69話 罪悪感
花蓮の上の水着がどこに行ったのかもわからずに俺と花蓮は動けないままでいた。 普通に考えたらあの花蓮が胸丸出しの状態で極めて健全なお付き合いをしている男なら歓喜なのだけど後に控えるえりな達が怖いのでそんなToLOVEる俺は望んでいない……
泳げない役立たずの俺と片手で胸を隠している花蓮の2人では動きようがない。 少し離れた所にえりなと沙耶が米粒程の大きさで見えるけどあの2人には頼りたくない。
この状態でえりなと沙耶に見つかったらとんでもない事になりそうだし……
俺が思案していると花蓮はん〜と考えながら何か閃いたのかこう言いだした。
「うん…… これしかないよね。 よし! このままこの状態でいても仕方ないしとりあえず海から出よっか?」
「え? どうやって?」
「健ちゃん後ろ向いて」
そう言うと花蓮は俺を背中から抱えて泳ぎだす。 え? これで行くの? てか水着越しじゃなくて今度はダイレクトに花蓮の胸が当たる。
「ええ!? 花蓮、でもこれじゃあ…… ていうか」
「うん、でも健ちゃん放っておくわけにもいかないしね」
「このまま浜まで行ったら花蓮が恥ずかしい事になるぞ?」
「あー、そうかもね。 でもそれより健ちゃんが大事だから私が恥ずかしい思いするくらいなんでもないって」
背中を向けているので花蓮の顔は見えないが俺にこれくらいなんでもないよと思わせようとしている。
なんて事だ、そんなに俺の事を想っているのか花蓮。 なのに俺は3人を都合良く動かそうとして…… いやいや、ダメだ、そんな風に考えたらまた前に戻るだけじゃないか。
でも花蓮の事が1番好きには変わりはないし、このまま花蓮に恥をかかせるのは花蓮に忍びない。 えりな達以外のクラスの奴だっているかもしれないし、そんな所見られたら花蓮が嫌な思いするだけだし……
あ、そうだ! 俺が足が付くくらいの位置まで来たら花蓮を一旦置いて水着買いに行けばいいんだ。 焦ってるとダメだな、こんな簡単な事すらなかなか思い付かない。
「花蓮、俺が足付くとこまで来たら俺だけ先に上がって水着買ってくるよ。 そうすれば万事解決だ」
「あ、そっか! 健ちゃん冴えてる、私こんな形で健ちゃんに密着して緊張しちゃって思い付かなかったよ、えへへ」
「てかごめんな、せっかく買った水着。 俺が花蓮の水着掴んじゃって流されたんだよな」
「気にしてないよ。 こんなとこまで泳げない健ちゃんを連れて来ちゃった私も悪いし…… でもこれはこれで凄くドキドキした。 私真っ赤だから健ちゃんの方今見れない」
俺も振り向かれると恥ずかしい。 花蓮の柔らかい胸が背中に当たってるんだから……
そしてしばらく泳ぐと足が付くようになったので花蓮は人混みを避けた所で首まで海に浸かり俺は花蓮から離れる。
「健ちゃん足が付くようになっても流されないように気を付けてね?」
「花蓮、俺より自分の心配しろよ? 今のお前の方が心配だぞ?」
「そうでした、テヘッ」
そう言って花蓮はおどけて見せた。 まぁこれなら大丈夫そうか。 俺はザブザブと海から上がり水着売り場の方へ向かう。 すると肩をグイッと掴まれた。 余りにも肩に触れたものが冷たくて俺はビクリとして振り返る。
振り向くとえりながパッと手を離しこちらを恨めしそうに見つめた。
「健斗、こんな所へ1人で来て何してるの? 花蓮ちゃんは?」
「えりな、それに沙耶も…… ああ、ちょっと花蓮の水着が流されちゃってさ。 だから今花蓮動けなくて俺が買いに来たんだ。 えりな、お前の手氷みたいに冷たいぞ?」
「ふぅん。 って…… ええ!? ちょっと待ちなさいよ! 私の事はどうでもいいわ、てか何やってたのよ2人で? 私達かなり離れてたから全然見えなかった間に変な事してたわけ!?」
「健斗君…… どうして新月さんと? 私何も聞いてないし私だけ仲間はずれなの?」
2人にグイグイと追求される。 うわぁ、タイミング最悪…… だけど花蓮を待たせるわけにも行かないし一応説明しとくか。
「ププッ…… へ、へぇ、なるほど。 健斗泳げなかったのね。 それをあんな沖の方まで連れて行くなんて花蓮ちゃんは常識がないのかしら?」
「健斗君泳げなかったんだ? 実は私も。 一緒だね! 私も美咲さんに引っ張っていってもらってたんだけど深くなったら怖くなって…… それに美咲さんに頭から海に沈められて怖くなって」
「地味子! 余計な事言わない! あんたがジタバタするから悪いんでしょ!」
恐ろしい…… 敵をここで潰そうってか? えりなならやりかねないし逆の立場だったら沙耶も何食わぬ顔してやりそうだから怖い……
てか今はそんな事どうでもいい、花蓮に早く水着渡さなきゃ。
「花蓮ちゃん動けないならそのまま放置しときなさいよ? いい気味だわ、それに邪魔者何もせずに消えたみたいなもんだから私とどこか行きましょ?」
「健斗君、美咲さん達泳げるから私と砂浜にいよ?」
それぞれに自分の主張をする2人も俺と海に行きたかったんだろうからうるさいからどっか行けとも無下に扱うのもアレだし……
「健斗! それより私の水着姿見て? 花蓮ちゃんなんかに負けてないでしょ?」
「あ! …… け、健斗君、私はどう……かな?」
「2人とも最高だ(この状況で凄く面倒だ)2人とも俺のオンリーワンだ!(面倒なので褒めてさっさと切り上げよう)」
そう言って花蓮の水着をとっとと買いに行こうとするがえりな達に引き止められる。
「ちょっと何よ? その適当な解答は!」
「わ、私も思い切って水着着たのに……」
ああ、やっぱ適当過ぎたか…… でも花蓮を待たせたくないし。
「ごめんな、でも花蓮が待ってるから花蓮の水着買わせてくれないか? お前らが花蓮だったら今花蓮の心細い気持ちわかるだろ?」
「え? 別に?」
「うーん……」
あれ? 何この2人の反応? 思ってたのと違う…… そうだ、この2人には同情よりざまぁの気持ちの方が遥かに上なんだった。 俺はもう2人を振り切るために適当な白い水着を選び素早く会計を済ませた。
「2人ともせっかく声掛けてくれたのにごめん、俺花蓮の所に戻るからさ!」
「え? 健斗、話はまだ終わって…… 」
えりなが言い終わる前にえりなをきつく抱きしめた。 そしてその横で驚愕の表情をしている沙耶、更に驚愕から憎悪を込めた顔に見る見るうちに変わっていく。 怖い、なので……
えりなの後に沙耶も抱きしめる。 不公平にならないように同じように。 沙耶の力が抜けていくのが抱きしめててわかる。 2人ともこんな風に誤魔化してごめんな。 でも今は花蓮が心配だ。
「じゃあな! 2人で喧嘩するなよ?」
「なんか雑よ!」
「健斗君行っちゃうの? 私美咲さんと2人きりなんて……」
「地味子!」
2人の頭をわしゃわしゃと撫でて花蓮の所へと向かった。 だけど俺が離れる時明らかに2人は不満そうな顔をしているのは見て見ぬ振りをした。




