25話 3人体制
俺は気まずさに耐えかね、えりなと出来るだけ合わないように避けていた。 冗談じゃない、俺は別にあいつの事は好きではない。 というか今更好きになられたって困る。 俺は日々野からも好きになられて……
それに思っても見なかったえりなにも好かれてしまい頭がパンクしそうだ。 わからないなら鈍感でいられたらどんなに楽か。
俺はえりなからも日々野からも一旦距離を置いて考えた。 えりなは…… 本当に好きな人と付き合えなければ半年の命とか言ってるけどあいつの奇行を見ていると本当かどうかもわからないし後から好きになった俺は果たしてえりなの本当の好きな人なのだろうか?
日々野は優しくて思いやりもあってオマケに可愛い、日々野なら文句なしじゃないか? だけど俺の心はそんな日々野にも煮え切らない有様だ。 一体どうしたもんか…… 恋で悩んだなんて経験もないしなんかこんなのに振り回されてアホみたいだ。
「健斗、どうしたの?」
いきなり声を掛けられビクッとして頭を上げるとそこには新月が立っていた。 新月…… 出来ればこいつにも会いたくなかった。夜中のリビングでの事を思い出す。 こんな状況になればウハウハだと思うが実際なってみるとよくわかる。 気が気じゃない…… 1人になりたいと。
「あー、ちょっと考え事。 1人にさせてくれないか?」
「そんな事言われちゃうと1人にさせたくないなぁ。 恋の悩みかな? 恋愛経験豊富な私に話してみれば?」
こいつの本性は知っている。 えりなの事を知れば何か間接的にあいつに余計な真似をして更に事態を悪化させる恐れがある。 だけど日々野の事ならば大丈夫かもしれない。 こいつが嫌いなのはえりなであって日々野は無関心だからな。
なので俺は今までの事を、えりなの事は伏せといて日々野に関しての事を言ってみた。
「ふんふん、なるほどね。 日々野さんに迫られてたんだね? 見ててすぐ日々野さんは健斗の事好きだってわかってたけど、なんだそんな事か。 私てっきりえりなちゃんに告白されたのかと思っちゃったよ」
「え!?」
「はい、図星ー! やっぱりえりなちゃんに告白されたんだね? なんかえりなちゃんの様子がおかしいと思ったんだよねぇ」
嵌められた…… というかやはり新月に相談したのが浅はかだったか。
「な、なぁ、この事はお前に関係ないだろ? えりなはまだ上野の事が好きなんだしさ、俺もどっちに対しても煮え切らないし」
「関係あるよ? 私健斗の事好きだもん」
「ん…… はい? なんか変な事聞こえちゃったような……」
「健斗の事好きだよ? えりなちゃん関係なしにね。 上野君はえりなちゃんに悔しい思いをさせたくて横取りしたけど私が本当に好きなのは健斗だよ?」
はぁ? えりなといい新月といい突拍子もなく…… いくらなんでも嘘だろ? 俺が好きだったなんて後付けだろ、えりなに悔しい思いさせたいから今度は俺に鞍替えか?
「嘘だよな?」
「ううん、本当」
「実は俺さ、前に屋上でお前がえりなを挑発してたの聞いたんだよ……」
「ああ、あの時の事? なら話は早いじゃん、 むしろ良かった。 私の本性その時から知ってたんだね!? じゃあ余計な芝居とか抜きに健斗を好きになれるって事じゃん、ありのままの私で健斗に迫れるなんて俄然やる気出てきちゃった」
えりなといいに新月といいありのままを出したら幻滅されるという自身の性格を把握してないのだろうか?
「健斗?」
「お前さ、性格悪いって自覚ある? ありのままのお前で好かれる自信よくあるな? こんな大した事ない俺に言われたくないだろうけど」
「うん、私は性格悪いよ? だけどそれでも好きな人には私を好きにさせてみせる、本当の私を好きにさせるなんて凄くやる気出るじゃない? 他に健斗が好きな人がいようといなくても。それに誰かを蹴落としてもね。 私にはそれが出来る、だって私可愛いもん! 美少女だもん! そ・れ・に…… 好きな人にはどこまでも尽くせちゃうな」
新月曇りのない顔で言った。それどころか自分の本性を知られ更にやる気が出てしまったようだ…… 自分で美少女って。 確かに見た目はえりなレベルだけどこいつらってある意味凄い。
「へぇ。 美少女(笑)の花蓮ちゃん、今度は健斗に手を出す気? 」
後ろから低い声が聞こえ振り向くと無表情のえりなが俺と新月を見下ろしていた。 えりな、よりによって最悪の場面に……
「足立君、美咲さんだけじゃなくて新月さんにまで……」
そして前からは日々野まで現れた。 なんで役者が揃っちまうんだよ!?
「日々野なんでお前ここに!?」
「さっきコテージに戻ったら美咲さんと足立君が……」
それで閉めたはずのドアが開いていたのか…… なんて納得してる場合か俺!
「邪魔者が花蓮ちゃんにそれに地味子まで…… あんたら覚悟出来てんでしょうね?」
「あら? 健斗に自分の魅力で勝てる自信ないのかな? えりなちゃんは酷いヒス起こすもんね、健斗が可哀想。 だから健斗は私を好きになっていいんだよ? 私もありのままの健斗を好きになってあげる。 それより美少女(笑)って何? えりなちゃんでしょ? あ、えりなちゃんは(腐)だね! あははッ」
「あんた…… どこまで私の邪魔する気よ!」
「わ、私も足立君を好きって気持ちは美咲さんにだって負けません!」
「地味子! 横から奪おうなんてあんたも図々しい真似してくれるじゃない」
「ちょっと待てよお前ら! 上野はどうするんだよ!?」
そうだ、えりなと新月は上野も狙っているんだ。 えりながまだ上野の事を好きなら新月も上野のガードはしないといけないはず。
「もちろん上野君も好きよ? だけど健斗も好き。 だから悩みまくってるんじゃない!」
「私はえりなちゃんと違って健斗だけよ? えりなちゃんは二兎を追う者は一兎をも得ず。 それをわからせてあげる。 あ、もう上野君は私が取っちゃってるけど」
「あんたそれ自分にブーメランだってわかってて言ってる?」
こいつらの理論めちゃくちゃだ…… 何もかもがおかしいぞ?
「ダメだよ! 足立君は2人には取られたくない! 私は足立君だけだから」
「地味子! あんたは1番後のくせに調子に乗るんじゃないわよ!」
「調子に乗ってんのはえりなちゃんでしょ!」
もう止められないこいつら。 血生臭い結果になりそうと青ざめてきた所でこの3人の声を聞きつけた先生が「こんな所で何やっているんだ? 次はカレー作るからさっさと自分達の班に戻って準備しろ」という事で一旦収まる。
助かった、みんなの前では流石に喧嘩しないだろ、それに上野も居る。 てか上野放っておいて来たのか? 新月の奴…… てかこのままだと俺上野との友情を引き裂かれてしまうじゃねぇかよッ!
「おい、お前らどこ行ってたんだよ? 健斗と日々野さんいないとうちの班回らないんだからな!」
「威張って言うなよ! あと…… なんていうか、そのごめん」
「え? いや、別に謝らなくてもいいけどさ」
違うんだ、いろんな意味でごめんなんだ上野……




