その後…… 高校生活の終わり
俺は父さん母さんと話していた。 かれこれ数時間…… そう、卒業したらえりなと結婚したいという意志を伝える為に。 そしてえりなの両親の事も話した。 父さんは少し難しい顔をしていた。
「健斗、大学卒業して就職してからじゃダメなのか? 早まらなくてもいいと思うけど」
「いや、高校卒業したらって約束したんだ、えりなとの約束を破りたくないし俺もえりなと結婚したいんだ!」
「そう言ってもなぁ……」
「大学は行くよ、 バイトしながら生活費だって稼ぐ。 えりなとだって話し合った」
こうなるよな…… 高校卒業したら就職してでも良かったんだけど大学は将来の為に行きなさいと父さんに言われた。 父さんだって俺の事を考えている。
「ねえ優、優の言う事も最もだけど私健斗とえりなちゃんの事応援してあげたい。 私えりなちゃんの事見てきたけどえりなちゃんは良い子よ? それに私達の時もママとパパだって協力してくれたじゃない?」
母さん…… 俺とえりなの事でよくからかっていたけどこういう時味方してくれてありがたい。
「…… でも話を聞く限りえりなちゃんのご両親の協力は得られそうにないんだぞ?」
「だから私達が協力しようよ? 健斗が好きになった子よ、えりなちゃんは。だから私は健斗とえりなちゃんの力になりたい」
父さんは母さんに言われ俺をジッと見た。 そして溜め息を吐く。
「健斗、多分いろいろと大変だと思うぞ? お前もえりなちゃんも。 だけど話はわかった。 健斗の意志は固そうだしそういう事で考えておくけどそれだけはわかっておくんだぞ?」
「ああ、ありがとう。 父さん」
次の日学校に行きながらえりなに父さんと母さんに話した事を言った。
「てわけだから俺は大学行ってバイトしながら生活費稼ぐよ。 うちの親も協力はしてくれると思う。 情けないけど大学卒業して就職するまではそうならざるおえないけどさ、そういう事で考えてくれるみたいだ」
「ありがとう健斗…… 私は多分大学は行かせてもらえないと思う。 卒業したらバイトか就職。 もう選ぶ時期だしまぁ就職ね」
「あれ? えりなが就職したら大学卒業するまでえりなの方が俺よりお金稼いじゃうかもな?」
「あはは、そうかもね! でも安心して? ちゃんとそれまで健斗を養ってあげるし良いお嫁さんになれるように頑張るから!」
「俺もえりなの良い夫になれるよう頑張るよ。 ありがとな」
そして学校に着くともう文化祭ムードが漂っていた。 最後の文化祭か、俺のクラスでの出し物はお化け屋敷だもんな…… 他のクラスではコスプレ喫茶とかやるのになんて地味なんだ。
変なコスプレさせられるよりはマシだな、しかも俺はラッキーな事に受付になったからお化け役もしないで済む。 えりなは雪女役に抜擢されていたな。
「健斗はいいわねぇ、楽そうな所で」
「えりななんてピッタリそうな役じゃないか?」
「健斗、私を怒らせたいの?」
「冗談だって! えりなってたまに迫力あるからさ、お化け役とか合いそうだなって」
「それじゃあ私が怖いみたいじゃない! 本当失礼しちゃうわ」
放課後、クラスでは出し物の準備などをしている。 俺は前にも言った通りこういう行事ごとには消極的だったけどえりなが一緒だと楽しいってわかった。
初めてえりなに会った頃は本当に迷惑女としか思えなかったえりなが今では俺にとってこんな大切な存在になるなんてな。
「そんなに私の事ジッと見つめて惚れ直しちゃった?」
「ああ、えりなの事こんなに好きになるなんてなって昔の事思い出してた」
「わ、私って美人だから当然よね! てか私を照れさせようとしてるわね? その手には乗らないんだから! こっち来て」
えりなは何を思ったのか俺の手を引き屋上へ向かった。 夕日に染まった屋上で少し肌寒くなってきたな。
「前はここで健斗に押し倒されて制服のボタン剥ぎ取られちゃったわよね」
「あれはお前が無理矢理俺の事を脅迫したからだろ? 本当に最初の頃はお前脅迫魔だったよな」
「そうかもね、でも今じゃ私の中ではいい思い出よ。 廃病院での事は笑えないけど今ではあの花蓮ちゃんとも仲良くなれて沙耶とだってまた友達になれた。 健斗と会わなかったらこうはならなかったんじゃないかなって…… 」
「ああ、ここまで大変だったけど今では確かにいい思い出だな。 これからも大変だろうけどそれだっていい思い出にしたいな」
そう言うとえりなは俺を抱きしめた。
「健斗のくせに良い事言うじゃない、生意気。 でもそうね、私健斗が居てくれればどこでもどんな時でもいい思い出になれそうよ? こうしてる今もとても幸せ」
俺の顔を見て夕日色に染まったえりなの顔はとても綺麗だった。
「あははッ、なんか青春ぽいね! 私と健斗がこんなのしてるのってなんか笑っちゃう」
「自分でそんな雰囲気にしといて勝手な奴だなぁ」
俺もなんだか笑えてきた。 そしてあっという間にその年のクリスマスも終わり年が明け、卒業式が終わり、そしてえりなは俺の家にやって来た。 遊びに来たわけじゃない。 今日から俺の家で暮らすんだ。