71話 不穏
夏休みはそれからあっという間に終わり二学期になった。 そして学校に向かっていると……
肩をポンポンと叩かれ振り向くと頬に人差し指が刺さった。
「おはよう健斗」
「おはようえりな」
だけど少しおかしな感じがした。 えりなの右手が冷たいのだ。 不思議に感じてえりなの右腕を掴むと手だけじゃなくて右腕自体がとても冷たい……
左手を握ってみると左手は少し冷たいが右腕ほどじゃない。 えりなの腕に刻まれた刻印を見ると3分の1が消え掛かっていた。 えりなはパッと手を振り払う。
「な、何なのよ?」
「お前…… 右手大丈夫か? 生きてる人間の体温じゃないぞ? よく動いてるな」
「だ、大丈夫よ、私もわかんないけど前兆みたいなものでしょ!」
えりなはそう言って右手を押さえた。
「ひょっとして心配してくれてる?」
「まぁそんな無関心なはずないだろ? でも俺はお前と……」
「最後まで言わないで! わかってるわよ、でも私最後まで足掻いてみせるわ」
学校に着くと教室に入る前に物騒な事を聞いた、花蓮に関する事だ。派手な女子3人がこんな事を言っている。
「新月の奴モテるからって調子に乗ってない? 上野君と付き合っといてその友達とも付き合ってたらしいよ?」
「マジ? 最低じゃん。 上野君可哀想」
「友達って足立君でしょ? そっちのが新月のタイプだったって事? へぇ〜」
「てかさ、足立君もわかんないじゃん? まだ別に付き合ってる男子居たりして」
「あはは、それだったら本当嫌な女よねぇ。 そうだ、後で私らで新月の奴しめちゃおうよ? それでさ、恥ずかしい写真とか撮って脅してやるのよ、面白そうじゃない?」
怖い、女子って怖いわ…… 教室に行くと俺は新月に今話してた事を伝えた。
「ふぅん? 怖い事考える人もいるんだね、私怖いなぁ」
え? それだけ? 花蓮は怖いと言っていながら全く動じてなく普段通りだ。
「健ちゃん教えてくれてありがとね、でも心配する事ないよ。 そんな事する度胸ないってその子達」
「本当かよ? でも注意した方がいいと思うけど……」
「本当にお前って何にも頼りにならねぇよな」
急に後ろからそんな声が聞こえた。 振り返ると上野だった。
「なんだよ上野? 聞いてたのか?」
「こんな情けない奴なんかさっさと別れた方がいいぜ花蓮」
「上野君黙って」
花蓮の声が何トーンも下がった。 え? 花蓮怒ってる?
「上野君には悪い事したって私も思ってるよ? だから私や健ちゃんの事少し悪く言うのも大目に見てたけどあんまり言い過ぎると許さないよ?」
思わず俺も後退りしてしまいそうになる恐ろしい目付きで上野を睨んだ。 上野も迫力負けしたのか押し黙った。
「これ以上健ちゃんの悪口言うならどこか消えて」
「…………チッ」
上野は舌打ちして自分の席の方へ戻って行った。 そして花蓮を見るといつものニコニコした花蓮に戻っている。
「はぁ〜、やっと言えた、スッキリ」
「え?」
「最初の方はね、私も軽くスルー出来たけど健ちゃんをどんどん好きになっていくうちに許せなくなってきてさ」
「あ、ああ。 ありがとな花蓮」
そしてそれから数日後ちょっとした騒ぎがあった。 花蓮の事をしめてやろうと言っていた女子3人組が校舎裏でボコボコにされていたのだ。
誰にやられたのかと先生に問われたが犯人の事を一切口にしなかったそうだ。 俺はまさか花蓮が? と思ったけど花蓮はその間俺とほぼ一緒に居たのでそんな事出来るはずがない。
「健ちゃんどうしたの?」
「いや、この前ここであの3人組が花蓮の事話してたなって思ってさ」
廊下に置かれている掃除用のロッカーに寄り掛かり物騒な事を話している3人組を思い出した。
「なんかよくわからないけど天罰だね、人の恋路を邪魔するなんとかってやつ」
「え? ああ、そうなのかな……」
「うん、そうに決まってるよ。 でも私をボコボコにしようなんて話してた子達が逆にボコボコにされちゃうなんて皮肉だね」
花蓮はそう言い怪しく微笑んだ。 でもやったのは花蓮ではなさそうだし一体誰がそんな事をしたんだろう?
「なんか怖いよな。 身近でそんな事あると」
「そうだね、でも私は健ちゃんを失ったらと思う方が怖いな……」
「ん?」
「ううん、なんでもないよ! 健ちゃん大好きよ」




