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108話 花蓮の家へ


俺は初めて花蓮の家に行く事になった。 花蓮…… 前は最終的にとんでもない決断をしてしまった花蓮だけど村上とえりな襲撃、はたまた沙耶を手にかけたのまであるんだけれど……



やっぱりなんだかんだで花蓮を恨み切れない俺は人間としてどこかおかしいのだろうか?



だって花蓮は好きな奴の為に必死だっただけだ。 それがヤバい方向だったって事はわかってる。



今俺の隣で無邪気に鼻歌を歌いながら一緒にいる花蓮も少し間違えばあの時と同じ結末になるのは容易に想像がつく。 だけどそれは俺が無責任だったせいもある。 あの惨劇を繰り返さない為にも花蓮には出来るだけ早い対処が必要なのだけれど……



「ん? どうしたの? 健ちゃん」



花蓮は俺にとても可愛らしく微笑む。 こんなに可愛い花蓮は上野でなくても奪われたら怨みを買うだろう。



「花蓮の家に誘われるなんてな、思ってもみなくて」

「うん、男の子は健ちゃんが誘うの初めてだよ、上野君だって来た事ないだよ」

「え!? なのに俺なんかをよく誘ったな……」

「えへへ、そうだねぇ、なんででしょうね!」



なんかあまり良くない展開だな…… 俺がえりなではなく花蓮の事が好きだったらまったく問題ない展開なのだけど。 それに上野の事だってある。 仕方ない、俺の株を落とすか。



「でも俺ってさ、よく友達の家とかに誘われて行くともう2度と誘われないんだよな」

「え? どうして?」

「自分の家のように振舞ってさ、人の家を散らかして帰るからさ、お前散らかして片付けも出来ねぇのかよ?って言われてそれ以降誘われないんだ」



花蓮の前でこんな事言わなきゃならないなんて…… ちくしょう! どうだ花蓮? 見損なっただろう?



「プッ…… あはははッ、何それ!? 可愛いね健ちゃんは!」



え? なんだこの反応は?



「笑っちゃってごめん、健ちゃんのそんな一面知れて嬉しいよ。 気にしなくていいよ? 私そんなの全然へっちゃらだし健ちゃんなら許せるよ」

「ま、マジで?」



甘かった、花蓮はそんな事くらいじゃ全然引かないのか。 思えば俺の事ならなんでも許容してしまいそうな雰囲気だったもんな前も……



「なんか喉渇いたな、ジュースでも買おうかな」

「そうだね! 健ちゃんの奢りで!」



よし! ここはお金を持ってなくて花蓮に買わせてもらう事にしよう!



自販機を見つけたので俺と花蓮はそこへ行き俺は徐ろに財布を取り出して中身を確認して顔を手で覆う。



「どうかした? 健ちゃん」

「お金なかった……」

「ありゃりゃ、じゃあ私が買ったげる。 何飲みたい?」

「え? いいのか? じゃあコーヒー」



花蓮はお金を入れて俺にコーヒーを買い渡した。 なんか凄く悪い事してるみたいで逆に俺の気が引けてきた。



「健ちゃんったら私に奢ってもらうなんて。 次はちゃんと私に奢ってね!」

「ごめんな花蓮……」



花蓮は愛らしい顔でそう言った。 俺は花蓮のこういう懐の深さを好きになったんだ。 グラッとする自分の決意のなさに情けなくなる。 だが気を引き締めるしかない!



「お金なかったからってそんな暗くなる事ないよ、健ちゃんと私お友達でしょ?」



花蓮は俺を慰めるように頭を撫でる。 はぁ〜、嫌われるまではいかなくても失望されるって意図してやるのって簡単だと思っても花蓮みたいに好きな人の為に一生懸命な子にするのって精神的に来るものがあるな。



そしてようやく花蓮の家に着くとそこはアパートだった。



「実は私ね、一人暮らししてるんだ」

「な、なるほど、そう来たか」

「へへ〜、ビックリしたでしょ? うちの親が仕事の都合でね、転校とか私は嫌って言ったらさ、一人暮らしする時のいい勉強になるからっていう事でね」

「あー、道理で知らない男なんてこれじゃあ呼べないな、危ないもんな」



花蓮って一人暮らしだったなんて…… これじゃますます危険だ。 来たのはやっぱり不味かった。



「健ちゃんはねぇ、特別なお友達だからね! さぁ、遠慮しないで入ってよ」



特別なお友達ってやっぱり俺の事…… そういう意味なんだろうか?



花蓮の家の中に入ると女の子の部屋だなと思わせるような可愛らしい部屋だった。



「えへへ、恥ずかしいからそんなにジロジロ見ないでね」

「へぇ、花蓮の部屋には初めてだから新鮮だな」

「花蓮の部屋には? そんな言い方だと他の女の子の家に行ったみたいだねぇ、もしかしてえりなちゃんとか? それにその首の絆創膏って何かな? もしかしてキスマークでも隠してる?」



花蓮、流石に鋭い…… いや、俺が間抜けなだけかもしれないけどここは俺は心を鬼にして花蓮には言い辛い事も言わなきゃいけない。



「うーん、バレたか。 えりなの家にはこの前行ったんだよ、俺えりなの事気になっててさ……」

「ふぅん…… じゃあ首の絆創膏剥がすね?」



花蓮がそう言った瞬間ベリッと絆創膏を剥がされた。 なんたる早技、だけどキスマークなどではないので安心だ。



「切り傷…… 健ちゃん、これって誰かにやられたの?」



花蓮のニコニコとした顔が急に変わる。ニコニコしてるけど明らかに目は笑っていない……



「俺妹居てさ、昨日勉強教えてって言われて俺眠くて寝そうになったらシャーペンで突かれて……」



なんとも苦しい嘘。 花蓮はへぇと言ったが信じたかどうかわからない…… なんとか早めに退散しなければ。







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