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101話 安定の3人


「あーーーーッ! やっちゃったぁ、もう泣きたいわ……」



屋上へ行きえりなはさっきの騒ぎの事で両手で頭を押さえて後悔しているようだった。 あれはきっとちょっとの間噂になるだろうからな。 俺はえりなの提案とは違う事で大恥を結果的にかいてしまった。



俺だってみんなの前であんな事されたら恥ずかしいんだぞ? ヘタレ野郎とか言われそうだし。 実際えりなに守ってもらったしな。




「私のバカバカッ! 足立君なんて知らんぷりしてればよかったのに!」

「まぁそんな落ち込むなって。 俺結構嬉しかったよ」

「足立君を喜ばせようとして助けたんじゃないわよ! 足立君がボコられて余計な事ゲロっちゃわないか心配だったのよ! でもあんなに騒ぎになるなんて〜!」



そっちかよ…… 相変わらず今のえりなは俺をガックリさせるのが板についてるな。 だけどえりながこんなに落ち込んでいる所は今の俺は見たくない。 俺はえりなの肩にポンッと手を触れた。



「えッ?」

「ごめんな、俺が上手くやれないせいだよな? 俺も反省してるし上野の事ちゃんと協力するからさ、元気出せって」

「…… ふん! 気安く触れないでよ、エッチ!」



いやいや、だったらお前は俺に襲われそうになったとかワザとそんな風に持って行ってるくせにそれはないだろう…… まぁ今のえりなにそんな事言っても逆効果だけど。



「それに私クラスでは上手くやっていて評判いいのよ! クール系美人なんだから!」

「うん、それ知ってる」

「あら、知ってたの? それなのに私に怒鳴らせたりして私を貶めたいのかしら? ますます花蓮ちゃんの回し者なんじゃないでしょうね?!」

「じゃあ俺がボコられても知らんぷりしてればよかっただろ?」

「足立君がボコられて休んだら使える駒がいなくなるでしょ!」

「駒って……」



そして屋上の壁に寄り掛かって座り込んでいたえりなは急に立ち上がった。



「頭に来た! 文句言ってやる!」

「ええ!? 俺の為にそこまでしなくていいって」

「え? 誰が足立君の為に文句言うって言ったの? 言っとくけどあいつらに文句言うんじゃないんだからね! それと今日学校終わったら私に付き合いなさい」

「え? 誰に文句言うつもりだよ? てかどこに行くんだ?」



ここへ来て文句を言うってそして付き合うっていうのはまさか……



「ふふーん! 秘密の場所」



やっぱりな…… またあの場所に行くのか。 俺だってもう関わりがないわけでないのだけどこいつよくあそこに文句言いに行く気になれるな。



そして教室に行き席に戻ると花蓮と上野が俺の所へ来た。



「聞いたぜ健斗、お前隣クラスの大野にボコられたんだってな?」

「健ちゃん大丈夫? 私のお友達をボコるなんてムカつくわねぇ、そいつ」



そんな事を言う花蓮はなんだか前の事も相まってまた危険な事をしないかと心配してしまう。



「大丈夫だって、そんな大袈裟な事じゃないよ。 えりなが助けてくれたしな」

「へぇ、えりなちゃんが? どういう風の吹き回しなんだろ?」

「えりなはなんだかんだで優しいって事だよ」



そう言った時花蓮は少しムッとしたような感じになったけど俺はえりなを好きなんだって事わかってもらえないかな?



花蓮の愛情はとても深い事がよくわかったしな。 深すぎて奈落の底まで落ちてるけどそれは俺も花蓮の事が好きで急にえりなに乗り換えたせいでもあるし。



だから今居るこの日常では花蓮に好きと伝えなければ花蓮もあんな過ちは犯さないだろうし花蓮に人殺しになんてなって欲しくない。1度は花蓮を好きになった俺だからな。 問題はその愛情が上野ではなく俺に向けつつある事なんだよなぁ。



上野にはさっぱり興味がなさそうだったし…… 俺は花蓮と沙耶にもちゃんと幸せになってもらいたいって思ってる。えりな、花蓮、沙耶の事はもう他人事ではいられない。 俺は関わってしまったのだから。



だからと言ってこの世界の花蓮、沙耶とあまりに深く関わってしまうと前の繰り返しになる。 友達としてだ、あくまで友達…… 火薬庫に自ら火を持って行くような真似は絶対に慎まねば。



「健ちゃん、困ったら私に相談するんだよ? えりなちゃんは頼りないから」

「花蓮に相談する前に俺に相談しろよ? 花蓮に何かあったら嫌だしな」

「ああ、2人ともありがとう」



花蓮と上野が席に戻ると隣から視線を感じた。 そう、沙耶だ。 まだイメチェンする前の垢抜けない沙耶を見るのも久しい。



「あ、足立君、あの時私見てたんだけど本当に大丈夫だった? 痛そうだったし」

「大丈夫だよ、沙耶…… あッ!?」

「あ、足立君、今私の事名前で呼んでくれた?」

「あ、いや、その……」



つい流れるように俺はうっかりと…… ついさっき戒めようとしたのに火薬庫の目の前に来た気分だ。



「嬉しい! 私足立君と隣で仲良くなりたいなって思ってたんだけど少し距離があったような気がしてて…… 私も健斗君って呼ぶね! えへへ、でもなんか恥ずかしいね」

「そ、そうか、良かった」

「あ! 仲良くなった印にね……」

「ウサギのスプラッター見せられそうだから遠慮しとくよ」

「健斗君私のしようとしてた事よくわかったね? ふふッ、なんだか分かり合えてるみたい」

「…………」



そう言って微笑む沙耶を見て前よりも早い崩壊の兆しが見えるようで俺は少しクラッと来た。




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