最終話 愛してる
あれから時は過ぎて俺は3年生になった。まだ進級したばかりだけど確実に未知なる毎日を無事に送っていた。
学校に通学しているとえりなの家が見えいつものようにえりなは俺が来るのを待っていた。
「おはよう健斗!」
「おはよう。 最近えりなは特に元気だな」
「当たり前じゃない、だって健斗と同じクラスなんだもの!」
そう、3年生になり俺はえりなと同じクラスになった。 だけどえりなだけじゃない、花蓮、沙耶、上野ともまた同じクラスだ。 これも神様のイタズラか?
「卒業したら健斗と結婚だしもう楽しみしかないわ! それとね、お父さんお母さんも私の結婚には賛成らしいの、どこへなりと行ってしまえって」
え? それっていい事か? まぁでも絶対に娘は渡さん! とか言われるよりもえりなにとってはいいのかもしれない。
「私絶対良いお嫁さんになってみせるからね! 覚悟しときなさいよ」
「なんで脅迫するように言うんだよ……」
そして学校に着くと酷く落ち込んでいる上野が居た、何があったんだ?
「健ちゃん待ってたよ! 大事な話があるの!」
「わ、私も!」
「え? え? なんだよそんな切羽詰まった顔して?」
花蓮と沙耶が神妙な面持ちで俺に迫り圧倒される。
「どうしたのよ2人とも? 落ち着きなさいよ?」
「じゃあ私から告白します。 私ね真央ちゃんと別れたの」
「あ! 私も上野君と別れた」
「はぁ!?」
朝っぱらから何言い出すんだこの2人は!?
「ちょっと! どういう事よ!?」
「私やっぱり健ちゃんの事好き。 ううん、愛してる。 だからえりなちゃんや日々野さんと取り合うより仲良く一緒に好きな人を愛そうかなって思って」
「私も健斗君をどうしてもら忘れられなくて……」
「な、何勝手な事言ってんのよ!?」
そんなえりなの言葉はスルーして俺に2人は更に迫る。
「健ちゃん、私達が争うなんて嫌でしょ?」
「えりなさん、私とえりなさん友達だよね? だから好きな人だって3人で分け合おう? みんなで仲良く健斗君と愛しあおう?」
「……うう………… わかったわよ!」
何が!? 何がわかったんだよ? 俺がどれだけ苦労してここまで来たかわかってるだろ?
「確かに花蓮ちゃんと沙耶は健斗を今でも大好きだって感じてるし…… 仲良く好きな人を共有できるならそれに越した事ないし。 でも健斗と結婚するのは私だからね!」
「一夫多妻制で行きましょ? 私も健ちゃんと結婚する!」
「私も!」
「なら第一夫人は私よ! ずっと前から健斗と約束してたんだから」
「健斗…… てめぇ俺から日々野を取りやがって」
せっかく上手く人間関係を構築して後はえりなと結婚を残すばかりだと思っていたけど高校3年の1年間俺無事に卒業出来るのかよ!?
「てことで私もっと健斗にアピールしてくからね!」
「健ちゃん、健ちゃんになら私の全部あげるから」
「私も健斗君に全身全霊で想いを捧げる」
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「健ちゃん、健ちゃん! 起きて」
「う……ん?」
花蓮が俺を揺すり起こす。 なんだ夢かよ…… 昼休みの授業中の後俺は眠ってしまったらしい。 夢で良かった、マジで……
いつの間にか5時間目の授業が終わり休み時間になっていた。
「魘されてたけど大丈夫?」
「ああ…… なんか変な夢でも見てたのかな」
そして俺はとりあえず携帯を見ていると……
「健ちゃん、それ懐かしいねぇ」
花蓮がそう言って俺の携帯の画像を覗き込む。俺が見ていた画像を見て花蓮は微笑んでいた。
「懐かしいってまだ1年も経ってないだろ?」
「そうだけどさ、こんな事もあったなぁって思い出じゃん? 」
「そうだな」
すると上野が俺の所へ来た。
「健斗、次移動教室だろ。 一緒に行こうぜ?」
「ああ」
「待って待って! 私も一緒に行く!」
花蓮が慌てて俺と上野にそう言った。 花蓮は自分の席に戻り教科書をガサゴソと探す。
再び俺は携帯の画像に目を落とす。 修学旅行でえりな、沙耶、花蓮が3人仲良くそこには写っていた。 最初からこうなれば良かったのにな。 俺はどうすれば良かったんだ?
俺は学校の窓の外から昔を懐かしむように思い出す。 本当にここまで来るのにいろんな事があった。 シャレにならない事もたくさんあったけど今はとても良い毎日だ。
「教科書やっと見つけたぁ」
「机の中めちゃくちゃなんだよ花蓮は……」
「あったからいいの! さぁ、行こっか? 健ちゃん、上野君、早く行かないと間に合わなくなっちゃうよぉー!」
俺は窓からの風景から花蓮と上野に視線を向けて2人の後を追った。
「ほら、早くー! えりなちゃんと沙耶ちゃんは当番だからとっくに行ってるよ」
「わかってるって」
そして教室に着くと……
「遅い! いつまで寝てるのよ? あんまりグッスリ寝てたから起こさないようにしてあげてたけど遅い!」
「ふふッ、健斗君らしいね」
「ほら健斗、私と一緒に座ろう?」
えりなは怒っていたのが急変して俺が近くに来ると笑顔になった。
「遅れてごめんな?」
「まあいいわ、そんな所も含めて愛してあげるって言ったでしょ?」
えりなは俺にそう言って微笑みかけ俺はえりなの暖かい手を握った。 そしてえりなも握り返す。
学校が終わりえりなと一緒にいつものように帰る。
「健斗私絶対良いお嫁さんになるんだから覚悟しなさいよ!」
「え!?」
「何よその反応は? 不服なの?」
いや、そうじゃなくて夢と同じ事言うからビックリしただけだ。
「不服なわけないだろ? えりなにこんなに愛されて幸せだなって思ってさ」
「フフッ、そう? 幸せなのは私の方よ。 健斗に出会えて本当に良かった。 そこだけは神様に感謝ね。 愛してるわよ、あなた」
「な、なんだ!? 急に?」
「結婚した後の練習!」
えりなは恥ずかしいのを誤魔化すように俺にキスをしたがそれで更に真っ赤になってしまった。
「もっと恥ずかしくなった……」
「あははッ、えりなは可愛いな」
「す、好きだっていっぱい健斗に伝えたいだけなんだから!」
「俺も愛してるよ、えりな」
fin
ここまで読んで下さり感謝の極みです。頂いた感想や意見などとても多く貰えて凄く嬉しくてこの作品に対するモチベーションがかなり高くなっていつの間にか予定より大幅に話数が増えちゃいました。 そしてここでこの物語は一旦終わりですが気が向いたら番外編なんかも作ったりしてみようかなと。私の現実恋愛小説はほぼ全て話が繋がっていたりするのでお暇があればそちらもお読みいただければ光栄です。 この作品を読んでくれた皆様、本当にありがとうございます(๑>◡<๑)