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121話 村上と約束


「あー、えりなちゃん拗ねて引きこもりに行っちゃったよ」



花蓮が呆れたように言った。 だけどあの場でえりなの料理なんか選んだりしたら花蓮がえりなの作った料理を味見をして食べた上野が嘘だろ? なリアクションをして絶対バレていた。 そしてお情けで俺が選んだとえりなは知ったらもっと怒るだろうと仕方なかった。



「あ! こんな事してるうちに山菜採りの研修始まっちゃう!」



沙耶が慌ててコテージから教員達の所へ向かい花蓮と上野もその後に続いた。



「健ちゃん行かないの?」

「えりなの奴連れて行くよ」

「ふぅん、じゃあ遅くならないでね!」

「俺ら先行ってるからなぁ」



そうして花蓮と上野も出て行ったので俺はえりなが不貞腐れて篭ってる寝室に向かった。



ドアを開けるとえりなは枕を抱きしめてベッドにうつ伏せになっていた。



「何よ? 笑いに来た?」

「なんでそんな捻くれた方に導かれるんだよ? 普通に心配して来ただけだし山菜採りの研修始まるぞ?」

「ふん! 葉っぱなんて取っても楽しくないわ」



こりゃ完全に拗ねてるな……



「せっかく料理ちょっとずつ練習してたのに散々だわ」

「え? お前料理の練習なんてしてたの? 全く興味なさそうだったのに」

「ただの気紛れよ! 恥かいただけだったわ、足立君も上野君も微妙な顔してたし……」

「えりなならもっと練習すれば上手くなるって」



えりなは枕をギュッと握りしめて足をバタバタさせている。 それってどんな感情表現?



「もう行けば?」

「え?」

「山菜採りでしょ? 私後から行くから足立君は先行きなよ」

「でも……」

「いいから行って!」



えりなが強く言うので仕方なく俺は1人で研修に向かった。 場所に着くともうみんな山菜採りを興じていた。 俺もやるかと思うと肩をポンと叩かれた。



振り向くとニンマリとした顔の俺の村上が後ろにいた。



「足立君1人? あたしと一緒にしない?」

「え? ああ。 俺でよかったら別にいいけど?」

「足立君だから誘ってるんじゃない、鈍いよねぇ、わざと?」

「いや、わざとってわけじゃ…… 」



村上は俺の顔をジッと見て少し微笑んだ。



「もしかして美咲さんと何かあった?」

「へ? な、なんで?」

「足立君って美咲さんの事好きなんでしょ? 妬いちゃうなぁ、てか少しムカつく。 何があったの?」

「何って……」



村上がしつこく聞いてくるので今朝あった事を話した。



「あはははッ! それで美咲さん拗ねちゃったのね、意外と子供だね! クラスではいつもクールなのに」

「えりなに言うなよ? またぶり返すから」

「あ、そうだ! 美咲さんが拗ねてるならちょうどいいや! 今日の夜肝試し終わったら花火でしょ? あたしと一緒に花火見てくれる?」

「え…… ええとえりなが……」



そう言うと村上が少しムスッとして俺の腕を抱きしめる。



「あたしだって足立君の事好きなの…… 足立君がえりなさんの事好きだってのはわかってるけどあたしも足立君と思い出くらい作りたいの。 ダメ?」



村上が上目遣いで俺にそう言って迫る。 こんな時って断った方がいいんだろうけどそれだと村上は傷付くし……



「わかった、一緒に見るくらいなら」

「やった! じゃあ足立君、肝試し終わったら私のコテージに迎えに来て!」

「あ、ああ……」



OKしてしまった…… これで良かったのか? いや、もうわかんねぇ。 前と同じならいくらか考えようはあったけどこの時村上と接点なんてなかったし。



結局山菜採りの時間えりなの姿を見掛ける事はなかった、あいつちゃんと来たのかな? そして昼になりメンバー同士でカレーを作る事になりその時にようやくえりなを見掛けた。



「えりな、山菜採りちゃんと受けたのか? 」

「受けようとしたわよ! そしたら終わっちゃってるんだもの」

「はぁ〜、一応俺と沙耶が考えて企画したんだから出てくれよ」

「そ、そうよね。 ごめんなさい」



あれ? ちょっと素直になってる。 しばらくコテージに居て頭でも冷えたのかな? だけどえりなは少し元気がなかった。



「どうせ私が加わると美味しくなくなるかもしれないし何も関係ない事してようかな、片付けとか……」

「何言ってんだよ? えりなはもう少し練習すればこの中で料理だって1番上手くなるって」

「どういう根拠でそんなの言ってるのよ? 無責任よ」

「大丈夫だって、これは確実。 俺が保証するよ」



そう言うとえりなは少し笑顔になり「足立君の保証なんてアテにならないわ」と言っていたけどちょっと元気になった気がする。 やれやれ……


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