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73話 不可解とえりなの母さん


異変が起きたのはそれからすぐ後だった。 村上はその日の放課後階段から落ちてしまったらしい。 幸いにも怪我は軽かったけどしばらく休む事になった。 俺を好きだと言ってくれたばかりなのにこんな事になってしまうなんて。



俺に話し掛ける奴は呪われるんじゃないだろうかと少し落ち込んでいた。



「健ちゃん暗いよ? どうしたの?」



花蓮がヒョイッと横から顔を出した。 だが花蓮の顔を沙耶が体で隠す。



「健斗君、元気出して? 村上さんが健斗君に告白したのは許せないけど健斗君優しいから気にしちゃうよね?」

「あはは、沙耶気に掛けてくれてありがとな。 それに花蓮も」



花蓮が沙耶の顔を手でグイッと退けて身を乗り出した。



「ねぇ? 健ちゃんが元気になれるように私と今日どこか遊びに行こうか?」

「ズルい! だったら私も健斗君!」

「ごめんな、今日はちょっと1人になりたいからさ。 真っ直ぐ帰るよ」

「健ちゃん……」



そう言うと花蓮がしょんぼりとしていた。 俺と関わると花蓮や沙耶も不幸になっちゃうかもな。 いや、なってるのかな? なんて考え過ぎか……



トボトボと帰り道を歩いていると俺の前にえりなが腕を組んで立っていた。



「健斗落ち込んでる? 村上さんの事?」

「別に。 普通に暮らしてたらこんな時くらいあるだろ?」

「おかしいのよね、話を聞くと村上さん誰かに突き飛ばされたらしいわ」



突き飛ばされた? 誰に? そんな事をしそうな奴は……



「まさかえりなお前が……」

「失礼ね! そんな事私がすると思う!?」

「え? しそうと言えばしそう……」

「もう! 私じゃないってば! だったらワザワザこんな事言うわけないでしょ!」



まぁそうだよな、えりなとはクラスは違うから花蓮と沙耶みたいにいつも見ている事はないけどえりなは堂々と嫌がらせをするようなタイプだし……



俺が考え込んでいるとポンと頭の上にえりなが手を置いた。 そして俺の頭を優しく撫でる。



「は?」

「は、励ましてあげてるのよ! 健斗だってやるじゃない!」



えりなのとても冷たい手はだんだん俺の頭を冷やしてくれた。



「そっか、ありがとな。 えりなの事疑ってごめんな、本気で疑ってるわけじゃないからさ」

「当たり前じゃない! 私だったら真っ正面から突き飛ばすわよ!」

「いや、それもどうかと思うけど……」

「ねえ…… 話は変わるけど今日私の家に寄って行かない?」



本当になんの脈絡もないな…… でもなんだかさっきまでは1人になりたいと思ってたけど今はそうではなくなっていた。

えりなだけど…… まぁいいか。



「変な事しないならいいけど?」

「変な事ってなんなのよ!? 私をどう見てるわけ?」

「はぁ〜、客観的に見てみろよ……」

「まぁいいわ、やった!」



えりなはパッと笑顔になった。 最初の頃に比べるとえりなもすっかり毒気が抜けたような気がするのは気のせいかな?



えりなの家に着き玄関を開けると見知らぬ女性がタバコを吸いながら出てきた。 まぁえりなの母さんなんだろう。 だがえりなの顔が強張る。 そしてえりなに話し掛ける。



「あら、帰って来たの。 そっちの子は?」



タバコの煙を俺とえりなに吹きかける。 なんだこいつ? そう思ってしまった。 綺麗な人だけど態度は悪い。



「えりな…… えりなさんと同じ学校の足立健斗と申します。 えりなさんとは友達で今日はその……」

「お母さん、なんで今日は居るの?」

「ああん? 居たら悪いの? 誰に世話になってると思ってるのよ?」



えりなの母さんはまるでえりなをゴミでも見るような目でそう言った。 なんでそんなに辛く当たるんだ?



「しかも私が居ない間に男を連れ込んでたなんてあんた飛んだ淫乱女ね」

「健斗、今日はごめん…… 帰った方がいいわ」

「待ちなさいよ」



えりなの母さんはそう言って俺を値踏みするような眼差しで見る。 粘りつくような視線で俺は居心地が悪くなってくる。



「ふん、別に特段熱を入れるような子じゃないわね、まぁ出来損ないのあんたにはお似合いだわ」

「お母さん! 健斗の何がいけないの? 何も知らないくせに!」

「あー、あんたなんか知らないね。 所詮拾った子だし」



拾った子? えりなの事か? そう思ってえりなを見ると顔を伏せていた。 えりなは家族と上手くいってない。 そして貰いっ子だったのか。



「でも私は今はお母さんの子なのよ?」

「はッ、あんたなんかにお母さんなんて呼ばれると寒気がするわ!」

「あの、それはちょっと言い過ぎなんじゃないですか?」

「け、健斗、いいの」

「そうよ、こんな見た目だけの出来損ないなんて引き取るんじゃなかったわ。私は今から出掛けてるから留守番してるのよ? わかった?」



なんて親だ、実の子供じゃないにしろ引き取っておいて出来損ないとは……



「返事は!?」

「……はい」



バタンと玄関が閉められ玄関の外でえりなは下を向いていた。 俺はそんなえりなを1人で置いておく事が出来ずえりなの肩にそっと触れた。




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