29話 収束?
無残に切り裂かれた下半身を持ってプルプルと震えてみせ上野に擦りつく新月、そして胴体をグシャリと握り締め立ち尽くすえりな。 そんな仲良しの印あるのか? どう見てもこれがお前らの結末だみたいな感じしかしないのだが……
「あ、あれだ。 夜中でテンションがハイになってんだな、お、俺部屋行って寝てるわ!」
「あん、上野君行っちゃうの!?」
上野はビビって新月を置いて寝室に行ってしまった。 俺もあいつと寝たい。 このサイコホラーな場所から普通の高校生活な健全で枕投げが行われるような健全な寝室に戻りたい。最初からこの班にはそんな場所などは存在しなかったが。
「け、健斗君! 私みんなと仲直りしたよ? 偉い?」
「だったらこの拘束を解け! 」
「は、はい! 」
手錠が外れ自由になった。 やけに素直でそれも怖い。
「さて地味子わかってるわよね?」
「私まで煙に巻こうだなんて生意気よねぇ」
「ご、ごめんなさいッ! 許して下さい!」
「はぁ? 今更何言ってんの?」
日々野が急に謝り出した。 突然の事なので一同唖然とする。 だが日々野は続ける。
「こ、こんな事するつもりありませんでした。 私も美咲さんや新月さんみたく足立君を好きになりたい、そう思って暴走してしまいました。 そして足立君にこんな酷い事をしてしまって本当にごめんなさい。 足立君…… ごめんなさい」
「それで許してもらおうってわけ?」
「ちょっと甘いわよねぇ、日々野さん」
だがそんな日々野の謝罪も虚しく2人は日々野に詰め寄る。 もうこんなのはうんざりだからやめてくれ。
「そ、それに! 足立君はもうこんな事望んでないと思います。 私これ以上やって足立君に嫌われたくない!」
その言葉に2人はピタッと止まる。
「ねぇ健斗さっき私の事嫌いって言ったの嘘だよね? 健斗に嫌われたら私どうなるかわかってるでしょ?」
「だよね? 嘘だよね健斗、私健斗にはえりなちゃんや日々野さんと違って酷い事何もしてないよ?」
「これ以上騒ぐなら俺はお前らを嫌いになる」
「「「ッ!?」」」
3人は硬まった。 これはいけるかもしれない。 これで収まってくれるなら……
「ほ、ほら、だからやめよう!? 足立君ごめんなさい、美咲さんと新月さんもごめんなさい。 私のせいで、私のせいで…… 」
「そうよ! 地味子あんたのせいよ! そのくせ何勝手に仕切り出してんのよ!? 本当に腹立つわね!」
「はいはぁ〜い! 幼稚な喧嘩はやめようねぇ、健斗に嫌われちゃうわよ? わかってんの死にたいの? えりなちゃんはわかってるわよね?」
「…… うッ」
新月がそう言うと2人は押し黙った。
「てことで健斗は今日はこの部屋に居ない方が良いわね? こんなウサギの皮を被った猛獣の所に居たら今度こそ食べられちゃうもの、だから日々野さんは今日は寂しく寝てちょうだい」
「じゃあ健斗は私と一緒に寝ましょうね?」
「えりなちゃんこそ危ないのに何言ってるのかな?」
「ちょっと、ビッチが何言ってんのよ?」
今度はえりなと新月が火花を散らし始めた。 日々野の事が済んだら今度はこっちかよ……
「おっと、いけない。 えりなちゃんは上野君と一緒の部屋でしょ?」
「ぐぐぐ……」
「えぇ? いつの間にそんなに健斗に夢中になったのかしら?」
「ふん! 行けばいいんでしょ?行けば!」
えりなはそう言って「手を出したらぶち殺す」と言って出て行った。 そしてそれを見送る俺の袖がクイっと掴まれた。
日々野が先程の狂気に満ちた顔とは違いいつもの日々野に戻っているようだった。
「今日はごめんなさい、健斗君……」
だがそう言った日々野はゾクリとするような笑顔だった……
「さぁ、行きましょ健斗」
「へ?」
俺の腕を強引に掴んで日々野から引き離しリビングに行った。 ああ、そうだった。 新月はリビングのソファで寝てたんだっけってなんで俺までそっちに連れて行くんだよ!?
真っ暗なリビングのソファに俺の体を「えいッ」と押して寝かせた。
「今日は厄日だったねぇ健ちゃんッ!」
新月がそう言ってソファに寝かせた俺に覆い被さる。
「け、健ちゃん?」
「だってえりなちゃんと被るでしょ? 健ちゃんよく見ると可愛いお顔してるから健ちゃんでしょ? て健ちゃん汗びっしょりじゃない。フフッ、よっぽど怖かったんだね? だけど安心してね、私健ちゃんにえりなちゃんや日々野さんみたいに直接害を与えた事ないでしょ?」
その言い方だと間接的にはあるんじゃないか? 主にえりな……
「ねぇ健ちゃん、それじゃあ気持ち悪いでしょ? お風呂入って来なよ」
確かに気持ち悪いし新月ともこれ以上一緒にいたらなんかいろいろ危なそうなので風呂に入る事にした。 浴室に行きようやく1人になれたと思いリラックスしながら体を洗っているとガラッと扉が開いたので急いで湯船に隠れた。 なんだ!?
「ジャジャーン! 健ちゃんのお背中お流ししまーす!」
見るとパジャマの足と袖をまくって新月が乱入して来た。
「いい! そんな事しなくていい!」
「あれれ? 健ちゃん恥ずかしがらなくていいのに。 ほら、私に無理矢理お風呂から出させられる前に自分からここの椅子に座っちゃったら? 私後ろ向いててあげるから!」
これを最初から考えてたな新月の奴…… 俺は仕方なくタオルを巻き椅子に座った。
「じゃあ洗っていきますねぇ! 健ちゃん背中広いね、流石男の子」
わしゃわしゃとボディソープで背中を鼻歌交じりに洗って行く。 俺は新月が何をする気かわからないので警戒する。
「あはは、そんな警戒しなくていいよ? 私健ちゃんに何もする気ないよ? 言ったでしょ? 私は健ちゃんに好きになってもらいたいだけだから」
「お前らいつもがいつもだから信じられねぇわ、それにえりなと2人きりの時と全然違うしな」
「えりなちゃんと健ちゃんには違うの当たり前でしょ? 私は健ちゃんの事好きなんだからあんな態度取るはずないじゃん? それともあっちの私が好みなのかな?」
俺の横から新月が覗き込むように俺を見つめて怪しく笑う。ヤバッと思い顔を逸らすとシャワーで背中を流された。
「はい、お終い」
そう言って新月は出て行った。 何もなくて良かった、本当に背中を流しに来ただけだったんだな。 俺は頭を洗いそして風呂から出て髪を乾かしリビングに戻ると新月が居ない。 どこ行った? と思い探すと後ろから腕が伸び抱きしめられた。
「健ちゃん、私がえりなちゃんや日々野さんより健ちゃんの事好きになってあげるから私の事嫌いにならないでね?」
「え……? 」
「ほら…… 私凄くドキドキしてるの。 健ちゃんにもわかる?」
「へぇ? やっぱり目を離すとろくな事ないわねぇ」
寝室の廊下から低い声が聞こえたと思ったらえりなが俺と新月を凍るような目で睨んでいた。
「ありゃりゃ、お邪魔虫が来ちゃった」
そしてその後結局朝方までえりなと新月はお互い罵倒し合いとばっちりがこちらにも来て眠らせてくれなかった。 最初から最後まで大変な野外演習はこうして終わった。
「健斗のせいで上野君に全然集中出来なかったじゃない? どうしてくれんのよ?」
「え? 俺なんか放っといて上野に行けば良かっただろ?」
「………… ほぇ? そっか、そんなに私って…… あのクソ女やっぱり許せないわ」
「え?」
「なんでもないわよ! 」




