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終幕


学校を卒業してからあれから半年、私は就職して小さな会社の事務員として雇われていた。 資格とか取っておいて良かった、無事に就職出来た。



お父さんお母さんが私を見限るようにというか厄介者がやっと居なくなったという感じであっさりと健斗の家に行く事どころか、籍を入れる事も認めてくれた事によって健斗と私は結婚出来た。



籍を入れたのはつい先日の事。 健斗は大学に通い大学が終わったらバイトをして帰ってくる。 大学がない日はバイト。 そして私も仕事と思い描いた通りに進んでいた。



そして健斗のご両親が籍を入れるだけじゃと式も開こうと提案してくれた。 嬉しいのだけどそこまでしてもらっていいのだろうか? とも思う。 私はまだ健斗のご両親に大分お世話になっているし……



「気にするなよ、後で世話になった分頑張って返していこう? 俺はもうそう決めたよ。 せっかくえりなと夫婦になれたんだ」

「うん。 健斗がそう決めたなら」



でも私には不安があった。 私の親は来てくれるのだろうかと。 厄介者の私の為に来てくれるわけない。 それじゃ健斗や健斗のご両親に気不味い思いをさせてしまうんじゃないかと。



私はそんなモヤモヤした気持ちの中、健斗の隣で眠りに就く。





「えりな…… えりな」



誰? 夢の中かしら?



「もう忘れたか? 私だ」



ああ、あのポンコツ神様か。 私に何か用?



「久し振りね、ポンコツ神様。 まだ私に何か用?」

「まったくお主は無礼な人間だ、こうして訪ねて来てやったというのに」

「私もうあなたの力を借りなくても十分幸せよ?」

「そうだろうな、だが悩みは尽きないのではないか? 思えばお主が訪ねて来てからちらほらと人がやって来るようになってな、私の力も幾分か強力になってきた。 お主には少なからず感謝しておる。なのでもう少しお主に力を貸してやっても良いぞ?」

「だから私は別に……」

「私の力が強力になったと言ったであろう? お主の悩みも心の内も全て見えるぞ」

「セクハラじゃないそれ」



でもこのポンコツなら私のお父さんとお母さんが式に顔出すくらいの力だってあるかもしれない…… ポンコツだからあまり信用出来ないけど。



「お主失礼だのぉ〜、出来るぞ? お主の親がお主を疎んでいる事をなかった事にな」



なかった事…… 私の中でその言葉が重く響く。 確かに、確かになかった事にするのはとても便利で簡単。 だけど私は1度死んで健斗との事をなかった事にされた。



健斗はそれしか選択肢はなかった。 だけどこのポンコツの気紛れで私の記憶を呼び覚まさなかったら?



私の前の世界での健斗との思い出は酷い事もいっぱいあった。 でもそれでも私と健斗が一緒に過ごした掛け替えのない思い出。 そんな事なかった事にされたらいくら神様でも私はこのポンコツを絶対許せない、今はそう思う。



花蓮ちゃんだってそう思ったんだ、だから花蓮ちゃんはやり直す事を拒んだ。 私だって同じよ!



「なんか酷い言われようだのぉ……」

「なら話は早いわ! なかった事はお断り!! 私は私で自分の望むがままの選択をしたまでよ! わかったらさっさと消えてちょうだい、でもお礼は言っておくわ。 私の事を気に掛けてくれてありがとう。 あなたが居なかったら私の人生はあの時で終わっていたんですもの。感謝してるわ」

「…… ふむ。 わかった、もう何も言うまい。 だが私もお主に感謝しておる。幸せにな」



そして私は目が覚めた。 夢? じゃないわね。すぐ横には健斗の寝顔。 健斗…… まったく可愛い寝顔なんだから。 私は健斗の頬にキスをした。 決めた! 今日の仕事終わり家に帰ろう、そしてお父さんお母さんが来るのを待って式に来てもらうんだ!



「えりな? 早いな、もう起きたのか?」

「あ…… 起こしちゃった? うん、今日は気合を入れなくちゃ!」

「? よくわかんないけどなんかスッキリしたような顔してるな」

「だって側に健斗が居てくれるからだもの、あなた」



そこからはてんてこ舞い、私は家に行き土下座までしてお父さんとお母さんを説得した。 なんでかな? 私がこんなに必死でお願いしたからかな? お母さんの蹴りが何度か飛んで来たけど負けるもんかって何度もお願いしたからかな? いつも2人バラバラだったお父さんが珍しくお母さんを宥め諦める様子のない私のお願いを初めて聞いてくれた。




そして式の日取りもとんとん拍子で決まり私はウエディングドレスを身にまとってスーツ姿の健斗の隣に居た。



花蓮ちゃんや沙耶、上野君、新村君、健斗のお母さんの友達の神城さんの家族やいろんな人が来てくれた。 そして私のお父さんお母さんも。 それはそれでちょっと気不味かったかな? でも嬉しくて涙が出てくる。



「あー、健ちゃんもついにえりなちゃんのものかぁ。 でもおめでとう、健ちゃん、えりなちゃん」

「健斗君おめでとう、えりなさんも」

「俺達の時も祝えよ健斗」



みんなそれぞれ私と健斗を祝ってくれる。 屋上で初めて会った時から今までの事が頭の中で駆け巡った。 不幸のドン底にいたようなあの日私は健斗に出会った。 健斗…… 私を幸せにしてくれた人。



「えりな…… なんかこんな言葉しか出てこないけどとっても綺麗だ」

「ありがとう健斗。 健斗はとっても可愛い…… ううん、今日はとってもカッコいいよ」



そしてヴァージョンロードを歩き新郎新婦の誓いのキスをする。 みんなの前でキスするなんて流石に恥ずかしいけど幸せいっぱい。



「えりな愛してるよ」

「健斗、私も愛してるわ」



みんなが私達を撮る中、ふと奥の席に見慣れないお爺さんがいた。 健斗の親戚だろうか? だけどこちらに気付いたお爺さんはウインクをしたと思ったらいつの間にか一瞬で消えてしまった。



「ええ!?」

「えりな? どうかしたか?」

「今…… あ!」



もしかしてこんな事が出来るのってあのポンコツ? また何かしたのかしら? でもいいか。私は私なりに頑張った。 だから今があるんだって思う事にする。 ここまで見に来てくれてありがとうね。



「なんでもないわ、ただ神様も私と健斗を祝ってくれてるみたい」

「…… ああ、そうか。 えりな、ここからは俺とえりな2人の道だ、一緒に歩こう」

「うん!」



ライスシャワーが飛び交う中私と健斗はみんなから祝福されているんだ。 だからこれからもずっと……



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