐る恐る窓からベランダを見た。 隣の響紀の所か? この角度からだとよく見えないと思って注意しながらそっと窓を開けた。
そこに居たのは泥棒ではなくえりながベランダから外を見ていた。 まさかまた飛び降りる気か? こんな高さだと打ち所余程悪くないと死ねないだろ? なんてそんなわけないよな……
えりなは何かボソボソと呟いている。 何を言ってるんだ? と思ってよく聞いてみると呟いてるんじゃなくて小さい声で歌っていただけだった。
歌が途切れたと思った途端えりなは俺に気付いた。
「健斗?」
ヤバ…… そう思った瞬間にえりなの顔は真っ赤になり眉間にしわを寄せた。 だよな、怒るよなそりゃ。
「いつから?」
「え?」
「いつから起きてたのよ!?」
「今だよ! 急に目が覚めてベランダに何か居る気配がしたから覗いてみたらえりなだったってだけだ!」
そう言ってもえりなは疑いの眼差しを俺に向けている。
「本当でしょうねぇ?」
「本当だって! てかベランダに出て何してんだよ?」
「別に。 頭を冷やしてただけよ、それと健斗の家から見える景色を見てみたかっただけ」
プイッとそっぽを向いてえりなはそう言った。 あ、いつものえりなだわこれ。 さっきのえりなはやっぱり幻だったんじゃないかと思うほどの。
「ねえ健斗」
「なんだよ?」
「もし私がもうちょっと素直で花蓮ちゃんみたいに可愛く振る舞えたら私の事好きになってた?」
「さぁ? どうだろな? まぁ今更そんな風になったら逆に怖いけどな」
まぁえりなは最初から無茶苦茶だったからな。 でも最近は前ほど嫌じゃなくなってきている。 それに素直な所もちゃんとあるしな。
「別に花蓮みたいにとか拘る事ないだろ? えりなはえりななんだから」
「それでダメだったんだからそう言ってるのよバカ…… でもそうよね、私は私よね。 あー、なんだか眠くなってきちゃった。 私もう寝るね、夜更かしはお肌に悪いし」
「じゃあ最初から寝てろよ……」
俺はベッドに再び戻り今度こそ寝た、そしていつの間にか朝になっていた。 そして起きるとえりなが俺の目の前にいた、俺のベッドの横でえりなも寝ていた。 いつ来たんだ? と徐ろに時計を見ると10時半過ぎ。 夜更かししてたからか……
するとえりなも目を覚ました。
「ふぁ〜、おはよう。 健斗の寝顔見てたら私まで釣られて寝ちゃった」
「おはよう…… って響紀は?」
「友達と遊びに行くって。 健斗のお父さんお母さんも私に健斗を任せて出掛けたわ」
マジかよ…… 相変わらずフリーダムだなうちの家族はえりなと俺を2人きりにするなんて俺が何かするとかは思わないのか? 母さんはイケイケモードが隠しきれてないけど……
「2人っきりね健斗」
えりなが弾んだ笑顔でそう言う。
「そう言っても何もする事ないけどな」
「別に何もしなくてもいいじゃない? て言うよりそれは何かして欲しい事でもあるって聞こえるわよ? もしかして健斗から私に何かして欲しい提案でもあるのかしら?」
「あ、いや、お前帰んなくていいの?」
「もう帰る話題? 嫌! そうやって私に意地悪する気?」
困ったなぁ、昨日のあれがあったからえりなとなんとなく顔合わせ辛いんだよな、なんか意識してしまいそうで……
そうこうしていると俺の携帯が鳴った。 着信は沙耶だった…… えりなに加えて沙耶、なんだか心がざわついてきた。
「誰?」
「沙耶……」
「地味子か、出ないの?」
お前が刺すような視線を向けるから余計に出にくいんだよ! でも仕方ないので出る。
「沙耶、どうした?」
「健斗君おはよう、今健斗君の家の前に居るの…… 」
お前はメリーさんかよ……
「あ、そう……」
そう言うと電話がブツッと切れた。
「なんだって?」
「沙耶が今俺の家の目の前に居るって」
「アポも取らずに? 常識ないのかしら地味子ったら」
お前が言うなと言いたいけどマズい、また血みどろの殴り合いなんてなったら……




