102話 御社2
「待ってたわよ足立君!」
「ああ。お待たせ」
「足立君からはやる気は感じられるんだけどいまいちなのよね、私の命が掛かってるのに。 だから仕方ないから私の更なる秘密を教えてあげるわ」
んー、なんて上から目線なんだろう。 もう全部知ってるけどさ、えりなと一緒に入れるなら悪くないさ。 なんて今だから思える事だけど。
「何ニヤついてるのよ? 何かエッチな事想像してない?」
「そんな事想像するわけないだろ? 相変わらず自意識過剰だなぁ」
「気に入らないわねぇその態度」
「ほら、行くんだろ? 暗くなるからさっさと行こうぜ」
そしてそれからしばらくして俺はえりなと山の中を歩いていた。 そう、ひとつ誤算があったとしたら1度行った事はあるとはいえ、もう2度と来る事はないだろうと思っていたのでまったく道を覚えてないという事だ。
そして俺とえりなは方向音痴。 前と同じく道に迷ってしまった。
「おっかしいなぁ、確かこの道でいいと思ってたんだけど……」
それ前にも聞いた。
「人の事言えないけどお前って本当方向音痴だよなぁ」
「なんで足立君が私が方向音痴だってしってるのよ?」
「ああ、そんな顔してたからな」
「ちょっと! どういう意味よ!? 私のこの綺麗な顔のどこに方向音痴なんて書いてあるのよ!」
するとポタッと頬に冷たい感触が…… そう、雨が降ってくるんだ。
「あ…… 雨か」
えりながそう言って空を見上げる。 俺はそんなえりなをじっと見つめる。 本当はえりなを今すぐにでも抱きしめたい。 だけど今のえりなは俺と過ごした記憶がない。
好きだってわかって結ばれたと思ったら記憶がなくて……
ふとそんな俺の視線に気付いたえりなが俺を見返す。
「何さっきからジッと見つめてるのよ?」
「ああ、お前ってこうして見ると本当に綺麗だなって思ってさ」
「え? 当たり前じゃない、だけど私は上野君が好きなんだからね! 今頃私に惚れても手遅れよ」
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今日私は足立君の協力の姿勢が思わしくないので私の切羽詰まった状況を理解してもらう為に私の奇跡が起きたと思われるボロい御社に連れて行く事にした。
なんか足立君って最初から変な奴って印象だった。 私を見てボケーッとしてるし。 最初は私の見た目がいいからその他大勢と同じように私に注目されたんで見惚れてるのかと思ったけどなんだか違うような気がした。
まるで私の事を昔から知っているような態度を取るし…… なんなんだろう? それにあの時私は屋上から足立君を見つけて駆け付けて来た時この人だ!って思った。
理由はよくわからない。 そして私がほんの少し無茶苦茶な事言ってるってのも自分で自覚はある。 だけど彼はそんな私に協力してくれてる。 嫌な顔なんてしないで…… 何を企んでいるの?
まぁ足立君が何を企んでいようとそのうちボロを出すでしょ。 もしかして本当に花蓮ちゃんの回し者かもしれない。 あの花蓮ちゃんならやりそうな事ね。
でも山に入って雨が降って来たので私は空を見上げると彼の視線に気付いた。 それはなんだかとても愛おしいようなものを見る目だった、何故そんな目で私を見るの? 私は上野君が好きって言ったよね? やっぱり私の見た目がいいから?
彼に聞いてみると綺麗だなって答えた。 そんなの言われ慣れてるからなんとも響かないけど彼の言葉は私の胸の奥でほんの少しだけど響いた。 どうして?
そして歩く事しばらくようやく目的の場所に辿り着いた。 手こずらせてくれたわね、建てる場所おかしいんじゃない?
私は足立君に向かって石碑をポンポンと叩いて見せ付けた。
「これは?」
「これはね、大昔縁結びの神様のものらしいんだって! 私上野君と結ばれるように調べてここでお祈りしたの!」
そう言うと彼はクスッとして「なるほど」 と言った。 信じてないわね!? この分からず屋!
「ここの神様のお陰で私は生きてるってわけ!」
「じゃあ神様に感謝だな」
その時だった、雷が落ちて足立君は倒れてしまった、私は無事なのに? 石碑を触ってたお陰で上手く流れたのかしら? なんて考えてる場合じゃない!
「足立君!!」
こんな所で死んだら私事情聴取とかされて上野君どころじゃないじゃない! 私は急いで足立君が生きてるか胸に耳を当てる。 なんだ…… 生きてるじゃない。 良かった。 私はとりあえず彼がこれ以上雨に当たらないようにボロい御社に彼を運んだ。