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異世界魔法の物理学  作者: のん
第一章
32/42

31. 打ち明け話ふたたび

13時に2話投稿しているので、読み飛ばしにはご注意ください。

わたしたちは応接間へと移動し、お茶をすることになった。


「クレア、魔法を勉強しているんだって? 聞いたぞ、新しい魔法を発明したとかなんとか」

「発光魔法ですね。光を発する魔法です。呪符も完成しているので、これから魔法具の作製に取り掛かるところです」

「すごいわね。その年で新しい魔法を作っちゃうなんて。わたしなんてまだ初級魔法を一通り覚えただけなのに……」

「サラお姉さま。私も魔法は発光魔法以外は初歩魔法しか使えません。魔力を感じるのも家庭教師のカリーヌ先生に教わらなければうまくできませんでしたし……」

「そちらがカリーヌ先生ね。いつも妹がお世話になっていますわ。今後とも妹をよろしくお導きくださいな」

「これはご丁寧に、サラさん。実はあたしの方が教わることが多くて困っているところよ。クレアさんの知識とひらめきには本当に頭が下がる思いだわ」


わたしの魔法に関する話題が多くて少し恥ずかしい。


「お兄さま、お姉さま。今回の休暇はどのくらいこちらにいられるんですか?」

「そうだな。休暇は1か月だが、往復に2週間かかるし、向こうでいろいろ支度もあるから、長くて1週間ってところかな」

「そうなんですね。はやくわたしも学院に行ってみたいです。学問もそうですが、家にいるだけでは友人もできませんので、学友というものにも興味があります」

「クレアちゃんは、学院に行く前に社交界デビューが先かしらねぇ。10歳になったらデビュタントがあるから、そこで同い年くらいの子にもたくさん会えると思うわ」

「あれはそんないいものじゃないわよ。血筋に目のくらんだ男どもが寄ってくるわ寄ってくるわで気持ちのいいものじゃなかったわ。学院に行ってそれも解消されるかと思ったけど結局学院に通ってるのはほとんど貴族の子女だもんね。派閥とかもできてとても面倒よ」

「そうなんですか……」


まあオンネス家は侯爵位だし、お姉さまは学院一年生とはいえ三重魔法師だ。その血筋や魔法の力にいろいろと寄ってくるのは仕方ないだろう。

あれ? じゃあ四重のわたしはもっと大変なのでは?

学院、行きたくなくなってきたな……。


少し考えているうちに、話はわたしの行う物理学の講義の話になっていた。


「へぇ、じゃあ安息日はお父様も一緒になってクレアから物理学というのを学んでいるのか。それはどういう学問なんだ?」

「この世界の自然の法則を記述する学問です。例えば、どうして物体は地面に落ちるのか、とかどうして空は青いのか、とかを解明しようというものです」

「どうして物が地面に落ちるか、か。考えたこともなかったな。地面が下にあるんだから落ちるのは当然だろうと思っていた。空が青いことも、確かに考えれば不思議だな」

「空が青いのは、レイリー散乱によるものです。太陽の光のうち、青色の光が空気中の気体分子によって散乱されることによって空全体が青く見えます」

「知らない言葉ばかりだな。どこでそんなこと覚えてきたんだ?」


来た。物理学の話になれば絶対にこの質問が来ると思っていた。

わたしは居住まいを正し、話し始める。


「お兄さま、お姉さま。カリーヌ先生にも聞いてほしいことがあります」


わたしはカリーヌ先生にも前世の記憶があると打ち明けることに決めていた。

これ以上一緒に研究したり、物理学の講義をしたりするのには、必要だろうと思ったからだ。


わたしは全てを打ち明けた。

前世の記憶があること。

前世では男性で、学生であったこと。

物理学は前世で学んできたこと。


不安にも駆られたが、お母さまが優しい目で見守ってくれたのでなんとか話すことができた。


「そんなわけで、わたしは以前のクレアかといわれると、正直自信がないのです」

「そんなことはない。ちゃんと前世の記憶を取り戻す前の記憶だってあるんだろう。それなら、いくらその、サクライ・トオルなる人物の記憶があったとしても、クレアはクレアだ」

「そうね。それに、そんな泣きそうな目で話されちゃったら突き放すこともできないわ。大丈夫よ。私たちはクレアの味方だから」

「なるほどねぇ。異世界の記憶、か。だからあんなに知識が豊富だったというわけね」


全員、受け入れてくれたようだ。なんだか、すごく安心した。

さすがに、前回のように泣くなんてことはないけれど、心が温かい。


「わたしは魔法の仕組みを物理学という手法で解明したいと思っています。また、この世界の自然の法則が前世の世界と同じなのかどうかということも興味があります。すでにお父さまと重力加速度という定数の測定をしています」

「僕やサラは学院にいないといけないから、クレアの物理学講義を受けられないのはとても残念だな。とても面白そうなのに」

「そうね。それに発光魔法はその物理学に基づいて開発したんでしょ? 異世界の学問を魔法に取り入れるなんて、とても画期的だわ」


学院組のお兄さまとお姉さまはとても残念そうだ。

希望があるなら、この休暇中、2人には特別講義をしてあげようかな。

そろそろ次の物理定数の測定もしたいし、いろいろやりたいことがいっぱいだ。


わたしたちは、とんでもない暴露話をした後だと思えないほど、和やかに談笑を続けたのだった。

打ち明け話その2でした。今回はさらっと終わります。


空の青色がレイリー散乱によるものだということは結構有名なんじゃないですかね?


下の星をぽちっとしていただければ、筆者非常に喜びます。よろしくお願いします。

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