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111話 強引な健斗2


街に着きえりなは渋々と俺の電車賃を肩代わりしてくれた。 えりながお金を持っていてくれて本当によかった。 えりなまで持ってなかったらと思うとゾッとする。



「はぁ〜、あれだけ強引に連れて来たくせにお金持ってないとか信じられない。らしくない行動なんて取るからそうなるのよ」

「ありがとな、お前もらしくなかったしちょうど良かったじゃないか?」

「私のどこがらしくないのよ!?」

「さっきまでウジウジしてただろ? えりなはもっと偉そうだろ?」



そう言うとえりなは頬を膨らませたが図星だったのかプイッと俺から顔を逸らす。



「で? どうするのよ?」

「とりあえずお金いくらある?」

「ちょっと…… 私にまだ使わせる気なの? 本当にいい度胸してるわね?」

「ああ、今日は全部えりなにお世話になるからな」

「なんなの今日の足立君! 調子に乗り過ぎよ……」



そんな事を言いつつえりなは財布の中を確認している。 なんだかんだで優しいとこあるよな。



「6000円くらいあるわね……」



そう言ってチラッと俺の顔を見た。 どうするの? って言いたいんだよな?

そうだ、花蓮と前に来たカフェにでも行こう。



「ここらにカフェあるんだ。 とりあえずそこで一息つくか?」

「あー、はいはい、私が払うのよね? まったく……」



えりなはもうなんやかんや言うのを諦めたようだ。 そして俺はまた思い出した。 そうだ、カフェってどこだっけ? という事に……



多分花蓮と一緒なら花蓮は覚えているだろうが俺は方向音痴だ、1度行ったくらいじゃわからない。 流石に1度しくってるので次はえりな本気で呆れそうだ。



俺は焦って探すけどこういう時に限って見つからない。



「ねぇ、どれだけ歩かすのよ? カフェなんてそこらにあるじゃない?」



えりなの言葉でハッとして別に花蓮と行った所に拘る必要はないとようやく気付く。 本当にらしくない事はするもんじゃないな。



「そうだな、じゃあここにするか」

「明らかに私から言われて気付いたわよね? どこのカフェに連れて行く気だったの? それ以前に足立君カフェなんて行き慣れてないわよね?」



ギクリと来たけど平静を装いえりなと適当に見掛けたカフェに入る。 適当に決めた割にはなかなかオシャレそうな所だしえりなもやっと一息つけるといった感じなので良しとしよう。



「呆れた…… 本当に無計画でここまで来たなんて」

「でもあのままだったら余計な事ばっかり考えてただろ? なんか頼めよ、俺も頼むから」

「私のお金!! はぁ〜、まぁいいわ。 もう好きにしなさいよ」

「ああ、せっかく学校サボったんだしな、楽しまなきゃな」



前は総合的に見て花蓮と接している方が多かった。 クラスがあの2人とは一緒だったから。 沙耶とも隣同士だしよく会話した。



だけど特に花蓮の目が厳しくてえりなとは学校にいる時はたまに休み時間、そして昼休みと登下校…… あれ? 別にそんなに少なくはないかな? とか思いつつこの時間からえりなと居るといつもと違って楽しいな。



「何ニコニコしてんのよ? 人のお金で飲み食い出来るのがそんなに嬉しい?」

「いや、ただ純粋に楽しいなって思っただけだよ。 えりなは楽しくないか?」

「ふ、ふん! 別に私は…… 」

「楽しくはないのか……」

「そんな事一言も言ってないじゃない! そ、そうね。 それなりに楽しいわよ……」



よく聞かないと聞こえないような声量でえりなは下を向きながら言った。 良かった、ちゃんと気分転換になってるようだな。 お金まで使わせてここまで来たから少し気分を害したんじゃないかと俺も心配だったから。



まぁここまで来たら好きにさせてもらうけどな。 しばらくカフェでえりなと他愛のない事を途切れ途切れだけど会話した。 沈黙はあるけど気不味い沈黙ではない。 ちゃんとえりなも心の整理をしながら話しているようだった。



カフェを出て今度はデパートに寄ったりもした。 えりなももうお金が心許ないので見るだけだったが。 そしてそろそろ帰る事にした。



「本当に最後の最後まで私にお金を使わせたわね足立君」

「ああ、ありがとな、えりな。 後で返すから」

「倍にして返しなさいよ!」

「無茶言うなよ…… 出来るだけ早く返すからさ」



そう言って帰りの電車から降りえりなの家で俺達は別れた。



「足立君」

「うん?」

「今日は…… 楽しかったわ。 私のお金のお陰だけど! 足立君の提案にしてはイライラが少し吹き飛んだわ」

「少しか、まぁいいわ。 俺も楽しかったしさ。 じゃあまた明日な」



俺はそのままえりなの家から遠ざかりしばらくして後ろを見るとえりなは俺の事をまだ見ていた。 だけど俺が振り返るのをあいつが気付くとそそくさと家に入っていった。






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