72話 屋上での告白
二学期が始まって少し経った頃……
「ちょっとぉ…… えりなちゃんの蛇のようなしつこさにはもう慣れっこだけど日々野さんまでどうしてここに来るの? せっかく健ちゃんとのラブラブタイムが」
「わ、私だって健斗君と一緒にお昼したいもん!」
「地味子、あんた健斗の隣でしょうが! 私なんてクラスが違うのよ!? 2人とも遠慮しなさいよ」
「健ちゃんは私の事が好きなんだもんねぇ! ね? 健ちゃん」
屋上に昼休み3人揃ってしまった…… この状況どうやって切り抜けようか俺は頭を抱えていた。2人までならなんとか誤魔化しようはある、だけど3人になるとそれもキツい。
すると屋上のドアがガチャッと開き、1人の女の子が入ってきた。 こんなとこに何しに来たんだろう? でも俺らとは関係ないかと思ってその子から目を離し弁当を食べていると……
「え?」
「はい?」
「何?」
俺に影が掛かり他の3人も様々なリアクションを取る。 そう、その女の子は俺のすぐ後ろに来たのだ。 神妙な面持ちで俺を見下ろす。
「あれ?…… 村上さんよね」
「えりなの知り合い?」
「あ、うん、まぁ同じクラスの…… どうしたの? 村上さん」
そうえりなが村上とやらに問い掛けるとようやく口を開いた。
「あのね、足立君に聞きたい事があって…… あ、あたし村上 美紀って言うの。足立君お弁当食べてるとこ悪いけどそっちに来てくれる?」
村上が指でヒョイヒョイと少し離れた場所を指した。
「村上さん、なんで健ちゃんをそっちに引っ張ってくのかな? ここじゃ話せないの?」
「え? ああ。うん、出来れば足立君以外に聞かれたくないから……」
「俺以外に聞かれたくない……?」
あ! これってチャンスだわ、この気不味い雰囲気から抜け出すキッカケになるかもしんないし。
「村上さん、後じゃダメなの? 」
えりなは怪訝な目をして村上にそう言った。 後じゃダメだ、俺は今を切り抜けたいから。
「いや、いいよ。 だってせっかくここまで来たんだからさ。 じゃあそっち行こうか?」
「うん……」
コクリと村上は頷いて俺の後ろからついてきた。 でもなんだろうな? 面識ない俺なんかになんの用事だ?
「ここらでいい? それで…… なんか俺に用事かな?」
「あの…… あのね。 ………… あたし」
村上はかなり言葉が詰まっていた。 なんかそんなに言いにくい事なのか? 俺なんかしたっけ? と急に不安になってくる。
「俺なんかしたかな?」
「あ…… そ、そうじゃなくてあたし足立君の事が好きなの!」
「は? へッ!?」
好き? 一体どうして? 幻聴かと思った。 俺全く面識ないのに……
「えっと…… どうして俺なんか?」
「どうしてって…… 好きになっちゃって。 り、理由なんかないよ! 足立君って可愛いなって遠目から見てたらいつの間にか。 それで気になってたんだけど足立君ってよくあの3人と仲良くしてるようだけど足立君って新月さんの事好きなんだよね? 噂になってるけど…… それって本当?」
「あ…… 俺花蓮の事好きだよ」
「本当に本当?」
村上が俺の目をじっと見ながら言う。
「本当に本当よ」
花蓮の声が聞こえたと思ったら花蓮がすぐ近くまで来ていた。 いつの間に…… しかも怒ってるよ花蓮。
「健ちゃんの気持ちを疑うなんて失礼じゃない? 村上さん」
「ごめん、そんなつもりじゃ…… でも足立君好きだって言う割にはいつもあんまり楽しそうじゃないなって感じて」
そんな風に見えてたのか俺? でも確かに楽しいと言うよりは3人の様子を見てハラハラしてるってのはあるかもしれない、そのせいでそう見えてるのかも。
「そんな事ないよね? 健ちゃん」
「え? ああ……」
「足立君なんかごめんなさい、でもやっぱりあたしにもまだチャンスがありそう…… 今日は話聞いてくれてありがとね!」
そう言って村上は俺に笑い掛け走って屋上から出て行った。
「チャンス? …… そんなのないよ」
「え?」
花蓮が小さく何か呟いたが俺にはよく聞こえなかった。 だけど村上が出ていき村上が居なくなった後もしばらく花蓮は屋上のドアの方を見つめていた。




