130話 新村side5
朝目が覚めると9時半。 今日も休みだしもっと遅くまで寝てて良いかなと思ったけどインターホンが鳴り眠りを妨げる。
母さんが出るだろ。 そう思いながら無視するとまたインターホンが鳴った。 誰も居ないのか? そう思って仕方なく俺は起き上がり玄関へ向かった。
そういえばあいつって帰ったのかな? そう思い靴を見るとまだある…… やっぱ帰ってないか。
玄関を開け誰かと思うと……
「あ…… お、おはようございます!」
「なんだ、恋か、元気そうじゃん」
俺の家を訪ねて来た恋という女の子はちょっとした事情で俺の母さん…… いや、後藤さんの助けで知り合った仲だ。
「真央君も元気そうだね。 ええと、柚さんは居ないのかな?」
「俺今起きたばかりでわかんないけど多分どっか行っちゃったな」
「あ、ごめん。 起こしちゃった?」
「いいよ別に。 少しうちで待ってみるか? そのうち帰ってくるかもしれないし」
恋は少し考えたが結局うちで待ってみる事になった。
「休みの日なのにごめんね」
「気にすんなよ。 なんか飲む? オレンジジュースとかあるけど」
「え? じゃあいただきます。 ありがとう」
「学校順調?」
「うん! お陰様で。 なんか今人生で1番充実してるよ」
恋はとびきりの笑顔でそう答えた。 本当にそう思ってるんだろうな、最初はオドオドしてたけど明るくなったな。
「人生で1番って高々十数年しか生きてないだろ? これからだよ」
「あはは、そうだね。 そういえば首どうかしたの? 絆創膏2つして」
「あ、これか…… 痒くて掻いてたら血が出ちゃって」
「何かアレルギー?」
突っ込まれたくない所を突っ込まれた。 やっぱ目立つよな……
そんな会話をしていると殺気のようなものを感じ後ろを振り向くと花蓮が尋常じゃないくらいの怒気を放ちこちらを見ていた。
「は? 誰そいつ?」
「え? え? 真央君、こちらの方は?」
恋が慌てて俺にそう尋ねる。 恋も花蓮の怒気を感じ取ったのか、いや、誰が見ても怒っているようにしか見えないけど。
「花蓮こいつは恋って言ってさ、俺の知り合い」
「あ、あのよろしく。 恋です……」
「知り合いにしては仲良さそうじゃない? それに可愛いし。 あんた何? もしかして狙ってんの?」
「お前初対面の恋に何言ってんだよ?!」
俺の言う事は御構い無しに花蓮は恋のもとへ来てとても怖い顔でテーブルに座っている恋を見下ろす。 恋はただならぬ花蓮の威圧にすっかり怯えていた。
「あ、あうぅ……」
花蓮は怯えている恋に手を伸ばし恋の頭に乗せた。 いや、掴んだ。
「恋ちゃんだっけ? 凄く可愛いのねぇ、私が危機感抱くくらいに」
「え? ええ!? いたたたッ」
恋の頭でアイアンクローを仕掛けた花蓮はそろそろヤバそうだ。 放っておいたら恋が花蓮にモータルコンバットされそうだ。 俺は花蓮の腕を恋から引き離した。
「おい、落ち着けって。 恋は孤児みたいなもんでうちの母さんが知り合いに頼んで助けてあげたんだって。 だから恋はたまに家に来るんだよ。 それに彼氏もちゃんといるし」
「そうなの? えへへ、恋ちゃんごめんね? 今のは軽い冗談だよ!」
「ひ、ひいッ!」
あれだけビビらせといてそれは通じないだろう…… 恋に優しい笑顔を向けるがそれが返って怖いのか恋はビビりっぱなしだ。
そんな花蓮は俺の首に注目していた。
「真央ちゃん!」
そう言った瞬間花蓮は素早く俺の首筋から絆創膏2つを剥がした。
「お家の人誰も居ないようだしまだ隠さなくていいでしょ!」
花蓮は恋に見せつけるように俺の首筋のキスマークを注目させた。 こいつってこんな強引なの?
「あれ? 真央君それって……」
「あー、本当は昨日こいつに付けられたんだ」
「てことはその…… 花蓮ちゃんって真央君の?」
「そう! 真央ちゃん私の事気になってるみたい」
笑顔で花蓮は恋に真逆の事を言った。 俺は言い返そうとしたけどどうせこいつは聞かないし深い溜息を吐いた。
そんな花蓮と俺を恋は不思議そうな顔をして交互に見ていた。