38.5. この星の密度の計算
38話から少し経った後の間話になります。
同時に1話投稿しているので読み飛ばしにはご注意ください。
お兄さまとお姉さまがエルメーアに帰ってから2週間ほど。
万有引力定数の測定を行ってから数日経ったころ。
わたしは2人に手紙を書いていた。
『お兄さま、お姉さま。
ご無沙汰しております。
そろそろ、学院での講義が再開するところでしょうか。
わたしはおそらく魔法学院に通うことになるでしょうが、どんな講義が行われるのか今から楽しみです。
さて、今回お手紙を書いているのは、この星の大きさを測定するためです』
こんな書き出しだ。
万有引力定数の測定にあたり、お父さまにこの星の密度を計算することで有用な情報がわかると説明して実験装置を勝ち取った。
万有引力定数は十分な精度で測定ができたと思う。
星の密度を計算するには、あとはこの星の半径が必要だ。
地球でも、地球の大きさを知ろうとする議論は大昔からあった。
キリスト教が台頭する前のヨーロッパ、とくにギリシャでは紀元前から測定が行われていたほどだ。測定したのはエラトステネスという人だ。
こんにちのような精密な装置がないので、その精度は推して知るべしなのだが。
とはいえ、概算としてこの星の密度を調べるのには十分だと思う。
というか、GPSがない以上、高精度で地球の半径を測るのは不可能だ。
方法はいたって単純で、遠く離れた二地点で太陽の高度を同時刻に測定し、二地点の距離と太陽高度の差から星の半径を割り出すものだ。
ちょうど今は夏で、夏至も近い。
2人には太陽の角度を測定する装置も渡した。これで夏至の日の正午における太陽の高度を測定してもらう。
後は、ここアラスと2人のいるエルメーアとの距離だが、これは馬車で1週間ほどだという前情報から割り出す。
馬車は、ゆっくりいって時速6キロメートルほど、2時間歩いて30分休憩を入れるとしよう。
朝9時に野営地を出発し、13時半ごろに昼休憩を1時間挟むとする。17時ごろには野営の準備に入らないといけないから、実質一日に進める時間は6時間ほどだ。したがって馬車の一日の移動距離は35キロメートルほどになる。
それを1週間続けると、245キロメートルだ。
エルメーアはアラスに対して北から約30度の方向にあるから、三角比を用い北方向の距離は212キロメートル程度になる。
夏至の日の後、数日して2人から手紙が届いた。
エルメーアにおける夏至の太陽南中高度は、およそ83度だそうだ。
わたしが測定したアラスでの太陽南中高度は約85度。
つまり、2度の差がある。したがって、この星の中心から見たときにアラスとエルメーアの南北方向の角度差は2度ということだ。
ここで、円弧の長さは円周に角度の割合をかけることで求めることができる。
つまり、この星の円周にアラス―エルメーア間太陽高度差をかけ、360度で割ることでアラス―エルメーア間距離が出せる。このことから、この星の円周を求める。
計算結果は、38,160キロメートルとなった。
エラトステネスが測定したとき、地球の円周は実際よりも15%ほど大きく測定されたというから、私の場合も15%大きくなっていると考えよう。
そうすると、実際のこの星の円周は、32,436キロメートルということとなる。
したがって、この星の半径は、約5,162キロメートルだ。
この大きさは、地球よりも23%も小さい値だ。
この星は、地球に比べて半径がかなり小さい星ということがわかった。
かなりざっくりとした測定だけど、それほど異なった値が出ているということもないと思う。
ここからこの星の平均密度を計算する。
以前に測定した万有引力定数や重力加速度を用いて、この星の質量を計算すると、およそ3.923×10^24キログラム。
平均密度は、質量と半径を使って、約6.81 g/cm^3。地球の平均密度が約5.5 g/cm^3だったことを考えると、大きい値だ。
この星は地球に比べて金属資源が多い星なのかもしれない。
とにかく、このことはお父さまへ報告しよう。
本編では飛ばしましたが、しっかり星の密度も計算していました。
ちなみに、この星の地軸の傾きとか、緯度とかもしっかり設定があります。
というか、そこからエクセルで計算している感じです。
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