120話 料理対決?
皆風呂に入り各自自分の寝室へ入っていった。 そして誰も居なくなったリビングのソファに俺は体を寝かせた。 前花蓮はこんなとこで寝てたのか。
花蓮は細身だからまだ余裕があったけど俺は足がはみ出るし寝辛いな。 まぁこれでも前よりは精神的に楽だ。 誰も来なければだけど。
そんな事を考えてるうちに眠くなり瞼を閉じた。 そして次に目が開いた時にはもう朝方になっていた。 なんだ、結局誰も来なかったな。 自意識過剰なのは俺かもしれないなと思い朝の空気を吸って目を覚まそうと外に出るとえりなが居た。
ああ、デジャヴだな。前の時もこうだったよ。
てかまた1人で何か歌ってるよ…… 前に俺の家で歌ってたのと同じ歌だよなぁ? お気になのか?
「あ、足立君起こしちゃった? 静かに出てきたつもりだったんだけど」
「いや、俺今目が覚めたとこ。 こんなに早くからえりなは何してるんだ? てかその曲何? 洋楽?」
「まぁ教養が無さそうな足立君は知らないだろうから教えるだけ無駄無駄。 少し考え事よ。 足立君こそ早いのね?」
「なんか目が覚めちゃってさ」
小馬鹿にしたようなえりなの態度は置いておいて…… ちゃんとした曲だったのか、後でネットで聞いてみよう。
えりなは俺の隣に来て背筋をピンと伸ばして腕を上げた。 そういえば前にもここで思ったんだ、えりなは綺麗だって。
「ん? どうかした?」
「まぁえりなを見てただけ」
「へ? あ、ああ! 私って美人だものね、凡夫の視線集めるのなんてわけないわ!」
「普通に照れろよ……」
「なんで私が照れなきゃいけないのよ! あ、そういえば足立君お腹空いてる? 何か私が作ってあげようか?」
前にこいつサンドイッチ作ったよな、料理はこの時点では下手だったはずだけどサンドイッチはまぁまぁ食べれたのでえりなのお言葉に甘える。
コテージに入るとやっぱりみんなはまだ寝ているのか静まり返っていた。
「あ、簡単なサンドイッチにするからね! 」
「ああ。それならえりなでも大丈夫だ」
「それ、どういう意味よ!? 言っとくけど私…… あッ!」
えりなが急に言い掛けてやめた。 なんだよ? そういえば思い出したけどこいつこの時料理できなかったくせに前は料理食べさせてあげるわなんてよく大きな事言ってたよな。 どんな根拠でそんな事言えたんだろう?
「なんだよ?」
「な、なんでもない!」
えりなはいそいそとキッチンへ向かいサンドイッチを作り始めた。 するとリビングのドアが開き眠たそうな花蓮が入ってきた。
「げ…… 花蓮ちゃん……」
「ふぁ〜ッ、なぁにえりなちゃん? 人をお化けでも見るみたいな目で見て。 んん? 健ちゃんも起きてたんだ? おはよう」
すると花蓮がえりなが料理をしている事に気付いて眠そうな顔から一気に意地悪そうな顔になる。
「あら〜? えりなちゃんが料理ねぇ。 もしかして健ちゃんに作っているのかな? へぇ、どれどれ」
「ちょっと! 邪魔しないでよッ!」
「あははッ! もうちょっとマシな料理作ってあげなさいよ、私が代わろうか?」
「ダメよッ! 私が1人で作るんだから!」
いよいよ騒がしくなってきたので上野や沙耶も起きてリビングに来てしまった。あー、これはグダグダになりそうだ。
そして沙耶もその光景を見て自分も作りたいと言い始めた。
「健斗、朝からなんの騒ぎだよ?」
「料理作りたくて騒いでるんだよ」
「ああ、うちのメンバー女子がいっぱい居て目の保養になっていいよな」
上野は呑気にそう言ってるけどお前既に花蓮が自分への気持ちがないって知ったらどうするんだよ? 花蓮はいつ上野を切り捨てまた爆発するかわからない。 だけど今の花蓮は俺の言った事をちゃんと守ろうとしているけどそれがずっと続くかどうか……
そんな花蓮は上野が起きた事で上野の彼氏モードに切り替わった。
「よし! いい事思い付いた! 私達が作った料理シャッフルして健ちゃんと上野君に食べさせて誰が1番美味しいか決めようよ?」
「望むところよ!」
「わ、私だって負けない!」
「じゃあ手っ取り早くオムライスで勝負ね! えりなちゃんの作ったサンドイッチは仕方ないからみんなで食べればいいか」
「私が作った物を仕方ない扱い……」
そして3人はオムライスを作り俺達に差し出した。 うーん、見た目だけだとわからない……
「じゃあ早速頂くわ、花蓮のはどれかなぁ? あ、これ美味い!」
上野が食べ出したので俺も続く。あ、本当に美味しい、次はと…… なんだこれ? チキンライスに何故か余計な味付けが。 なんか微妙…… まさかえりなのか? 上野をチラッと見ると上野も微妙な顔をしている。 最後のはと。 あ、こっちも美味しい。 でもやっぱり1番美味しいのは最初に食べた奴だな。
「じゃあ2人同時に指差して決めてね! せーのッ!」
「あ!」
「え?」
「うぅ…… 酷い」
俺は1番最初に食べた料理を指差して上野は最後の料理だった。
「最初に2人が食べたのは花蓮ちゃんでーす! 上野君に選ばれなかったなんて。 でも健ちゃんは選んでくれたね!」
「さ、最後のは私」
「マジか!?」
上野が選んだのは沙耶が作った料理だった。 そして沙耶もその事にビックリとしていた。 そして1人負のオーラを出している人物が……
「ひ、酷い…… 一生懸命作ったのにッ」
えりなが目を真っ赤にして涙ぐんでいた。 そしてそれを見て花蓮は必死に笑いを堪えている、沙耶はまだ自分の料理を美味しいと言ってくれた上野をポカンと見ていた。
「え、えりな、お前の料理も独特な味でなかなか悪くなかったぞ?」
「フォローになってないわよ! バカッ!」
えりなは寝室の方へ走って行ってしまった。