踊り子と結婚

舞踏会で花嫁探しをすることになった王子が、無感情に眺める華やかで高貴なはずの世界。
母親の命じるままに全ては決定していき、そこに王子の意思はない。
近しい人の微笑みもやわらかな陽光も、王子の内側で静かに凍りついていく。

「……なにが楽しくて生きてらっしゃるんですか」
　……楽しくなどなくとも生きていくことはできます。
「つまらなくないですか」
　……苦しくなければ良いと思いますが。

正体の曖昧な哀しみが滲んでいく。

妥協と現実に軋みをあげるお伽噺の世界で、
母親が選んだ平民の娘はふと射抜くようなまなざしを王子に向けた。