105話 キスの練習?
えりなを家に送ると予想外な事にえりなに家に誘われた。 こんな事なかったのでビックリするけどこれって俺の事少し受け入れたって事なのかな?
「どうするのよ? 来ないの? それとも帰る?」
えりなは少し顔が赤くなっている。 あ、これ誘ってて恥ずかしくなってきたからやっぱりやめようなんてパターンになる前に俺は返事をした。
「せっかくえりなからそう言ってくれるんだから上がっていくよ」
「ならボケッとしてないでさっさと来なさいよ!」
見慣れたえりなの家には入ると相変わらずだな…… 誰も居ない、まぁ居たら誘われないだろうしな。
「そこのテーブルに座ってて。 コーヒーでも飲む?」
「ああ、じゃあ頂こうかな」
えりながキッチンへ行きコップを取ってくる、なんかついこの間の事なのにこんな光景凄く懐かしく思える。 えりな料理作ってくれたよな。
あ、でも今のえりな料理はてんでダメだったんだ。 そんな俺をえりなはジロッと見た。
「言っとくけど私料理とか出来ないからッ! てか家事なんて楽しくもなんともないんだから!」
何故か強くそう言われた。 誰もそんな話題出してないのにいきなりなんだ? 俺の心でも読んだのだろうか?
「別にそんなの聞いてないだろ?」
「あ…… そうね……」
えりなは少し気不味そうに俺にコーヒーを差し出した。 なので俺もこう返す。
「まぁえりなって飲み込み早そうだし料理覚えたらきっと美味し物作れるだろうなぁ」
「なんで会って間もない足立君がそんな事言うわけ? 足立君が私の何を知ってるの? そもそもえりななんて馴れ馴れしいって言ったわよね? 人前であんな風にしたら私達勘違いされちゃうじゃないの!」
「えりなの事ならよくわかってるよ」
「なッ…… 足立君って私のストーカーなの?」
あ、調子に乗り過ぎた。
「なんとなく見ててわかるだろ? えりな顔に出やすいし」
「顔に出やすい? 私クラスでは上手く誤魔化してるのに?」
「よく見ればな、なんとなくわかるって事だ」
えりなは自分の顔を触りどこが変なのか確かめていた。 ふぅ、誤魔化せた。
「足立君……」
「ん?」
「私と足立君って知り合ってからまだ2日目よ? なのになんで私は足立君なんて得体のしれない人を家にあげちゃってるんだろ?」
「それって俺の目の前で言う事か? まぁそれは俺はお前が上野と上手く行くように協力体制取ってるから話を合わせたりしてた方がいろいろ便利とか。 だろ?」
まぁ上野とは全く上手くいくどころか相手にもされてなかったけど…… それに本当の事話すのはまだやめた方がいいよな。 なんかそれはそれでこいつ怒り出しそうだし……
「う、うん、そうよね。 だからよね!」
えりなは自分に言い聞かせるようにそう言っているように見えた。
「だったら!」
「うわッ!」
えりなはいきなり包丁を取り出し俺の首筋に刃を当てた。 ええ!? いきなり何? あ、えりなは俺を好きだって言った頃から丸くなり始めたけど最初はこんなんだった……
「な、なんでしょう?」
「仮にも私と協力してるんだから裏切っちゃダメよ? 最後まで私と協力してもらう、わかった?」
「そ、それってバランス悪くないか? 俺は協力してあげる方の立場じゃん?」
「これ、ばら撒かれてもいいのかなぁ?」
そう言ってえりなは携帯の画像を見せてきた。 あー、昔を見てるようでなんだかそれはそれでほっこりするなぁ…… とか言ってる場合じゃないよな。
「はいはい、裏切らないし最後まで協力してやるって」
「よろしい…… それとちょっと目を瞑ってなさい」
「え? なんで?」
「いいからッ!」
仕方ないので目を瞑る。 今のこの状態で目を瞑るのは怖いけど……
「絶対開けないでよ!?」
「開けない開けない」
そう言って数秒後、俺の唇に何か触れた。 え? これって知ってる、えりなのキスだ…… 俺が驚いて目を開けると首筋にチクっとした感触と同時にえりなの顔が目の前にあった。
そしてえりなは俺より驚いたような顔をしていた。 そのせいで力が入ったのかわからないが俺の首筋からツーッと血が流れる。
「ば、バカ! 絶対開けるなって言ったわよね!?」
「お前こそ何してるんだよ? お前が好きなのは上野だろ?」
「こ…… これは練習よ! もし上野君にキスが下手くそとか思われたら嫌でしょ!? だってあの花蓮ちゃんと付き合ってるのよ? 仕方ないから足立君で練習してみたのよ! こんな美少女とキス出来たんだから良かったでしょ!」
もしかして俺の事を思い出して? とか思ったけど別に記憶喪失などではないのでそんな事はあり得ないか。
「いや、そんなにムキになんなくたって……」
「ムキになんかなってない!…… てバカらし、飲んだらとっとと帰りなさいよね」
そうして俺の向かいの席に座りプイッと顔を横に向けた。