117話 えりなに繋がれて
花蓮達と別れえりなと帰り道を歩いていた。 花蓮ってなかなか腕っ節は強いと思ってたけどあそこまで強かったなんて…… えりながよくボコボコにされたわけだ。
「いやぁ、花蓮にはビックリしたなぁ」「今頃? あの子あんな顔してとっても凶暴なんだから! 私昔酷い目に遭ったのよ?」
「聞いた聞いた」
「え? 私足立君に話したっけ?」
おっと危ない。 前のえりなから聞いたんだった。
「ああ、花蓮から聞いた」
「一体花蓮ちゃんとどこまで話してるのかしら? 足立君は!」
「えりなこそ俺を追い出しておいて村上と何話してたんだよ?」
「セクハラ! 」
ええ? セクハラかよ? 便利な言葉だよな。つうか俺の予想通り野外演習の話なんてこれっぽっちも出てこなかった。 放課後残って決めてて本当よかった。 こいつらやっぱり何も役に立たなかったしな。
でもこの時の新村と花蓮の出会いが花蓮の事を大きく変えるキッカケになるなんて俺はこの時は全然わからなかった。
そして野外演習の日になり学校への通学路を歩いていた。 そしてえりなが待っていたのだが最近こいつは何の為に俺を待っていてくれているのだろうか?
上野と一緒にえりなが帰った時から上野にはえりなに対して気持ちがない事がえりなにはわかりそれ以降あまり上野上野と言わなくなった。 俺もそんなえりなに気を遣い話題に出さないようにしていた。
「足立君、今日から野外演習ね」
「そうだな…… なぁえりな、聞き辛かったたんだけど俺とえりなの協力関係ってどうなっているんだ?」
「え? …… そうね、とりあえず上野君は保留よ。 だって上野君は私の事好きじゃないんだもの」
「だったらなんでいつも俺の事朝待っててくれるんだ?」
えりなは少し考えていた。
「慣れたから?」
「え?」
「上野君の事なくなっても今更変える必要あるかしら?」
「フッ、なんだよそれ?」
「何がおかしいのよ? 私みたいな美少女と一緒に登校出来て足立君は凄く幸せ者なのよ!」
よくそんな事自分で言えるなと思うけど実際えりなは美人だからな。
学校へ着くと花蓮達が俺とえりなを見つけて手を振っていた。 そしてそこからは前の通り急いでバスに乗った。 そして沙耶が俺の隣に座る事も同じだった。
えりなと花蓮は俺と沙耶を見張るように視線を送っていた。 2人の視線でハゲそうだ…… 後頭部を刺されているような感覚に陥りながら俺は眠る事にした。
「足立君、着いたわよ?」
えりなに起こされたようだ。 バスの中を見渡すと誰もいない。
「あれ? みんなは?」
「上野君と花蓮ちゃんは行っちゃったわ。 地味子は足立君が寝てるから先生に呼ばれて行ったのよ。 本当足立君は
寝坊ばかりするんだから!」
「ああ、悪い」
立ちなさいとえりなに手を差し出されえりなの手を取るとえりなの右手は冷たかった。 そういえばそうだった、こいつは戻ってもまた期限付きだったんだ。えりなの袖をめくる。
「え? ちょっと、何してるのよ!?」
刻印はまだ大部分は残っている。 けど実際に冷えていくえりなの体の感触はやっぱりえりなの死が迫っていると感じさせるには十分だ。
「ああ…… これね、趣味悪いわよね。 これが消えたら終わりみたい。消えていくに連れて手先がなんか冷たくなっていくし」
「お前どうするんだ? 上野は保留って言ったって」
「私だって悩んでるわよ! 」
今回のえりなは俺の接し方が間違ったのかな? 俺の事を気にしているようだけどなんか微妙な気がしてきた。 まさか俺以外に好きな奴が出来たとか? でも前は野外演習の時に告白されたから今回も?
いや、今までの間に前回体験しなかった事を体験したせいでやっぱり何か違う方向に進んでるのか?
そして野外演習自体は前回と同じように進み夜になると上野と花蓮が思い付きで言い出し肝試しを俺達メンバーでおふざけで最初にする事に決まりここでも前回と同じく俺とえりなが組になり外へ放り出される。
森の中をしばらく歩いた所…… えりなは少しボーッとしている。
「はぁ、足立君とか……」
「俺で悪かったな。 やっぱ上野の方が良かったか?」
「そんな事…… ないわよ!」
なんで怒るんだよ? あ! ていうかこのまま行ったらまた迷子になってヤバいよな。 俺は咄嗟にえりなの手を掴んで止めた。
「な、何いきなり手なんか握るのよ!? ビックリするじゃない!」
「えりな、俺達が2人きりでこんな森の奥に行ったらマズい」
「は、はぁ? どういう意味よ! 私に何する気よ!?」
「何勘違いしてんだよ? 方向音痴だろ! 俺とお前は!」
えりながハッとして辺りを見回した。
「そ、そうだったわ…… 足立君のお陰ですっかり忘れてた」
「俺のせいにするなよ、別に本番じゃないんだし迷わないうちに引き返そうぜ?」
すると手首にガチャリという音がして見てみると手錠を掛けられていた。 な、なんと……
そしてもう片方に繋がれているのはえりなの手首だった。
「何してんの? てか久し振りに見た」
「久し振り…… 何の事? こ、これは念の為よ!」
「念の為とは……?」
「こんな暗い森の中逸れたら危険よ、これなら嫌でも逸れないでしょ?」
こんな手錠を持ち歩いている奴の方がよっぽど危険というのはえりなの頭の中にはないのだろうか?