75話 えりなside
私は今日健斗を家に絶対誘うんだって決めていた。 いつもはクソ女…… ってこんな言い方すると健斗は良く思わないわね。 花蓮ちゃんが目を光らせていてなかなか学校でアピールするチャンスがない。
それに腕ずくでって思ったんだけどこの前でよくわかった、やっぱり花蓮ちゃんにいいようにやられてしまった。 一体あの子のどこにあんな力あるのよ? 反則じゃない……
それに1年生の頃ボコボコにされた記憶が蘇るし花蓮ちゃんにどこか恐怖を抱いてるんだろうな、健斗が居るから今はそんな事は押し込められてるけど。
それでようやく健斗が1人になったので私は急いで先回りをして待ち伏せしていた。 走ったので汗をかいちゃった。右手で汗を拭うと自分でも驚くほど冷たい感覚がある。
私本当に死に向かっているんだなって感じる。
何よ? 形振り構わず卑怯な手でもなんでも使って健斗を落とせば良いじゃない? なんて考えもあるけどその分野じゃ花蓮ちゃんに遠く及ばないし何よりそれで結ばれたって言えるのだろうか? と思う。
昔花蓮ちゃんに言われたな 。「えりなちゃんは恋愛弱者なんだから私がいろいろ教えてあげるよ」って。 その時は下らないって言ってシカトしたけど教えてもらった方がよかったかしら?
なんて昔の事考えても仕方ないか。 あ、健斗が来た来た。 驚かそうかな? と思って健斗を隠れて見ていると元気がないみたい? 落ち込んでる? 健斗の事だから村上さんの事を考えてるのかな?
私は驚かすのをやめて普通に健斗に声を掛けた。 そしてやっぱり健斗が元気ないのは誤魔化してるけど村上さんの事みたいね。
だから私は村上さんが誰かに突き飛ばされたって聞いたので健斗に伝えるとまさかの私が疑われた。
そりゃ健斗を狙う他の女はもれなく私の憎い敵だけど私だったら直接相手に向かっていくわよ。 でも私が手を下さずとも勝手にリタイアしてくれてラッキーとか思ってる事は隠しておこう、嫌われたくないもの。
でも誰がやったのかしらね? 花蓮ちゃんと地味子はその時は健斗と居たようだし…… 私的にそんな事やりそうなのは花蓮ちゃん辺りが怪しいって睨んでいたけど、まさか私達の他に健斗を好きな人が?
花蓮ちゃんと地味子にも手を焼いているのにこれ以上誰かいるなんて考えたくもない。 何急にモテ出してるのよ健斗ったら……
いけないいけない、私は落ち込んでいる健斗をなんとか励まさなきゃ。 健斗が私を疑いちょっとグサリと来たけどそこはスルーして元気になってもらわなきゃ!
私は健斗にしてもらうように健斗の頭を優しく撫でた。 私がこんな事して健斗に効果あるかな? あ、冷たい方の手で撫でちゃった。
「は?」
健斗がこっちを少し怪訝な目で見た。 え? や、やっぱりいけなかったのかしら? 私は慌てて取り繕う。
でもそんな私を見て健斗は少し持ち直してくれた。 はぁ、良かった……って健斗を家に誘わなきゃと思い私は健斗に切り出した。
健斗は嫌がったりして? と思ったけど案外すんなりと家に来てくれる事になった。 私は凄く嬉しくて心の中ではしゃいでしまった。 健斗が来てくれる、今日は健斗は私のもの。 そんな風に思って家に帰ると……
こんな時に限ってお母さんが家に居た。お母さんの姿を見た途端私のテンションはだだ下がりになってしまう。
なんで居るのよ…… いつも私の事嫌って居ないくせに! 健斗と一緒にいる時に限って。
私はお母さんとお父さんが苦手だ。 お母さんとお父さんは最初は仲が良かったけど出来の悪い私を引き取ったせいで次第に仲が悪くなりお母さんは持ち前の美貌を利用して他の男と遊ぶようになった。
そしてお父さんも他の女と浮気している。 2人とも最初は罪悪感みたいなものはあったのかもしれないが今では楽しそうだ。 まるで私なんか居ないかのように振る舞い私を見ると悪態を吐く。
私は本当の両親を覚えていない。 だから私にとってはあなた達が本当の両親みたいなものなのに…… 出来が悪いってそんなに悪い事なの? 私って疫病神? そうだよね、だって私の出来が悪いせいでこんな事になったのだからやはり私は疫病神なのだろう。
健斗の前で私はお母さんに散々文句を言われ私は健斗と顔を合わせにくくなってしまう。 帰った方がいいよと健斗に言ったのにこんな時は健斗は帰ってくれない。 私から誘っておいてね…… ほら、やっぱり私って健斗にとってもそんな迷惑な事ばかり。
どんどんネガティブな方へ考えが進む中、お母さんは再び出かけて行った、私はもう頭が真っ白で家に入ろうとすると健斗が一緒に家に入った。
健斗、一緒に居てくれるの? だけど私の口から出るのは……
「どうして入ったの?」
私のバカ! なんでこういう時に素直に嬉しい、慰めて欲しいって言えないの? こんなんだから嫌われるし煙たがられるし花蓮ちゃんなんかに健斗をとられちゃうんだ。
私はその後も健斗に素直になれずせっかく健斗の為に作ったクッキーも毒入りクッキーと言って自分の首を絞める。美味しい? って聞いたけどそれに対しての答えはない。それは私のせいだけど…… でも健斗もなかなか喋ってくれないいんだもん。
そしてまた沈黙が訪れる。 私はいつの間にか両親の事を話していた。 健斗に聞いて欲しかったのかな? 健斗は私の事全然興味ないのか聞いてくれないしもう私から言っちゃおうと思ったのかもしれない。
だけど話したら少しスッキリした。 だからさっきから気になってた私が作ったクッキーの感想をまた聞いた。
美味しいって言ってくれた。 前のアップルパイを作って食べてくれた時はお世辞かもしれないしと思ってあまり実感が持てなかったけどこうして健斗と2人きりでそう言ってくれて途端に私は凄く嬉しくなって健斗に抱きついた。
やっぱり私は健斗が好き。 健斗以外は考えられない。 もし私がどうなったって私健斗を一生懸命好きになったって健斗の為に頑張ったって自分自身に誇りを持てる、お父さんお母さんみたいになんかならない。 私は健斗と幸せになりたい……




