84話 何がしたいんだ?
俺は急いでえりなの家に向かう。 あー、せっかく風呂入ったのにこれじゃあまた汗かくよ…… 本当に明日が休みで良かった。
それにしてもあの時気付いてればもっと楽だったじゃないか。 えりなが「また来週」とかってな…… いつもなら休みでもああいう時は会おうとするのがえりなだし。
本当に俺の事振り回してばかりだ、どいつもこいつも! 俺も知らんぷりして行かなきゃいいのに行ってしまってる時点で飛んだお人好しだけどな。
あ、携帯忘れた…… くそ、もしえりなが家の辺りにいなかったらこれじゃあわかんないぞ? しかもそれで家に戻ったらもう出してくれなそうだし。
それにえりなが家に入れてたら尚更わかんねぇ。 頼むから家の近くにいてくれよ、えりな! てかこれじゃあ家に入れた方がいいのかそのまま入れなかった方がいいのかわかんねぇじゃねぇか!
だんだんえりなの家が見えてくる、人影はない…… やっぱいないか? えりなの家に着き荒くなった呼吸を整える。
「はぁはぁ…… まぁいないか」
「いるわよ……」
俺の独り言に返事が返ってきたのでビックリして辺りを少し見渡すと家の塀の角でえりなは小さく丸くなっていた。
いた…… 本当に入れてなかったのか。
「なんで…… わかったの?」
「いつもお前に振り回されてればわかるだろ?」
そう言ってえりなに近付こうとするとえりなはそれに合わせて後退る。 不思議に思ってまた近付くと離れる。 何のつもりだよ?
「えりな……」
「来ないでよ。 今の私物凄く臭いから…… 健斗はお風呂入って来たんでしょう? 」
「なんだよそんな事か。 まったく、いつもくっついてこようとしてくるくせに何言ってんだよ? 臭くても臭くなくても気にしねぇってそんな事。 それに俺もまた汗かいちまった、おあいこだ。ほら、行くぞ?」
えりなに手を差し出した。 多分えりなは自分の家に鍵まで掛けられて帰りたくないだろうからこのまま俺の家に連れて行こうと思っていた。
えりなは少し迷っていたようだけど遠慮がち俺の手を握った。
「本当にデリカシーないんだから……」
「お前も人の事言えないだろ? 散々俺を振り回しといて」
「それもそうね。 …… 健斗ありがとう」
俺はえりなの手を引いて家に向かう。
「お前さ、俺が来なかったらあのままずっとああしてるつもりだったのかよ?」
「別にこれが初めてじゃないもの、大した事ないわ」
「大した事ないわけないだろ? お前女だろ、よく今まで無事でいたな、呆れた奴……」
「失礼ね、でも今日は助かったわ。 こんなに汗まみれで放置は流石にキツかったから」
そうしてようやく俺の家に着き玄関を開ける。 怒られるだろうなぁ……
「ただいま〜」
するとムスッとした感じで響紀が来た。 いや、なんでお前がムスッとして来るんだよ? 母さん気取りか?
「お兄! 連絡なしで遅くなるわ、お風呂入ったと思ったらまた出掛ける…… いい加減にしなさい!」
「お前母さんの真似でもしてるのか?」
「お母さんがあまり言わないから代わりに私が言ってあげてるの! ってあれ? 後ろにいる方は…… え、えりなさん!?」
「あはは、こんばんは……」
えりなは俺から少し離れて隅っこにいた。 ああ、汗かいてたから気にしてんだっけな。
「え? えりなさんの所に行って来たの?」
「ああ、こいつの親仕事で今日いないんだけど鍵無くしちゃったみたいでさ、だから今日泊めて行こうかなって」
我ながら適当な嘘だ、えりなをチラッと見ると少し戸惑っている。 こいつにも遠慮する心があったのか。
「でさ、汗かいて臭いから風呂にでも入れてやってくれないか?」
「え? そうなの? お父さんとお母さんに聞いてくる!」
そう言って響紀はリビングの方へ走って行った。 すると足をえりなに蹴られた。
「け、健斗ぉ! 何恥ずかしい事言ってんのよ! く、臭いですって!? 本当ににデリカシーないんだから!」
えりなは顔を真っ赤にして静かにそう言った。
「だ、だってストレートに言った方が簡単だろ!?」
すると母さんが響紀と一緒にやって来た。なんだか心なしか母さんがニヤニヤしているような気がする。
「えりなちゃん、話は聞いたわ。 それならうちのでいいならお風呂に入って? ご飯もまだでしょ? 健斗もまだだし丁度いいからお風呂から上がったら2人とも食べて。 ね?」
「は、はい。 何から何までご迷惑をお掛けします」
えりなは深々と頭を下げた。 借りて来た猫状態のえりなは風呂場へと向かった。 こんな時くらい素の態度で…… まぁ変に態度変わるとうちの家族もビックリするからいいか。




