79話 夢?
ここはどこなんだろう? 俺とえりなと沙耶と花蓮、そしてモヤがかかっていてよくわからい。 なんだか声だけが再生されているみたいだ。
「健ちゃん……」
「嘘…… 地味子、どうしてこんな……」
「嘘だろ? 沙耶ッ!!」
「どうすればいいの? どうしたらよかった?」
失意の中誰のかもわからない甲高い笑い声が聞こえそこで目が覚めた。 なんだ夢かよ…… えりなの母さんに会ったその夜そんな夢を見た。 わけがわからなかったけど悲しい事が起きたに違いない夢だった。
それは俺がこれから先進もうとしている未来を暗示しているようなそんな夢だ。 まだ9月なのにブルッと寒気が走る。
朝からえりなのテンションもおかしいし夢の事も気になったけど俺は至ってそんな素振りは見せない。 でも気になる夢だった。 何故沙耶? というか沙耶に何かあったのか?
そんなんで沙耶の事も朝から気になっていたけど沙耶はいつもの通りの沙耶だった、まぁ当たり前か。 所詮夢の事だし。
俺は花蓮と弁当を食べ終わり教室に戻る時えりなのクラスをチラッと見るとえりなは席に居た。
あいつ…… 青い顔してどうしたんだ? 上野と何があった? 俺は上野の不可解な誘いが気になっていた。 今になってえりなの心配か?
「ありゃりゃ、えりなちゃんどうしたんだろうね? なんか凄く深刻そうな顔してるよ」
花蓮が俺の横からそう言ってきた。 えりなはいつも大抵はクラスの中じゃ仮面を被っていてちょっとやそっとじゃ崩れないはずなんだけどな。
まさか上野の奴に暴力でも…… なんてな。 あいつがいくら俺が嫌いになったからってえりなにそんな事するなんて考えられないし。
…… でも上野は花蓮に手をあげたよな。 だったらそんな楽観的な事言えないなって、俺はどうしてそんなにえりなの事を考える? 俺が好きなのは花蓮でえりなと沙耶は花蓮と大事にならないように俺の都合よく動いて貰う為にその場凌ぎだけの間柄の方がいいって決めただろ!
だが俺の足は立ち止まってそんなえりなを見ていた。 えりなが廊下にいる俺に気付くと驚いた様子で俺を見て顔を逸らした。 ますますおかしい。
「心配?」
花蓮が俺の顔を覗き込みそう言った。
「いーや、全然。 ただ単に相変わらずおかしな奴だなって改めて思っただけさ。 あんなの放っておいて行こうぜ?」
俺は極めてえりななんかまったく眼中にないやという感じで花蓮にそう言った。 心配なんてまるでしていないように、怪しく見えないように……
「そうだね、えりなちゃんは変だからね」
教室に着き俺は席に戻ると沙耶はもう席に座っていた。 なんか昼に呼び出されてたな。
「あ、お帰り健斗君。はぁ〜」
「どうしたんだ?」
「ちょっとね、修学旅行今月末にあるでしょ? その事でね。 私実行委員会だったの忘れてた。えへへ」
そうだった、夏休み終わった後からいろいろそれに向けてクラスや学年で話し合いしてたな。 てかうちの学校いつもカツカツだな、そういうのって中学ではもっと前から話し合いとかしてたぞ? 実行委員会でなくても。それに修学旅行が終わったら文化祭じゃん。 面倒くさ……
でもまぁ少し安心している所もある。野外演習の時とは違って部屋とかは男女別だからだ。 てか普通はそんな事当たり前だろと思うけど。 花蓮とえりな、沙耶はその事についてはかなりがっかりしていた。
自主研修とかもなぁなぁで一緒の部屋の奴らとで良くね? みたいな雰囲気になりそこもホッとしていた。
まぁ修学旅行はいい。 沙耶も特段変わった事はないようだし……
「ん? 健斗君どうかした? は、恥ずかしい…… 見て欲しいのに実際見られると、はわわわ……」
俺もいきなりそんな沙耶にはわわわだよ…… もう慣れたけど。
「ごめんな、ただちょっと沙耶が気になって」
「へ?」
あ、変な言い方になってしまった、これじゃあ好きなんですみたいな感じに伝わってしまう。 沙耶の事嫌いじゃないけどさ。
「な、なんでもない!」
「? んふふッ、健斗君、でもなんだか焦ってるよ?」
「え? そうか?」
「なんだか美咲さんや新月さんの気持ちわかるなぁ」
沙耶は頬杖をついて俺の顔を真顔で見てそう言った。 え? なんか知らないけどわかられちゃ少し困るんだけど……
「何がだよ?」
「健斗君が自分の事であたふたしてるっていうか取り乱したりっていうか…… あ! 悪い意味じゃないからね! ちゃんと自分の為にそんな風になってるんだって事。 少し嬉しくなっちゃう」
それは悪い意味で捉えると俺を振り回したいって事か? それはやっぱり困るな。
「私だけ健斗君の反応が薄い気がしてたからなんだか少し気が滅入っちゃてたんだ……」
「そんな事ないって。 沙耶の事だって俺はちゃんと考えてるよ。 でもそんな風に沙耶を思わせちゃってごめんな?」
「ううん、健斗君がちゃんと考えててくれてるってわかったら元気出た」
はぁ、やっぱ気にし過ぎだな。 そして気を取り直してその日の授業も終わった。
「健ちゃん、じゃあまた明日」
「ああ、またな」
花蓮としばらく放課後を過ごしてその日は終わろうとしていた。




