137話 健斗 えりな2
「おはよう健斗! 」
朝っぱらからえりなは俺を見た途端抱きついてきた。 なんかえりな凄く素直に甘えてくるようになったな。
嬉しいけどちょっと恥ずかしい。 お互い思いを告げた時は死ぬ寸前とか修羅場の後だったからこうしてゆったりとした時間を2人で共有したかった。
「聞いて健斗! 昨日寝てたらあのポンコツ神様が出て来て怖かったわ」
「お前も同じような夢見たのか? 俺もだよ。 ていうか助けてもらったのにポンコツ神様なんて言ったら罰が当たるだろ?」
「ポンコツじゃない! 私前回死んじゃったのよ? 好きな人と結ばれたいって願ったら死んだってどういう事よ? 痛い目ばかり遭ってたし。 まぁ最終的に健斗と結ばれたからいいけど。 達者でななんて言って消えてったわ」
えりなは俺の肩に寄り添って俺の温もりを確認していた。
「怖かったのは目が覚めたらこれは夢なんじゃないかって思ったの。 でも健斗の顔見て触れて安心した」
「それは俺もさ。 っていつまでもこうしてると学校遅刻するぞ?」
「んー、サボってもいいわ」
「この前それで叱られただろ? ほら、行くぞ」
「あはは、冗談よ」
そして学校へ着き教室に入ると上野がニヤニヤとした顔で俺の所へ来た。
「よぉ、健斗」
「な、なんだよ? そのニヤけ面は……」
「実はさ、俺日々野と付き合う事になったんだ」
「え!? 沙耶と?」
俺は沙耶の方を見ると沙耶と目が合い沙耶はニコッと俺に微笑んだ。 確かに最近妙に2人仲良いと思ったら……
「花蓮と別れた後ずっと日々野俺の事心配してくれてさ、そんな日々野に俺が惚れちまった」
「それはおめでとう、沙耶はとても良い奴だから大事にしろよ?」
「ありがとうな、だけど健斗のくせに上から目線で言うな。 てか日々野の隣なのズルいぞお前! 日々野お前の事好きだったらしいけど俺から取るなよ!」
「はははッ、心配すんなよ。 俺もえりなと付き合う事になったから」
「マジで? 良かったじゃねぇか。 前から美咲と仲良さそうだったもんな、それに美咲って美人だしラッキーじゃん?」
お前も良かったな、上野。 お前とは前みたいに争いたくなかったし。
俺は席に座り沙耶に話し掛けた。
「沙耶、上野と付き合う事になったんだってな」
「う、うん。 健斗君の前だと言いにくかったんだけど、野外演習の時から上野君の事気になり出して…… あ! でも健斗君の事だって大好きだよ」
「え……? あはは、俺も沙耶の事友達として好きだよ」
「うん! ありがとう健斗君」
そういう意味だよな? 変な意味とかじゃないよな? でもいろんな事が解決した。 やり直しとかなかったらこんな風にはなっていなくて俺は死んでたんだよな? だけどもうやり直しなんてきかないしここから先はもう俺にはわからない事だらけだ。
そういえば今日は花蓮は来ていない、そうだよな。 花蓮はえりなに殴られて今頃顔腫らして学校とか来れないよな。 前のえりなが沙耶にボコボコにされた時も結構休んだし…… お見舞いとか行っておいた方がいいのだろうか?
そして昼休みになりえりなが俺の所へやってきた。 屋上に行くんだろ? そう思ってえりなと一緒に廊下へ出ると村上が居た。
「足立君、あれっきりあたしに構ってくれないで美咲さんとそんなに仲良さそうにして!」
「村上さん、話はついたと思ってたけど? 私健斗と結ばれたんだから!」
「…… 美咲さんとは話はついたけど足立君にはまだだもん! 足立君言わせてもらうわ!」
村上は俺とえりなの間に割って入り俺に顔を近付けいきなり笑顔になった。
「おめでとッ! めちゃくちゃ悔しいけどね! 」
そう言って村上は戻って行った。 なんかするんじゃないかと思ってビビったけどそれが言いたかっただけか。 村上の背中を見てありがとうと心の中で囁いた。
「ううん? 何ジッと村上さんの事見てるの? まさか早々に浮気?」
「あはは、違うよ。 前は俺の事好きって言った花蓮と沙耶、そしてえりなもみんな不幸になっちゃってさ、俺にそう言う奴って呪われるんじゃないかって考えた時もあったんだ。 だけど今回はそうならなそうで安心したっていうか」
「何それ? 自惚れないでよね、私前はあんな結果に終わったけどそんな風に健斗を思った事ないし健斗の為なら私は死んでもいっかって最後は思ったのよ」
「だよな、自意識過剰だな俺って」
「そうよ健斗のくせに」とえりなは笑顔で俺の手を引き屋上へ向かった。
少し心残りって言えば学校を休んでいる花蓮だ。 あいつあんな事言ってたけど大丈夫かな? 前はえりなと沙耶の事をお見舞いに行って花蓮の時だけ行かないってのはやっぱりないよな。
俺はそう思ったのでえりなに後で花蓮の家に一緒にお見舞いに行かないかって相談してみよう。 花蓮とやり合ったばかりのえりなは絶対に嫌がるだろうけど……