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3話 えりなと花蓮


「てか俺帰っていい? 上野もいないしもう学校にいたって仕方ないだろ?」

「うーん、そうねぇ。 足立君とこんな時間まで居て噂が立つのは勘違いされそうで私にもマイナスだし」

「お前こそ失礼な奴だな!」



さっさとこんなめんどい奴からは離れるのが1番だ、そう思って校舎を出ようとしたら昇降口に上野と新月と居合わせてしまった。 あれ? これって美咲が言うマイナスポイントじゃね?



「あ、健斗どうした、こんな時間に珍しいな?」

「そうだね、足立君がこんな時間に女の子と一緒に居るなんて珍しいね? しかもえりなちゃんじゃん! 嘘? もしかして校内デートだった?」

「な、ななな何言ってるの? 私足立君なんかとはなんでもないわよ? さっきだって足立君にッ…… 」



美咲は言葉を止め肘で俺の脇腹を突いて小さい声で「なんとかしなさいよ!」と言ってきた。 なんとかって…… 自分で切り抜けろよとニタァと美咲に勝ち誇ったような笑みを向けるとすかさず美咲は携帯を取り出した。



くそ、そうだった。 もしダメそうならこいつの事だから俺も道連れにしそうだ。 まさか今日のうちからこいつに合わせる羽目になるとは……



「い、いやぁ、デートとかじゃなくてこいつコンタクト落としちゃって無理矢理探すの手伝わされる事になってこまるよなぁまったく…… グホッ!」



美咲から見えない角度から鋭いエルボーが飛んできた。 くそ、なんでこんな目に……



「あ、あはは、そういう2人は何してたの? そちらこそ校内デート?」



美咲にそう言われた新月は顔を少し赤くさせた。 それを見た美咲は一瞬鋭い顔付きになった。 怖ッ、女の嫉妬って怖ぇ〜。



「うん、上野君とまだ付き合ったばかりだから…… ね?上野君」

「ん? あ、ああ。そんなとこ」



あちゃー、こりゃあ付け入る隙無さそうだわ。 2人共照れてやがんの。 上野のくせに新月みたいな可愛い彼女作りやがって…… まぁくせになんて言っても顔面偏差値は負けるけどついこの間まで彼女欲しいなぁとかほざいてたくせに! この頭のネジが外れてる見た目だけは良い女はともかく新月とだと!? ズルいぞ!



「足立君なんか負のオーラが出てるよ?」

「ははッ、お前も彼女でも作れよ! 例えば隣にいる美咲とかな!」



こ、こいつなんて事言っちまうんだ!?そんな事美咲の前で言ったら…… てあれ? ニコニコと涼しい顔しているぞこいつ。 意味がわからん。



「じゃあ2人共ごゆっくりねぇ! 行こう、上野君」

「ああ、じゃあまた明日な」



そして2人は俺達より早く校舎から出て行った。 それに加えてなんだか美咲を見るのが怖い…… あ、でもこんな事に付き合わされてんだからざまぁみろだよな! どれどれ?



美咲を見るとニコニコと笑いながらプルプルと震え涙を流していた。 なんつー奇妙な奴。



「……うぅ、と、遠退いた。 ずっとずっと遠退いた気がする、足立君なんか誘ったばかりに」

「え!? 俺のせいかよ? 俺何にも悪い事してないよな?」

「バカーーッ! 私死んじゃうかもしれないのよ!? 死んだら呪ってやる!」

「死ぬとか大袈裟な奴だなぁ、世の中恋愛で回ってるわけじゃないんだし他の男にしろよ? お前なら楽勝だろ?」



美咲は首を振り俺の襟元を両手で掴みグイッと顔を近付けた。 側から見たらキスでもするかのような光景だろう。 だが美咲の顔を正面にした俺はまるで阿修羅のように怒りを露わにした美咲の顔に俺はただただ震え上がっていた。 お前が死ぬより俺が最初にお前に殺されそうだわ……



「いい? よく聞きなさいよ、確かに私も上野君を好きになるまでそんなのうぇ〜、ペッペッと思ってたわよ」



うぇ〜、ペッペッって……



「そう、あれは合同体育の時間……」



なんか勝手に語り出したけど……



「あの時私バレーボールしてて転んで擦りむいちゃって私ってドジだなぁって思いつつ保健室に行かされたの」




無理して可愛く「ドジだなぁ」なんて言わなくていいのに。




「そしたらそこに上野君が居て保健室の先生は今居ないよって言われて待ってた時、痛そうだね? 俺で良ければ手当しようか?って聞かれて私その時何この人?って思ったんだけど優しく手当してくれたの」




ええ〜、あいつ裏でそんなことしてたのか!




「ううん、それだけじゃない。 別の日私が日直で放課後黒板の掃除をしてる時だって届かなくて苦戦していた所をたまたま通った上野君が私を見かけて届かない所を代わりに拭いてくれたりしたの」




それはまぁ別に……




「うん、それで?」

「そしてしばらくしてから彼ってなんて優しくてかっこよくて気が利く人なんだろう、私気付いたら彼を目で追うようになってたわ。 もしかして私って彼の事をなんて思ったりして」

「へ、それだけで? そんな性格してる割にチョロ過ぎないか??」

「それだけとは何よ!? 足立君みたいな鈍感そうな男の子には私の気持ちなんてわからないわ!」



そう言って美咲は俺の掴んでた襟元をパッと話して「ああ、上野君……」 と紅潮して両手で顔を押さえながら言っていた。 危ねぇ…… やっぱ関わりたくねぇわこいつには、どんな災いが俺の元へ降ってくるかわからん。



「でもそんな彼の想いを秘めていた時あの花蓮ちゃんが私と同じで上野君が好きで勝手に告って上野君もOKしちゃって…… 私絶望したわ、だからこの恋が叶わないくらいなら!って何喋らせてんのよ!?」

「お前が勝手に語り出したんだろ!? ていうかあの2人付き合ったばかりだしかなり今はラブラブだろ? 待つしかないだろ冷めるまで」

「そんなの待てない! 言ったでしょ? 半年しか私には猶予が残されてないの!」

「だからその半年がよくわかんねぇ……」




そんな事を言っているうちに俺と美咲の声がデカかったのかまた先生がこちらに向かってきた。



「またお前らか! さっさと帰れって言ってるだろ!?」

「チッ、今日は帰るわよ足立君」

「どうぞお先に…… なんでお前が仕切ってんだよ」



そして校門を出てようやく落ち着いたと思えば隣にまた美咲…… なんでこいつついてくるんだよ?



「なんでお前ついてくるの?」

「私の家もこっちの方角なのよ! 離れなさいよ! 誰かに見られたらまた勘違いされちゃうじゃない、そっちは私と何か親密な関係なんじゃないかと勘違いされて嬉しいだろうけど私にとっては迷惑極まりないわ」

「お前自意識過剰もいい加減にしろよ? 俺だって今日お前の本性知ったら流石にドン引いてるんだよ」

「乙女の純情をいうに事欠いてドン引きですって!? そういう人に限って私と一緒に居て好きになるんですからね!」



ダメだこいつ相当拗らせてるな…… もう何を言っても無駄なような気がした。



「仮に半年以内って言うなら誰か適当な人と付き合った方が早いって言ってるだろ?」

「バカね! 本当に好きな人じゃないと意味ないんだから、じゃなかったら私だってこんな苦労してないわ!」



余計に面倒になってきた。 幸い美咲の方が俺の家より近いので先に帰って行き俺はその日ようやく解放された。




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