14話 眼差し
あれから数日少しの時間放課後残り企画を作って(ほとんど俺と日々野がやったようなもんだけど)ようやく提出も済ませた。
「企画も決まったしいろいろ済んだね。お疲れ様足立君」
「日々野もお疲れ、結局ほとんど俺と日々野でやっちゃったなぁ。 あいつらマジで役立たずだったわ、それにこの学校企画決めるの遅過ぎだよな、目前に迫って決めろなんて用意できるのかよと思ったけどなんとかなるもんだな」
「うん、足立君と一緒に作った……」
日々野は噛み締めるようにそう言った。 いや、作ったなんて言っても予定調和的な内容だし俺ら以外でも誰でも思い付く内容だからな。
「私凄く楽しみなんだ。だって……」
途中で言葉を止めてしまった日々野だが俺には酷く憂鬱なメンバーだ。 日々野と上野はまぁいいとして新月、こいつも全然考えてる事がわからない。 多分この間の事も俺と美咲の協力体制を崩す意図があっての事かもしれない。 それに美咲、こいつは元々俺に無茶ばかり押し付けてくる。
この2人マジで厄介だ。 同じ部屋なのもマズい予感しかしないし…… もしかしてこんなに考えてるのって俺だけか? だとしたら俺って変に考え過ぎなのか? 何事もなく終わるかもしれないじゃないか、仮に何かあっても俺のせいか? いやそんな事はないない、美咲と新月が自滅するだけだろ?
「足立君、足立君!」
「ハッ!?」
「足立君どうしたの? いきなり酷く思い詰めたような顔して。 何か企画でマズい所でもあった?」
「い、いや、なんでもない……」
うん、考え過ぎだな。 疲れたし帰ろう。 来週から野外演習だしな…… 明日は土曜日のんびり休もう。
「ちょっと待った!」
昇降口で俺の下駄箱に足を掛けて通せんぼする奴…… 美咲しかいない。
「私気になってたんだけどこの間花蓮ちゃんと何話してたの? まさかまさかの花蓮ちゃんに鞍替えしようなんて浅はかな考え起こしてないでしょうね?」
目からハイライトが消えドス黒いオーラが迸っているような気がする。 これはいつかの御社で見たような顔だ。 そんな顔が俺の目の前に迫り後ずさる。
「い、いや、そんなわけないだろ? お前が不利になるような事は何もなかったしな」
「その割にはとっても親密そうにしてたわよね? 怪しいなぁ……」
尚も疑いの眼差しで俺を覗き込む。ていうか近いって! 逆に誤解されるだろ!
美咲がクンクンと俺の匂いを嗅ぎ始めた。
「あのクソ女の匂いはしない…… 地味子の匂いだけね。ふぅん? 私の事を放っておいて上野君に何もアピールしないで地味子と何やってたのかしら?」
「お前が持ってきた企画やらなんやらに決まってんだろ! 一体誰のせいで俺が拘束されてたと思ってんだ? 上野は新月と2人でいなくなるしお前もそれを追っていなくなるしでやれるの俺と日々野しかいないだろ?」
そう聞いた美咲はふん!と言って顔を伏せ再び上げると普段の美咲に戻った。顔芸凄いなこいつ…… てか普段の美咲がどれなのかもよくわかんないけど。
「足立君筆箱忘れてたよ!って美咲さん」
「何よ地味子、そのマズい人に会っちゃったみたいな反応は」
「えっと、いや、その…… 」
今度は日々野に狙いを定め美咲は詰め寄る。 そして日々野の肩を掴みジーッと見つめる。 そんな事したら日々野怯えちゃうだろ……
「ふぅん。 地味子の事眼中になくてシカトしてたけどまぁまぁマシになったじゃない。地味子のくせに!」
「俺らもう帰るからな。って誰だよこんな所にハサミ置きっぱにしたのは」
「わッ、本当だ。家庭科室のハサミだよね? 先尖ってるから危ないよ。私返してくるね!」
日々野はそう言ってハサミを持って家庭科室の方へ向かっていった。
「さて、もう上野君も居ないしここに居たってしょうがないし行きましょ」
「え? 日々野待たなくていいの?」
「いいのよ。 あれぇ? それとももうそんな仲に?」
美咲がまた怖い目になり俺を横から覗き込む。 なんだよ、くっつけ大作戦とか言ってたくせに。
「別にそんなんでもないし…… 帰るんだろ?」
「ふん、まぁいいわ」