19話 気が休まらない……
3人と運良く? 居合わせた俺と美咲は結局3人についていく事で事なきを得る。
「美咲、今がチャンスじゃないのか? 上野に怪我アピールしておぶってもらえよ?」
「………… いい。 足立君におんぶしてもらう」
いや、俺体力ないし、疲れてるんだけど…… そんな様子を日々野にジーッと見られながらコテージに帰った。
「ふふッ、えりなちゃんと足立君方向音痴だったなんて面白いね、危うく私達の班から死人が出る所だった。 ねえ上野君?」
「それはそうと…… まさか健斗と美咲がねぇ。 知らない間にあんな事になってるとは」
「ちちち違うの上野君! あれは足立君が私を手錠で縛ろうとして揉みくちゃになって! ほら! 用意周到にこんな物を!」
焦って美咲が手錠やらいろんな拘束具を出した、あいつ…… あんなの常備してるのか。 下手な所で下手打ったら監禁コースじゃねぇか。 ゾゾゾッ……
「あ、足立君、さっきの森での事って……」
日々野がウルウルして俺にそう言ってきた。 こいつもだ、いつも俺がヤバいパターンの時に現れて…… ああ、また面倒な勘違いをされてしまう。
「あれはな、前と同じように事故でああなってだな……」
「だ、だってその後も美咲さん足立君に対してあんな風ないつもと違う態度で……」
「ほら、でもあいつ上野に夢中だろ?」
「それは…… 今は……」
はぁ…… とっとと風呂入って寝てしまおう。 明日もあるんだ。
「汗ぐっしょりかいて気持ち悪いから俺最初にシャワー浴びていいか? 」
「どうぞどうぞ」
お前に言ったんじゃなくてみんなに言ったのにな、美咲はシッシッと入るなら入れといつもの美咲のような態度に戻っていた。
シャワー浴びて風呂に入ると一気に眠くなってきた。 初日からこんな事になるなんて思っても…… いや、なんか予想はついてたけど上がったらとっとと寝よう。
風呂から上がると日々野がササっと俺の横を通り過ぎて「次は私が入るね?」とニコッと笑顔でそう言った。 変な誤解は解けたかな? と思い寝室の方へ行く。 豪華だよなここ。 寝室だけでも2つある。 なんかシェアハウスしてるみたいだ。
ただベッドが2つ…… 誰か1人寝れないじゃないか。 でもいいや、先に入ってしまったもの勝ちだ。 俺はベッドに入り眠りについた。 そして眠りにつくかつかないかの頃、寝室のドアが開き誰か入ってきた。 日々野のようだった。
「えっと…… 一緒の部屋で寝ていいかな?」
「んあ? どうぞ……」
俺は眠くて日々野か、まぁいいやと思ってそう答えた。 そして隣のベッドに日々野が入ったのを確認しもう一度目を閉じた。
どれくらい経ったろう? 俺はトイレに行きたくなった。 時刻を確認してみると午前2時半、 もう真夜中だ。 トイレを済ませ水でも飲もうと思って真っ暗なリビングへ行くと腕を掴まれグイッと引っ張られた。 そして急に後ろから手で目隠しをされる。
「だぁ〜れだ?」
声からして新月だ。 こんな所で何してんだ? しかもなんで起きてるんだ?
「新月だろ?」
「ブーッ! 2人だけの時は名前で呼んでって言ったでしょ?」
「……花蓮?」
「正解ッ! よくわかったねぇ健斗」
目隠しを離されパジャマ姿の新月がてへへという感じで俺の正面に回った。
「お前こんな時間にここで何やってんの?」
「あー、私ここのソファで寝てたんだよ。 上野君はえりなちゃんと一緒に寝てるよ。 私は優しいから譲ってあげたの。 物音したから目が覚めたら健斗だったんだもの。 つい悪戯したくなっちゃった」
絶対違う。 こいつも美咲と同じで何か裏があるに違いない…… これ以上関わると上野との仲も悪くなりそうなので俺は立ち去ろうとすると……
「わっ! どこ行くの? 」
「戻って寝るんだよ、お前も明日があるんだからもう寝た方がいいぞ?」
「つれないなぁ、もう目が冴えちゃったよ、ねぇ少し私と一緒に居てよ」
「いろいろあって疲れててさ、ごめんな」
そう言うと新月はプクッと頰を膨らませて通せんぼしてきた。
「だぁめッ! さっきは森の中でえりなちゃんと何してたのかなぁ?」
俺の首に腕を回し急接近してきた。離れようとするが後ろにあったソファにぶつかりそのまま倒れる。
「あはッ、なんか私が健斗を襲ってるみたい」
「マズいだろ!? 上野もいるしそれに誰か来たら…… 」
そんな事を言うとはい来ましたよというようにガチャッとドアが開く音が聞こえた。 誰かトイレか? というより美咲だったらヤバい、いろんな意味で……
俺は新月を抱きソファの後ろに隠れた。 そしてそっと頭を上げ確認すると上野だった。 あいつもトイレの方へ行った。上野でもマズい、ここに新月が居るのだから。
「わぁ健斗ったらそんなに強く抱きしめちゃって…… 私もなんだか照れちゃう」
「バカ! 今来たのは上野だぞ? そんな事言ってる場合か!?」
「ふふん、上野君との交友関係は私に掛かってるのね。 どうしようかなぁ?」
こいつも美咲並みにやっぱり頭のネジが外れてやがる…… だけど穏便に済むにはこいつに大人しくして貰うしか他ない。
「花蓮」
「? はい」
「頼むから静かにやり過ごしてくれないか?」
「健斗の真剣なお願い?」
真剣に決まってんだろ!
「そうだ」
「じゃあ私大人しくしてようかな…… 健斗の真剣な表情かっこいいね」
「いいから静かにッ! 来た!」
トイレから出てきた上野は欠伸をかきながら眠そうに自分の寝室に戻って行った。 ふぅ、なんとかなった。
「よかった、行ったみたいだ…… ってあれ? 顔真っ赤だぞ? つい力入って強く締めすぎたか? ごめん」
「ううん…… ちょっと流石に私もドキドキしちゃった」
その後新月はすんなりと俺をリビングから寝室に戻してくれた。
「健斗、モテモテだね?」
「何が…… 都合よく使われてるだけだ」
「あはは、おやすみ健斗」