その後…… 健斗の意志
「またあなた? うちのえりなのどこがそんなにいいんだか!」
「えりなとは…… 将来結婚したいと思ってますから」
「ああ、したいならすれば良いわ。 あんな無愛想な娘とっとともらってちょうだいな」
「それが母親の言う事ですか? 血は繋がってなくてもえりなにとっては覚えてもない本当の母親よりあなたが母親なんですよ?」
えりなの家に行ったら久し振りにえりなの母親と会った。 軽く流すつもりだったけどえりなの悪口を聞いて俺は噛み付いてしまった。
「健斗!」
何事かと俺とえりなの母親との言い合いに玄関から出て来た。
「あんたの彼氏が私の事気に入らないってよ。 流石あんたの彼氏だわ、可愛げもあったもんじゃない」
「お母さん! 健斗に対して酷いよ! 健斗に謝って!」
「うるさいわね! いい加減にしてちょうだい! ご近所の評判が悪くなるわ」
「いたッ!」
えりなの母さんはえりなの顔を裏手で叩きそのまま出掛けてしまった。 そしてえりなは頬を押さえて下を向いていた。
「ごめんえりな、来るタイミング間違えた……」
「健斗は何も悪くないわよ。 こっちこそごめんなさい。 うちのお母さんが酷い事言っちゃって」
なんか雰囲気悪いな…… せっかくえりなに会いに来たのに。
「家に入って? 何かお詫びしたいし」
「お詫びとかいいからさ、そんなに気にするなよ? 俺はもう気にしてないから」
「…… うん、わかったわ。 じゃあ健斗に何かご馳走したいからリビングに行こう?」
えりなにそう言われ俺はリビングへ行くとえりなはキッチンへ立った。
「えーと…… あ! あなた、何食べたい?」
「は?」
「イ、イメージトレーニングよ…… 健斗のお嫁さんになった時の」
「あ、ああ…… そうだな……」
何食べたい? って聞かれても実はそんなに腹は減っていない。どうしたもんか…… よし、フレンチトースト! これなら簡単で食べれそうだ。
「じゃあフレンチトースト」
「え? そんなのでいいの?」
「そんなのでもえりなの作ってくれたものならなんでも食べたいよ」
「オホンッ! フ、フレンチトーストとね! 任せときなさいよ!」
えりなはちょっと恥ずかしそうにしてエプロンを着た。 大胆な事してきた事なんて何回もあるくせにこんな事で照れたりするなんて相変わらずえりなって見てて飽きないな。
えりなは早速作り始めるがなんだか動きがぎこちない。
「健斗……」
「何?」
「見てるでしょ?」
「よくわかったな」
えりながパッと俺に振り返る。 そして俺をジーッと見つめる。 何がしたいんだ?
「どう? 今の気分は?」
「ん? 別に。 どうって言われてもえりながこっち見てるなぁとしか……」
「な、何よ!? その淡白な感想は!」
「好きだからさ」
「え?」
「えりなが俺を見てくれてるの。 だからずっと見てられる」
えりなが硬まった。 あれ?
「超恥ずかしい……」
「え?」
「健斗がよ!」
そう言ってえりなはまた後ろを向いた。 結局はなんだったんだ…… そしてその後のえりなの動きもまたぎこちなかった。卵に付けたパンをフライパンの手前で落としたりパンを焦がしたり。
「出来ました……」
「ありがとう」
「焦げちゃった」
「構わないよ、いただきます」
ショボンとしているえりなは焦げたフレンチトーストを食べる俺を伏し目がちで見ていた。
「言っちゃったね……」
えりながボソッと喋った。
「何を?」
「お母さんに結婚するって。 健斗から…… 」
「その事か。 ああ、言ったよ。 あの親が認めようが認めまいが俺はえりなと結婚するよ。 本気だってわかってもらいたいし、てか聞こえてたのかよ」
「そりゃあんな大きな声で言えばね。 恥ずかしいよ、ご近所も居るのに…… でもそれより嬉しかった。 健斗がお母さんにそう言ってくれて。 私ね、ここから逃げたくて卒業したら健斗と結婚したいって言ってるわけじゃないの。 健斗が…… 健斗の事本気で好きでッ」
「えりな……」
俺はえりなの手を握った。 言わなくたってわかってるよ。 俺だってえりなをここから逃がしたい為だけじゃなくて言ってるんじゃない。
えりなにはもう辛い思いなんてさせたくない。それにえりながここから逃げたいって言ったとしてもそれでもいい。 俺だってえりなの事が大好きだから。
「健斗、私健斗にとって良いお嫁さんになれるかな?」
「えりな以外に誰がいるんだ?」
「バカ…… バカ健斗! さっきから嬉しくて私変だ」
「いつも変だけどな。 でもそれが俺の好きになったえりなだよ」
「もう…… 」
無理して笑っていたようなえりなはいつの間にか柔らかい笑顔に変わっていた。
また少し溜めたら投稿いたしますm(__)m