48話 恨みの上野
次の日学校に行き教室に入り一応上野にいつものように挨拶をする。 当然ながらシカトされチッと舌打ちをされる。 やっぱりだいぶ嫌われたようだ、まぁ当たり前か…… だけどそれでまた上野と花蓮が付き合って元通りになりたいか? と言われると俺もそうはいかない。 花蓮を誰にも取られたくない。
そうして席に着くと花蓮が徐に俺の前の席に座りこちらに向かい合ってきた。 みんな花蓮は上野と付き合っていたのに花蓮が俺の方へ仲良さげに振る舞うから少し騒つく。
「おはよう健ちゃん」
「お、おはよう。 こんなに堂々としてて良いのかな?」
上野もこちらの様子を見て眉間に皺を寄せていた。
「大丈夫だよ、私が健ちゃんに乗り換えたんだって思わせとけば健ちゃんは何にも問題ないよ? 上野君にはちょっと可哀想だけど私やっぱりこうして健ちゃんといつでも一緒に居たいからこれがいい」
花蓮はみんなの視線も上野の視線すら気にせず俺に話し掛ける。
「でも俺1人友達無くしちゃったよ、自業自得だけどさ」
「健ちゃんのせいじゃないよ、私が健ちゃんを好きになっちゃったのが原因だから…… ねえ、後悔してる?」
「いや、後悔はしてないよ。 俺だって花蓮が好きでこうなったんだし」
「じゃあ私が上野君の代わりにずっと健ちゃんの側に居てあげるから寂しくないようにしてあげるから」
花蓮はそう言って机の上に置いていた俺の手をギュッと握る。 その光景を見ていた上野はムカついたのか教室から出て行った。
そして授業が始まり3時間目に入る前に俺は困った事に英語の教科書を家に忘れてきた事に気付いた。 隣の沙耶はいないし…… 俺は窓際なので隣の沙耶が休んでいると見せてもらう事が出来ない。
困ったな…… 仕方なく隣のクラスの奴らから借りようとしたら花蓮が俺の様子を見てどうかしたの? と言ってきた。
「教科書忘れちゃってさ、沙耶も休みだろ? だから隣のクラスから借りてこようかなって思ってたんだけど」
「そういう事か、 だったら私の教科書使いなよ? 私が隣のクラスから借りてきたの使うから」
「え? そうなると花蓮が面倒だろ? いいよ、俺が借りてくるし」
「遠慮しない、 私がそうしたいんだし!」
そして花蓮は自分の机から英語の教科書を取り出し「はい、どうぞ!」と笑顔で俺に渡した。 まぁもうここまでされると受け取るしかないな。
「ありがとう花蓮、後でジュース奢るよ」
「やったぁ! 健ちゃんこそありがとう」
そして花蓮は小さくガッツポーズを取り俺に可愛らしい笑顔を向けて隣のクラスの方へ行った。 花蓮は誰の目も気にする事なく俺に献身してくれるうちにみんなは本当に俺と付き合う事になったんだなという視線に変わる。 そして上野もそう感じているのだろうか?
そして昼休みになり体育館裏でいつものように花蓮と昼飯を食べる。
「なあ、ここじゃなくて屋上とかでも良くないか?」
「ダメ、あそこだとえりなちゃんと居る事思い出しちゃうし。 私嫉妬しちゃいそう」
「花蓮でもそんな事あるのか? なんかいつも花蓮は凄くしっかりしてるからそんなイメージないなぁ」
「してるよ…… むしろずっと嫉妬しっぱなしかも」
花蓮は少し俯いてそう言った。
「花蓮?」
「私健ちゃんの事が好きだから。 えりなちゃんと日々野さんにあんな条件出したけど本当はそれも嫌なの。 でも私も健ちゃんに同じような事して迷惑だなって健ちゃんが思ったらショックだし……」
「花蓮はいつも俺に優しいな。 俺そのうちダメ人間になっちゃいそうだ」
「そうなっても私は側にいるよ健ちゃん」
花蓮は妖艶な笑みで俺にそう言い自分の胸に俺の顔を押し当て包み込む。
午後になり体育の時間今日の体育は男子はドッジボール、女子はバレーボールになる。 体育館を半々で男子と女子に分かれて競技をする。
隣のコートでは花蓮のチームがバレーボールをしている。 花蓮は見た目スポーツも得意そうでバレーでもスパイクを決めていた。 俺が花蓮を見ていたように花蓮も俺を意識していたのかスパイクを決めた後花蓮はこちらを向きサムズアップしてきた。 俺はそんな花蓮に微笑むと横から舌打ちが聞こえた。
「すっかり彼氏面が板に付いてきたな? 朝とかさっきのあれなんだよ? 俺への当て付けか?」
上野が俺に喧嘩を売るように絡んでくる。 だけどそんなつもりはないので言い掛かりだ。
「んなわけないだろ? お前とも付き合ってた時そうだったみたいに花蓮はああいう子だろ?」
「てめぇが花蓮を語るんじゃねぇよ! おい、次俺らの番だぞ」
そう言って上野はドッジボールのコートに向かった。 上野のチームとは敵同士か。 なんだか皮肉だなと思い俺もコートに向かう。
試合が始まり少しして俺はボールを受け取り相手のチームの2人くらいにボールを当てた時上野がボールをキャッチし俺が避ける暇もないくらいの速さと渾身の力でボールを俺に向かって投げた。
まるで花蓮を取られた恨みだと言わんばかりの豪速球は俺の顔面に当たり俺はそのまま倒れてしまった。




