80話 えりなと上野
学校を出て少し行った所俺は角からグイッと腕を引っ張られた。 このパターンは…… と思って引っ張った主を見るとやはりえりなだった。 まったく何時間待ち伏せしてたんだこいつは。
「健斗……」
でも今回はちょうど良かった。 俺もさっきの上野の事が気になってたからえりなに何があったのか聞きたいと思ってたんだ。 朝はなんか元気そうだったのに上野に呼び出された後物凄く青ざめてたからな。
「健斗いきなりごめん」
「今更なんだよ? 毎度の事だろ? どうしたんだよ?」
「あのね、さっき……」
「見つけたぞ」
突然後ろから声がした。 そしてそいつは上野だった。 なんでここに? てか帰り道逆だろ?
「健斗についていけば美咲に会えると思ったらやっぱりだ」
「お前つけてたのかよ。 やる事おかしいぞ?」
「俺からしてみたらお前がおかしいんだよ! 俺から花蓮を奪っておいて今だに美咲とも恋人みたいに仲良くして日々野まで。 ふざけてんのか?」
えりなをチラッと見ると下を向いて気不味そうにしていた。 やっぱり上野と?
「えりな、お前上野と……」
「違う、違うわ! 別に何もなかった」
「何もなくないだろ? 美咲、さっきぶった事は忘れていい、ちょっと来い」
ぶった? えりなが上野を? てかえりなは上野の事が好きだったんだろ? 俺の方が好きになったとか言っても元は上野の事が好きだったはずだ。 なのにそんな事するなんて上野が何かえりなに酷い事したってか?
上野は俺を押し退けえりなの襟元を乱暴に引っ張り連れて行こうとする。
「おい、なんだよその連れて行き方、今度はえりなに暴力でも振るう気か? えりなはお前の事好きだったんだぞ?」
「知ってるけど? じゃあやめて欲しかったら花蓮を返せよ」
「はぁ? 上野、お前こそおかしいぞ? お前はえりなをどう思ってるんだ? 花蓮が帰って来たらえりなはポイか?」
「健斗、だったらお前はどうなんだよ? 3人にいい顔しといてこのままズルズルと行く気か? お前に人の事言えんのかよ!?」
その上野の言っている事は事実だ、俺は3人の間柄で起こるドタバタにほとほと疲れて1番自分にとって都合がいい花蓮を選んだ、でもえりなや沙耶はそれでも俺に諦めないからいい加減な態度を取っていた。
そんな俺は上野と似たようなもんなのかもしれないけど……
「わかったよ上野、じゃあひとつだけ聞かせてくれ」
「なんだよ?」
「お前じゃない、えりなにだ!」
俺は上野に掴まれているえりなを真っ直ぐに見る。 そんな俺にえりなも俺を見る。
「えりな、上野と一緒に行きたいか?」
えりなは一瞬視線を落としたが首を横に振った。
「私…… 健斗と一緒に居たい!」
「わかった」
俺は上野に詰め寄りえりなを掴んでいる腕を掴み上げ強引にえりなから引き離した。 その際えりなのシャツのボタンが数個ブチブチと弾け飛んだ。
「なんのつもりだよ!? 健斗!」
「悪いな、俺は確かにお前が言った通りいい顔していい加減かもしれないけどお前みたいに無理強いはしないし何よりえりなに乱暴するかもしれない奴にえりなを任せるなんて出来ないわ」
えりなの手を握ってえりなを俺の後ろ側に回らせる。 えりなが後ろからギュッと肩を掴む。 てかなんで俺こいつのためにここまでしなきゃいけないんだ……
これも俺の都合のいいようにする為か?
綺麗事言ってないで上野に渡した方が厄介者が1人減って良かったはずなのにな。
「健斗! てめぇもう許さねぇ」
上野が俺に殴り掛かろうとした時……
「きゃあああああッ!!」
後ろにいたえりなが物凄い声で悲鳴をあげた。 耳がキィーンとなったが上野もビックリして動きを止め周りをキョロキョロとしだした。
「何かしたらまた大声あげるからッ! 健斗行きましょう!」
「え? ああ……」
えりなは俺の手を引っ張り駆け出した。 上野はそれ以上は追って来なかった、民家のある所で大声出されたら流石に堪らないもんな……
ていうかどっちの方向に逃げてんだよ? 家の方向じゃないぞ? そしてしばらく走った後、適当な公園があったのでそこでひと息つく。
「はぁはぁッ…… 大声出しちゃった」
「まったく、人の真後ろで大声出すなよ、俺が1番ビックリしたと思うぞ?
それにどこに逃げてんだよ?」
「私だって必死だったんだから! 殴られそうだったでしょう?」
「俺を巻き込んで心中しようとした奴がよく言うわ……」
「だって…… 健斗に何かしていいのは本当は私だけなんだからッ! あー、もういろいろあり過ぎて体中汗でぐしょぐしょ、帰りたい」
またわけのわかんない事言ってら…… だったらなんでこの方角に来るんだよ?
「まぁ上野の奴もお前の本性知ったらドン引きするだろうから余計なお世話かもしれなかったけどさ、なんせお前は脅しから入るからな」
「え? ああ、あんなのもうとっくの前に消したわ」
「え?」
するとえりなは自分の携帯を取り出して俺に見せてきた。 本当だ、ない…… というより何も画像がない。
「もし私が死んじゃって画像そのままにしておいて誰かに見られでもしたら困るの健斗でしょ? だからその前に全部消しちゃった」
ニッコリ笑ってえりなはそんな事を言った。




