109話 花蓮の家へ2
「花蓮、トイレ借りていい? 緊張したら腹の調子が……」
「あははッ、やだぁー、健ちゃんったら。 トイレそこだからご自由にどうぞ」
俺はトイレに行き響紀にメールをしておいた。30分後に電話してと…… あまりに早過ぎると花蓮に怪しまれるからな、だから30分後だ。 てかえりなも上野と何してるか気になるし。
トイレから出ると花蓮はお菓子やジュースを用意していた。
花蓮…… 俺が来てくれる事楽しみだったんだよな、だから花蓮がウキウキしているのもわかる。
「健ちゃん、くつろいでいいよ? あ、散らかしても健ちゃんならOKだからさ!」
「じ、じゃあ遠慮なく……」
俺に対するこの心の広さを頼むから上野にあげてくれ。 俺が花蓮が持ってきたお菓子を食べていると花蓮がニンマリしてこちらを見ている。
「ん?」
「ああ、ごめんね。 健ちゃんが私の家に居るなんて不思議だなぁって思ってさ」
「確かに俺も上野より先に花蓮の家に入ったなんて不思議な気分だよ」
「どうしてだかわかる?」
花蓮は意味深な顔でそんな事を言うがもうわかってる。 花蓮は俺の心を掴むのが上手い。 いや、花蓮はどんな男でもモノに出来そうだ。
「あ、わかったぞ! 上野をここに来させる前に俺で練習してからって事だな?」
答えに辿り着きたくないので俺は出来るだけ的外れな事を言う事にする。
「ブブーッ! 大ハズレ!」
「じゃあ俺をからかう為!」
「うーん、面白そうだけどハズレ」
そんなやり取りを何回かしていると花蓮はそんな問いを自分で締めた。
「もう、健ちゃんったら鈍感なんだから! それとももしかして私から言わせたいとか?」
「え、なんだろ……」
「私ね、健ちゃんの事気になってるの」
「え?」
ごめんな花蓮、わかってるよ……
「私好きな男の子しか自分の家に呼ばないよ、大抵そうだと思うけどさ。 でもそんな健ちゃんから上野君の事よろしくなんて言われて凄く葛藤してるんだよ? 上野君はえりなちゃんへの当て付けなだけだったんだもん」
「なあ、えりなと仲良くするって考えはないのか?」
「だって健ちゃんはそんなえりなちゃんの事気になってるって言ったでしょ? そんなえりなちゃんを私が仲良く出来るかな? もし健ちゃんがそんな立場だったらどう? 上野君がえりなちゃんを気になってたらって事で」
そう言われると非常に困る。 上野の凶行も実際見てるしな。
「多分無理かも……」
「でしょ?」
「だったら約束してくれないか? もし俺がこれから先誰を好きになっても後腐れなく尾を引かないようにするって。 それがえりなでも」
「うーん、他ならぬ健ちゃんの頼みならなんでも聞いてあげたいけどそれはどうかなぁ? 」
花蓮は少し考え込んでいた。 やっぱり俺が好きって意思表示しなければまだ花蓮はやり過ぎな行動は取らないようだ。
「惚れた方が負けだもんね、わかったよ。 私健ちゃんの言う事出来るだけ守るよう努力してみるよ」
「花蓮……」
良かった、まだこの段階なら花蓮は話が通じる! どこまで花蓮が守ってくれるかはわからないけど花蓮はとりあえずはそれで納得してくれた。 来て良かったのかもしれない。 じゃないと花蓮とこうして2人きりで話すなんて今は難しいから。
「でもひとつ条件があるよ?」
「条件?」
「たまにこうして私の家に遊びに来てくれる事!」
花蓮は俺にズビッと指を向けて言った。
「そうしてくれないと私いくら健ちゃんの言い付けでも守れるかわかんない」
「わかった、花蓮だけってのも不公平だもんな」
「うん! なら今日はうんとくつろいで! あ、晩御飯食べていく? 私の手作りだよ」
その方が良いのかもしれないと思い俺は響紀からの着信を無視して後に響紀に謝り花蓮の家で夕飯をご馳走になった。