45話 みんなで沙耶の家
俺は重い足取りで沙耶の家に向かう。 一度は沙耶の家に行く事をすっぽかしそしてようやく俺が来たと思ったら花蓮の事が好きになった。 これは怒らないわけがない。 怖い…… 物凄く怖い。 やっぱり花蓮について来てもらった方が良かったかもしれない。
しかも俺が最近沙耶に持った印象と言えばウサギのぬいぐるみを切り裂きスタンガンを浴びせられ容赦なくえりなの顔面を容赦なくひたすら殴り続ける沙耶……
いやいや、それが沙耶の全てじゃない。ちゃんと優しい心だって持ってるんだ、そう自分に言い聞かせようとしたけどやっぱりなんだか怖い。 かっこつけて1人で大丈夫なんて言うんじゃなかった。
俺が少し迷いを感じて道端で立ち尽くしていると後ろから冷たい何かが俺の目を覆った。
「だぁれだ?」
「その声は…… 花蓮!?」
そう言うと目隠しが解けはにかんだ笑顔の花蓮が居た。
「どうしてここに?」
「ごめんね? 本当は付いて来る気なかったんだけどね、健ちゃんが少し不安そうな顔してたしそれに日々野さんでしょ? そのままスタスタ行ったら私も引き返そうと思ったんだけど立ち尽くしてるとこ見たらやっぱり怖いのかな? って思ってさ」
「それでわざわざ…… ごめんな?」
「いいのいいの! 遠慮しなくていいから私を頼って。 それにね、後ろから来てわかったんだけどもう1人いるよ? おーい、出てきたら?」
花蓮が後ろを向いてそう言うと怪しい人影が現れる。 なんだ? ストーカー!? あのマスクにサングラスでパーカーを着た怪しい奴は? ってあのパーカー俺のじゃん。 もしかして……
「何してるのかな? えりなちゃん」
「やっぱりえりな!? なんでここに?」
「か、勘違いしないでよ? 別に寂しいからとかじゃなくて地味子に健斗を会いに行かせるのはまだ危険かなって…… この前は行かなかったようだけど今日は来たのね」
この前? もしかして花蓮と一緒に居て沙耶のお見舞い行かなかった時か? こいつまさか……
「えりな、前回の沙耶の時ここで待ってたのか?」
「だって…… あの地味子見たら健斗1人だと危ないかもしれないし」
「どれくらい待ってたんだ?」
「ん〜、すっかり暗くなった辺りで来ないと思ったから帰ったわよ」
だからえりなはあの時心配してかわからないけど今から会えない? とか俺の家に行っていい? とか言ってきたのか。
「そんなに待ってたのかよ…… なんかごめんな」
「べ、別にもう気にしてないからいいわよ! 」
「そうだよ健ちゃん、えりなちゃんが勝手にやってる事なんだし気にしなくていいよ。 それにその格好怪しすぎるよ? ストーカーみたい」
「誰がストーカーよ!? 花蓮ちゃんも似たようなもんじゃない!」
正直えりなの格好は怪しすぎる、そう思われたって仕方がない。
「サングラスとマスク取ればいいんでしょ!」
サングラスとマスクを外すと花蓮がえりなの顔を興味津々に覗き込む。
「ふんふん、大分派手にやられたんだね? 化粧で誤魔化してるけど」
花蓮がえりなの鼻を人差し指でツンと弾くとえりなはウザいという感じで花蓮の手を払う。
「やられたんじゃなくて敢えてなの! 私なりに後腐れなくしたつもりなんだから。それくらいわかるでしょ?」
「まぁいいけどね、行こうか健ちゃん」
「あ、ああ」
てか俺ら3人で行くのマズくないか? 沙耶はてっきり俺と2人きりで会うと思ってるし……
「心配しなくていいよ健ちゃん。 私がついてるから」
「何が健ちゃんよ、寒気がする! 健斗前みたく何かあったら私が居るから安心しなさい」
まぁ1人で行くよりは頼もしいかもしれないけどえりなと花蓮とで行くと新たな火種が発生しかねない…… なんて考えていると頬に冷んやりとした感触が。 花蓮の手だ。
「私が上手く収めるから。ね?」
「2人でいい雰囲気作らないでよ! そもそも健斗は最初私が目を付けてたんだからね!」
「それはどうかなぁ? まぁどっちにしたって早く行こう?」
花蓮に促されてえりなはむくれるが沙耶を待っているので俺達は沙耶の家へと足を進める。 そしてしばらく歩くと沙耶の家に着いたと思ったら沙耶が玄関で待っていた。 当然沙耶はえりなと花蓮の姿を見て不審に思う。
「健斗君いらっしゃい、だけどどうして美咲さんと新月さんが?」
「あ、えっとそれは……」
「私がね、健ちゃんに無理矢理ついてきたの。 そしたら偶然えりなちゃんもついてきててね、こうなったら一緒に行っちゃおうって提案したんだ」
「健……ちゃん?」
花蓮がそう言うと明らかに沙耶の顔が曇る。 そりゃそうだろ、せっかく来たと思ったら沙耶の想定してた事と違うわけだし。 沙耶は俺の顔を伺い渋々と2人を家に入れる。 そして沙耶の母さんも出迎えてくれて沙耶の部屋に案内される。
沙耶の部屋は…… なんていうか凄かった。てかいつからこうなの? カーテンが締め切っており薄暗く私物があちこちに散らばっていた。
「今日は健斗君が来ると思って少しお片付けしてたの、えへへ」
こ、これでお片付け? 沙耶の闇を更に垣間見た気がしてクラっとくる。 絶対これは俺がすっぽかした分もあるだろうな……
「飲み物持ってくるね」
「日々野さんその前に言う事があるの。私と健ちゃん付き合う事にしたから」
「「えッ!?」」
「はぁ!?」
いきなりの花蓮の言葉に俺達が驚きの声を上げる。 ここで言うの? そして花蓮1人にえりなと沙耶の敵意剥き出しな視線と俺の困惑の視線が向けられる。 ガタッと沙耶が立ち上がり飲み物持ってくるからと言い出て行った。
「花蓮いきなりなんて事言ってるんだ?」
「そうよ! 私認めてないんだからね!」
「2人とも落ち着いて? だからってこのままだと日々野さんにも良くないでしょ? それに私とえりなちゃんは日々野さんとお友達になったでしょ?」
あれは友達と言う名の殺意にしか俺は感じなかったぞ? そして沙耶が部屋に飲み物を持ってきて戻ってきた。 俺とえりなと最後に花蓮に飲み物を置くと沙耶は素早く花蓮に腕を掴まれ沙耶の手から何か落ちた。 落ちた物を見ると千枚通しだった。 たこ焼きひっくり返す時によく使う…… なんでこんな所に俺達みんなでたこ焼きパーティーとか洒落込むつもりか? なんてそんなわけない。
「こ、これは新月さんにピアス開けてあげようかと思って…… 」
「日々野さんって見た目に似合わずなかなかワイルドな開け方するんだね」
花蓮はそんな沙耶にもニッコリと返した。 状況ますます悪くなっているような気がする……




