表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界魔法の物理学  作者: のん
第一章
6/42

5. 魔法についての常識

この世界の魔法の常識についての説明回です。最後は、少しだけ物理にも触れます。

説明回だからか、少し長くなってしまいました。

この前に、もう1話更新しているので、読み飛ばしには注意してください。

風呂から出て身支度を整えたわたしは、さっそくお部屋で待っていたお母さまに突撃した。


「お母さま! 魔法のことについて教えてくださいませ!」

「あらあら。どうしたの? 急に魔法のことなんて」

「先ほどお風呂でお湯をためるところを見たのですが、どうして魔力を魔法具に注ぐとお湯がでてくるんですか!?」

「魔法具に魔力の注ぐのはいつも見てることだと思うけど、本当に急にどうしたのかしら?」


お母さまは、そういうお年頃になったということかしら、と呟きつつも


「クレアちゃん。魔法具にはね、魔法陣が刻んであるの。そこに魔力を流すことによって、魔法を発現させているのよ。魔力を注いで、キーとなる呪文を唱えることで魔法が発動するの。お風呂に備え付けてある魔法具は水と火の魔法陣が刻んであるわ。水魔法で水を作って、それを火魔法で温めているのよ」


と答えてくれた。しかしそこまでは前世でWeb小説を読んでいたわたしにも予想できていたことだ。

肝心な部分がわからない。


「でもお母さま。その水は一体どこから現れているのですか? 火魔法で水を温めるためのエネルギーはどこから? それに、そもそも魔力というのが何なのかわかりません」

「あらあら、一気に質問されると困っちゃうわね……。そうねぇ。まず、水がどこから現れているかについては、実はまだよくわかっていないの。一説には、魔力が直接水になっているとも言われているわ。」

「魔力が直接水になっているというのであれば、魔力が霧散したときには水も消えてしまうのではないですか? しかしお風呂ではお湯は残り続けましたし、捨てるときはお湯を流していましたよ」

「そうねぇ、そういう反論も存在するわ。だから、まだよくわかっていないのよ。次に火魔法についてね。その、()()()()()というのはよくわからないけれど、これは魔力がそのまま水を温める力になっていると言われているわ。こちらも魔力が消えたら水が冷たくなる気がするけど、一度温まったお湯はなかなか冷めないわよね? だからお湯は暖かいままなのよ」


そこで、お母さまは一息ついた。次は魔力に関する話だろう。


「最後に、魔力が何なのか、だったわね。魔力がどういったものかという議論は遅々として進んでいないわ。ただ、血液と関係があるということだけがわかっているの」

「血液、ですか?」

「そう、体を流れている血、ね。これは、戦時に魔力の使い過ぎで亡くなった魔法師の解剖が行われてわかったことなのだけれど、血液の量が通常の人よりも極端に減っていたのよ。それで血液と魔力には関係があるんじゃないかって言われているのね」

「たったそれだけしかわかっていないのですか……」


わたしは少し、いやかなりがっかりした。生活に魔法が必須になるほど魔法という技術が発達しているのに、その根源となる魔力がどういったものかがほとんどわかっていないというのだ。

ふと、気になったことを質問する。


「お母さま。魔力の総量はどのようにして増えるのでしょうか。わたしも魔法を勉強したいですが、先ほどの方のように魔力の使い過ぎで死にたくはありません」

「あらまぁ、魔法を勉強したいの? なら少し早いけど家庭教師を付けるべきかしら。それで、総魔力量のお話ね。これは加齢とともに増えるとはっきりわかっているわ。ただし、増えるのは子どもから大人になる間だけで、大人になってからは総魔力量は増えないとされているわ。どうすればその増える魔力量を増やせるかについては、まだ研究途上よ。ただ、同じ年齢だと総魔力量はだいたいみんな同じだと言われているわ。」

「そうなのですね……。ありがとうございました。それと、魔法の家庭教師を付けてくれるというお話、わたし覚えましたから。お願いしますね。」

「はいはい。そうなると、せっかくだから最高の家庭教師を見つけないとねぇ……」


もうお昼にしましょう、とお母さまは言った。

そういえば、部屋に置いてある振り子時計は昼を少し過ぎたあたりを指している。

この世界にもきちんとした時計があるのだなぁと考えていたが、ふと気付いた。

()()()がある、と。

そういえば、ここは前世とは違う異世界。魔法なんてものがあるくらいだ。物理法則が元の地球と違っていても何の不思議もない。

しかしながら振り子時計があるということは少なくとも振り子の等時性は担保されていると言っていい。振り子が到達する高さも同じようだから力学的エネルギー保存の法則も成立しているとみていいだろう。

しかし他の物理法則は地球と同じものだろうか。


(魔法以外にも調べることができたわね、しばらく退屈はしなさそう)


わたしはこれからの生活に少しの期待を膨らませ、お母さまとともに食堂へ向かうのだった。

振り子の等時性: 振り子の揺れる周期(=時間)は、振り子の重さや振れ幅にはよらず、振り子の長さによってのみ決まるという法則。ガリレオ・ガリレイが学生の時に発見した。ただしこの法則は、振り子の振れ幅が小さい時にのみ適応される近似法則。

力学的エネルギー保存の法則: 力学的エネルギー(位置エネルギーと運動エネルギーの和)は系が保存力のみより動作する時、常に一定という法則。位置エネルギーにはいろいろあるが、有名なのは重力による位置エネルギー。物体が高い場所にあればあるほどその物体が持つエネルギーが高くなる。ただし非保存力が働いた場合は力学的エネルギーは減少する。例えば摩擦力や空気抵抗。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ