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103話 えりなside


「はぁはぁッ、足立君重いわよッ! 女の子の私にッ、こんな力仕事させて! はぁはぁッ!」



なんとか彼を雨の当たらない屋根の下に運んだ。 本当に生きてるわよね? 私は再度足立君の胸に耳を当てる。 よし、大丈夫。



それにしても足立君には天罰でも降ったのかしら? バカにしてたもんね。 そんな気絶している足立君の顔をよく見てみた。 可愛い寝顔ね、だけど上野君に比べたら……



そんな事を思っていると足立君が急に苦しみだした。 え!? 今頃になって苦しみ始めるって何?



そう思って足立君の体を揺らして彼の目を覚まさせようとする。 するといきなり足立君の手が私の腕を掴んだ。 かなり強い力で痛いくらい。 だけどその瞬間私は電流でも流されたかのように全身に衝撃が走った。



私の頭の中に私の知らない私の映像みたいなものが流れてくる。 え? 足立君も居る?





「そう、どうしても信用出来ない? 好きよ健斗」

そういえばね、私料理の勉強して今日はアップルパイ焼いてきたの!」

「でも私はそんな事考えられなくなるくらい健斗を好きだったの」

「最近家事とかもね、やるの楽しくなってきちゃった。 健斗がいつ来てもいいように綺麗にしておかなきゃって思ったらさ、なんだかやる気出るのよ。 うちの両親はさっぱり何もしないし余計にやり甲斐があるわ」

「健斗、私、私こんな時だけどとっても嬉しい。 健斗に…… 健斗に好きって言ってもらえて。 それに私……」

「いきなりだけどさ、ここから出たら俺えりなと将来結婚したいと思ってる」

「え?」

「ふざけて言ってるんじゃない。 本当にそう思うんだ」

「…… 健斗………… わ、私で良かったら」

「だからなんとしても2人で一緒にここから出よう?」

「うん!」







………… 何…… これ? 私は怖くなって足立君から手を振りほどき急いで離れた。




あれ? 私どうして泣いているの? 私どうしちゃったの? 足立君も泣いている、どうして? 足立君は何者なの?




私は何故かわからないけどとても胸がしめつけられる思いだった。 必死に涙を堪えようとしたけど止まらない、足立君の顔を見ているだけで凄く切なくて……




それにさっき見えた映像は何? 私と足立君はとても仲が良さそうだった。 まるで…… まるで恋人のように。




こんな場所だからだろうか? 神様のイタズラ? だったらありえなくもない。 私は現に死んだと思ったのにこうして生きているのだから。 だけどどうして足立君なの?




私はもうわけがわからなかった。彼から視線を逸らそうと思っているのに逸らせない。




それどころか自分から足立君へ近付き彼を膝の上に乗せた。 彼の頭を撫でてみる。 わからない…… わからないけど凄く懐かしいような、悲しいような気分になる。



「苦しまないで健斗、私が側に居るから」




私はそんな事思ってもないのに勝手に自分の口がそんな事を喋っていた。 何? 私はそんな自分が怖かった。 自分で自分を制御出来ない。




そしてしばらくすると彼の意識が覚醒した。 雨は止み雷も止まっていた。 そして私の膝の上に頭を乗せていた足立君はビックリしていた。 え? どうかした?



「えりな、泣いてるのか?」

「え!?」



私は急いで目を擦って涙を拭いた。



「泣いてなんかないわよ! これは雨なんだから!」

「そうか? 泣いてるように見えたけど? イテッ!」



私はなんだか恥ずかしくなって彼を膝の上から退かした。



「…… まぁいいか、それで? お前の秘密って?」



そうだった、足立君に私の秘密を教えるんだった。




「フェンスに上ってね、足立君の姿が見えてこっちに来そうと思ってその前に飛び降りてやろうと思って飛び降りたらね、声が聞こえたの」

「ふんふん」

「その時ね、ここの神様が私に話し掛けてきたの。なんでも記念の1000人目なのに願いを叶えてあげられなくて申し訳ないって事でもう一度チャンスをくれるって! 半年以内に私が好きな人と付き合えたら飛び降りた事をなかった事にしてやろうって。でももし無理だったらその日にそのまま戻ってしまって私は死んじゃうんだって。 本当は神通力で上野君と結ばせてあげたいけど私の死を延ばすだけで精一杯なんだって」



だけど言っててあれ? って思った。 足立君が来る前に飛び降りてやろう? 私足立君の事をこの人だって屋上から見て思ったのよね? おかしくない? ダメだ、よくわかんないや……



「はい、これが私の秘密!」

「てかそんな秘密喋っていいの?」

「私の死を延ばすだけで精一杯なら他に何もしようがないでしょ? ポンコツ神様なのかしらね? だって肝心の上野君と結ばれないんだもの!」

「お前そうだったとしたらよくこの御社でそんな事言えるな…… 」



そんな風に言っているけど足立君の喋っているのを聞いていると前から知っていたようなそんな余裕みたいな感じに聞こえた。



「ねえ足立君……」

「なんだよ?」

「私前に足立君と出会う前に会った事ある?」



そう言うと足立君はとても驚いた顔をしていた。 まるで図星を突かれたような。 ますます混乱する、さっき見た映像は私の夢でしょう? 本当は私も気絶してたとか……



そんな風に考えてたけどしっくり来ない。



「あー、帰ったら怒られるだろうな、こんなにびしょ濡れになって、それもこんな遅くに」

「足立君、私も一緒に行って謝ってあげるわ。 今回は私のせいでもあるし……」



私はそんな事を言っていた。 でもあんなの見たからって何? 私は私で足立君を見ればいいのよ。 変に意識しなければいいだけ。


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