その後…… 訳ありの少女2
「もしかして葉月ちゃん自殺しようとしてた?」
花蓮がそう言った途端葉月は動揺したようだった。 自殺? 確かに思い詰めてるようだけど……
「葉月ちゃんよく見ると怪我してるよね? 」
「え? な、なんで?」
そう言われて葉月は体を触るようにたじろぐ。
「ほら、やっぱり」
「あ……」
ああ、花蓮適当な事言ったな。 それが見事に的中したようだけど。
「学校でいじめられた? それともそれ以外?」
「あ、あの…… 」
「言っちゃった方がスッキリするかもよ? まぁ別に言いたくないならいいけどさ。 ね? 健ちゃん」
花蓮はそう言って俺の手を引き葉月の横を通り過ぎ石碑の前に立って手を合わせた。 その様子を葉月は神妙な面持ちで見つめる。
「よし! 行こっか? 健ちゃん」
「ん? ああ……」
俺と花蓮が再び葉月を横切ろうとした時……
「待って下さい!」
葉月が大きな声で俺と花蓮を呼び止めた。 その声に俺達は振り返る。 すると葉月は泣いていた。
「あ、あのあたし…… ちょっと前から学校でいじめられて…… もう我慢できなくて…… 誰も味方いないんだって。 そしたら響紀ちゃんが助けてくれて。 だけど響紀ちゃんも一緒にあたしと殴られたり蹴られたり…… あたし、自分よりあたしを助けてくれた響紀ちゃんがそんな事されるの見てられなくて」
そうだったのか、最近響紀が元気ない理由も怪我してた事も葉月を庇って……
なんで言ってくれないんだよ? 家族なんだぞ? 響紀が絡んでいるなら尚更こんな事言われて黙ってられない。
「それで? 葉月ちゃんをいじめてるのは同級生? 男? 女?」
「はい…… 同級生の女の子です。 最初はこんなんじゃなかったのにどんどん酷くなっていって。 あたしが居なくなれば響紀ちゃんもあんな酷い事されなくて済むと思ってあたし……」
それでここの山の中で自殺をしようと? だけどここに来たって事は死ねないかもしれないな。 あの例の御社の神様がまた手を差し伸べるかもしれないし…… 誰か来る度に記念とか言ってそうだし。
「だってさ、健ちゃん」
「ああ…… やめとけよ篠原、そんな事したら響紀が余計悲しむ。 響紀ってああ見えて結構傷付きやすいんだ。 だから死のうだなんて考えるなよ」
「で、でもこのままじゃ……」
うん…… どうしようか…… だけど響紀まで辛い目に遭ってるんなら何かいい方法を考えないと。
俺が黙って考えていると肩に手をポンと置かれた。 花蓮は俺にニッコリ笑い掛ける。
「健ちゃんの妹さんの事だったら私も黙ってるわけにはいかないね! 健ちゃんのそんな顔してるの見るの私も辛いもん! だから私がなんとかしてあげる!」
「え? でも花蓮……」
「大丈夫! 変な事はしないしちゃんとセーブするから! 葉月ちゃん、ここで私に会って良かったね」
「え?」
そして花蓮は葉月に誰にいじめられてるのかとかを事細かく聞いた。 そして来週から普通通り学校に行きなよと葉月に行った。
「あ、葉月ちゃん。 私の言った事破って自殺なんかして健ちゃんを悲しませたら許さないからね?」
「ひいッ…… わ、わかりました!」
どんな形相で言ったのかわからないが葉月は花蓮を見てとても怖がっていた。やっぱ花蓮ってたまに怖い……
「じゃあ今度こそ帰ろっか健ちゃん」
そしてその後学校へ行きしばらく経ち響紀はいつも通り笑顔になっていた。 あれ? いじめの件は? どうなったんだろう…… もう葉月から事情は聞いたので思い切って響紀に聞いてみた。
「お兄…… 葉月ちゃんと会ったんだね。 そっか、やっぱりそんなに思い詰めて…… 私葉月ちゃんがいじめられてるの見るの我慢できなくて。 偽善者とか言われて私も対象にされちゃって」
「そうだったのか…… 俺にくらい相談しろよ?」
「うん、ごめん。 でもお兄最近えりなさんと本当に楽しそうだったから。 私のせいでお兄にまで迷惑かけたくないなって」
「バカだな、そんなのいいんだよ、家族だろ?」
「ごめん、ごめんねお兄…… でもね!最近パッタリと葉月ちゃんもいじめられなくなってさ! いじめてた女の子達誰かにボコボコにされたらしくて。 それが良かったのか良くないのかわからないけどそれから止まってさ!」
花蓮だ、絶対花蓮だ…… あいつやりやがったな。 でも響紀の為にしてくれたんだな、だからありがとうって言うべきなのかもしれない……
次の日学校へ行くといつも通り花蓮が居た。
「やっほー! 健ちゃん、ついでにえりなちゃんおはよう」
「おはよう花蓮」
「まーた私はついで? もう慣れたけど……」
俺はそんな花蓮の所へ行き葉月と響紀の事についてのお礼を言った。
「花蓮ありがとうな。 お前がしてくれたんだろ? 響紀すっかり元気になってた」
「ああ…… そっかぁ! 響紀ちゃん元気になって良かったね! 私は健ちゃんが落ち込まないでくれた方が嬉しいけどね」
「何の事? 何かあったの?」
えりなが不思議そうに聞いてきた。
「内緒!」
花蓮はそう言ってえりなの鼻をツンと突いて悪戯っぽく笑った。