134話 結果
俺はえりなが殴られる瞬間飛び出していた。 間に合うかもわからなかったけど鈍い痛みが頭に走った事で間に合ったんだと感じた。
だけど思ったよりも衝撃を感じなかったのは花蓮が飛び出してくる俺に気付いて慌てて振り下ろす手をギリギリで緩めたからかな?
それでも痛い。だけど良かった、殴られるのがえりなじゃなくて俺で。 もう見ていられなかった。 俺の頬には頭を切ったのだろうか? 血が滴る。
「健ちゃんッ!?」
「足立君!!」
ゴトッと花蓮は石を落とし2人が俺に駆け寄る。 意識はあるんだけど痛みで動けなかった。
「嘘…… 私健ちゃんに……」
「うあああッ!」
えりなは花蓮を押し倒して花蓮を馬乗りになって殴りつけた、花蓮は既に戦意を喪失してしたのか振り下ろされるえりなの拳を両手で防いでいたけどそのままえりなに殴られていた。
「はあッ、はあッ……」
えりなは殴り疲れたのか花蓮から離れ俺の所へ戻ってきた。 まだ頭は痛むけどもう大丈夫、起きれる。
「足立君のバカ! だからダメって言ったのにどうして割って入ったのよ?」
えりなは俺を支える。 でもあの時に比べればこんなのなんて事ない、それにいつまでも痛そうにしていたら花蓮が気にする。
「どうしても見れられなくて…… お前だって危なかったろ?」
「そ、それは……」
花蓮はえりなに倒されたままで腕で顔を隠して泣いているようだった。
「足立君……」
「ごめんえりな、でも花蓮をこのまま放っておけないよ」
「……うん」
俺は花蓮に近付き花蓮を抱き起す。 やっぱり花蓮は泣いていた。 えりなに沢山殴られて今度は花蓮がボコボコにされたみたいだ……
「け、健ちゃんごめんなさい…… 私、私危なく、危なく健ちゃんをッ …… ごめんなさい! うわぁぁぁんッ」
「いいんだ花蓮、俺は大した事ないから」
花蓮は俺に抱きついて大泣きした、えりなそんな花蓮と俺を黙って見つめていた。
少しして花蓮は泣いてはいるけど落ち着いたのか俺の傷を触った。
「健ちゃん…… 痛かったよね? 本当にごめん」
「花蓮は止めようとしてくれただろ? だから大丈夫だったけど。 えりなにそのまま当たったら死んでたぞ?」
「えりなちゃんは別に死んでもどうだっていいの。 だけど健ちゃんは……」
「こ、このクソ女ッ!」
花蓮の言葉にえりなは怒りを露わにするがまた喧嘩になったら元も子もないのでえりなを手で制止する。
「ダメだろ花蓮、えりなを殺したら花蓮だって捕まるだろ? 俺はそんなの嫌だよ」
「健ちゃん……」
「だけどさ、俺えりなが好きなんだ。 だから花蓮の気持ちには応えられない、本当にごめん」
「わ、私が健ちゃんを殴ったから? だったら私にも同じ事していいから、だから嫌いにならないで!」
「違うんだよ、そんな事なくたって俺はえりなが好きなんだ。 花蓮に好かれてとても嬉しいけどさ。 えりなに好かれた方がもっと嬉しいんだ。 こんな事花蓮の前で言いたくなかった。 俺を好きだって言ってくれた花蓮が傷付くから。だけどハッキリ言わなくちゃって思ったから……」
そう言うと花蓮は更に目に涙を溜めて再び俺の胸に顔を当て泣いた。 えりなもそんな花蓮が少し可哀想だと思ったのか花蓮の肩に手を置こうとするとパシッと花蓮に叩かれた。
「な、なんて奴なの! 少しでも同情した私バカみたい」
辺りはもう暗くなっていた。 花蓮はようやく泣き止んで俺から離れた。
「…… わかった。 そこまで言われたら私健ちゃんの事諦める」
「花蓮ごめんな」
「ううん、私こそごめんなさい。 大好きな健ちゃんに怪我までさせて。 これっきりにするからッ!」
「なッ!?」
花蓮はそう言った瞬間俺に抱きついてキスをした。 俺はビックリしたけどえりなも自分の目の前でそんな事をした花蓮にワナワナと怒りが滲んでいたけど我慢してくれた。
これっきり…… 花蓮のそんな言葉で我慢したんだろう。 俺も花蓮とはこれっきりにするから。 そう心の中で呟いた。
そして唇が離れ花蓮はえりなを見た。
「私がえりなちゃんに負けるなんてね」
「ふん! 人の事殺す気だったくせによく言うわよ」
えりなと花蓮は相変わらず憎まれ口を叩くと花蓮は俺に向き直った。
「健ちゃん、それでも私健ちゃんの事は大好きだよ? えりなちゃんに取られても私友達として健ちゃんとえりなちゃんが上手く行くように応援するよ、健ちゃんの為に」
「花蓮ちゃん」
「えりなちゃんの為じゃないよ! 健ちゃんの為なんだからね」
「ありがとう花蓮」
やり直してからずっと引っかかっていた花蓮の事が解決したのかまだよくわからないけど前とは確実に違い良い方向に向かっている、そんな気がした。